日本列島の巨大地震 (岩波科学ライブラリー)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000295857

作品紹介・あらすじ

日本の観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した東北地方太平洋沖地震は、どのような仕組みで発生したのか。なぜ予測できなかったのか。かならず来る次の大地震に向けて、地震学にできること、私たちが学んでおくべきことは何か。最新の研究成果と地球科学の知見をもとに、地震と日本列島の関係を解き明かし、その未来を描く。

感想・レビュー・書評

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  • p.35 地球物理学の専門家のなかには、福島県沖では巨大地震が起きないと主張していた人が何人かいた。太平洋プレートは1年に9センチ動いて、大きな地震を起こさずに沈み込んでいるというモデルを考えていた。一方、ペルー沖では海溝近くまでプレート境界が固着して、陸側のプレートが潜り込むプレートと同じように動いているということが知られていた。
    p.48 2011.2月に、政府の地震調査研究推進本部で、東北地方の巨大津波の危険性を指摘する文書がまとめられ、宮城県には2月に事前説明されていた。3月に福島県、4月にまとめて発表する予定だった。貞観の津波の調査結果から、今後も巨大津波をともなう地震に留意する必要があるとする文書。
    p.58 シアトルとバンクーバーを結ぶ沿岸では、平均して500年に一回大津波が来襲した。
    p.80 理由はわからないが、大地震の季節性が知られている。1920代以降のM7.5以上の大地震を調べた結果および1600年から1919年までのM7.9以上の大地震も同様だが、北海道から三陸の太平洋岸では、2月から5月にまで、特に3月に集中しており、宮城県沖から関東・東南海道にかけては9月から1月まで、特に12月に集中して起こる。

  • 地学の観点から、ものすごく面白かった。地学は、考古学と科学がミックスされてて、研究者数が絶対的に少ない。気象庁を、大気庁と地震・火山庁に分離すべきというのは、もっともだ。

  • (2011.12.02読了)(2011.11.24借入)
    【東日本大震災関連・その40】
    「本書では、地球科学の知識の蓄積をもとにした自然科学者の視点で、そしてできるだけ普通の言葉で、今回の巨大地震の仕組みを解説したいと思います。」(「はじめに」より)
    プレートの断層面でどのようなことが起こっているのかを解説してくれるのかな、と期待していたのですが、ちょっと違っていました。

    章立ては以下の通りです。
    1、2011年東北地方太平洋沖地震
    2、いつ始まったのか、いつ終わるのか
    3、世界の巨大地震
    4、2004年スマトラ・アンダマン地震
    5、日本の巨大地震
    6、日本列島の大地に学ぶ

    ●想定外が進展に(2頁)
    一般に科学は、想定していなかったことが見つかったときに飛躍的な進展を見せます。
    ●阪神・淡路大震災からの知恵(3頁)
    地球を観測するための体制は、1995年以後、たいへん進歩しました。1995年の阪神・淡路大震災から得られた知恵によるものです。そのおかげで観測体制が進歩し、それに伴って社会も進歩しました。例えば、今回の巨大地震で最大震度が7であると即座に発表されたこと、震度6弱以上の激しい揺れの広い分布がすぐにテレビ画面で見られたことは、その具体的な効果です。
    ●東京タワーの先端が曲がった(7頁)
    強震動は東北から関東などに伝わり、震災を起こしました。東京タワーの先端が曲がりました。
    ●電波時計(24頁)
    原子力発電所の事故が、さらに震災の影響を拡大しました。例えば、放射能のためにアンテナの維持作業ができなくなり、日本の標準時を発信する電波が一時休止するという事態がありました。
    ●火山活動(43頁)
    関東から中部地方の活火山に関係する活動も目立ちました。例えば、日光白根山、焼岳、乗鞍岳、箱根山、伊豆大島、新島、神津島などで発生した群発地震です。しばらくして富士山のほぼ直下でも群発地震が起こりました。活火山の直下の地下構造は、応力の変化が小さくても小規模な地震を起こす仕組みがあり、影響を受けやすい場所があるのです。
    富士山直下の地震群は、今回の巨大地震の後、2011年3月15日22時31分、M6.4のものが最大でした。
    ●チリ地震(54頁)
    1960年チリ地震は20世紀最大の地震で、震源域の長さは900キロの及ぶものでした。地震にともなう海岸の変化や水準測量などの測地データから、震源断層面でのすべり量は平均17メートル、最大で40メートルと推定されています。
    ●富士山噴火(77頁)
    1707年の宝永東海・南海地震は富士山の噴火を誘発しました。地震の36日後に富士山麓で鳴動が聞こえ始め、48日後から本格的な群発地震が発生し、49日目に宝永噴火に至ったようです。
    ●大地震の季節性(80頁)
    北海道から三陸の太平洋側沖合では2月から5月まで、特に3月に集中しており、宮城県沖から関東・東南海道にかけては9月から1月まで、特に12月に集中して起こるという報告があります。
    ●津波の心配は(101頁)
    テレビに出る情報で、「この地震による津波の心配はありません」という発表がいつも気になっています。なぜ津波の恐れがないかという理由を付けてほしいと、気象庁の幹部にお願いしたことがあります。小さな地震だからか、陸の地震だからなのか、深い地震だからなのか、どれかの理由を繰り返し聞くことによって、伝えるメディアも視聴者も、だんだん知識が身についてゆくと思います。

    ☆関連図書(既読)
    「地震・プレート・陸と海」深尾良夫著、岩波ジュニア新書、1985.04.19
    「超巨大地震に迫る」大木聖子・纐纈一起著(済)、NHK出版新書、2011.06.10
    (2011年12月7日・記)

  • 難しい部分も多かったけど、面白かったです。

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著者プロフィール

1940年東京生まれ.1959年土佐高等学校卒業.
1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後,京都大学防災研究所,理学部,理学研究科に勤務.
2003年12月16日第24回京都大学総長に就任(2008年9月末退任)
2009年4月より財団法人国際高等研究所所長.
京都大学理学博士,京都大学名誉教授,日本学術会議連携会員.
氷室俳句会主催,俳人協会会員,日本文藝家協会会員.

主な著書
『中国の地震予知』NHKブックス,1978年.
『図解雑学 地震』ナツメ社,2001年.
『大地 尾池和夫句集』角川書店,2004年.
『新版 活動期に入った地震列島』岩波科学ライブラリー,2007年.

「2009年 『変動帯の文化 国立大学法人化の前後に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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