糖尿病とウジ虫治療――マゴットセラピーとは何か (岩波科学ライブラリー)

著者 :
  • 岩波書店
3.79
  • (2)
  • (7)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 56
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000296175

作品紹介・あらすじ

四〇代以上は三人に一人が糖尿病になる時代。自覚症状がないまま進行し、気づいた時には足の潰瘍・壊疽により、下肢切断を余儀なくされる人も少なくない。いま切断せずに画期的に潰瘍を治癒する方法がある。なんとハエのウジ虫を使う。それはいったいどんな治療なのか。なぜハエなのか。驚きの治療の実際としくみを解説する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 糖尿病で足の切断にいたる話を耳にする。
    糖尿病の合併症である神経障害や血管障害などは足の壊疽を引き起こすからである。この壊疽に対する画期的な治療法がウジ虫の活用。

    ウジ虫の効能に気がついたのはジョン・ホプキンス大の若き外科医、第一次世界大戦の戦場でこれを発見した。
    7日間もの間、風雨にさらされ食事も充分でない、骨が見えるほどの損傷がある重体の負傷兵に感染症の症状がないことに気がつく。患部をめくると大量のウジ虫が。

    ウジ虫には、
    1)腐敗箇所を取り除く、
    2)細菌感染を抑える、
    3)傷の治癒速度を早める、
    の3つ力があると言う。
    2)と3)まで備わっているのは驚きで、そのカラクリの説明も。
    そもそもハエという生物の凄さにもびっくり、飛翔能力、繁殖力、嗅覚はピカ一の生き物であった。知的好奇心をくすぐりまくりの良書。

    <その他の書籍紹介>
    https://jtaniguchi.com/tag/%e6%9b%b8%e7%b1%8d%e7%b4%b9%e4%bb%8b/

  • 古くからあるウジ虫治療。糖尿病の壊死した足をこれで治療すると効果があるそうだけど、その理由がよく分からないというのがおもしろいところ。
    気持ち悪いところがあるけど、それでも治るのであれば、選択肢のひとつとして考えたい。

  • 最初,何このトンデモ代替医療?と思ってしまったけど,どうやら実績ちゃんとあるらしい。無菌化した蛆虫に壊死組織を食ってもらって創傷(皮膚潰瘍)を治すという治療法の紹介。蛆虫には何と抗菌作用もあるらしい。湿潤療法然り,最近の創傷治療はだいぶ変わってきてるのかな。
    糖尿病性潰瘍なんかで下肢切断を免れた例もあるとか。まだ自由診療だけど,そのうち保険が認められたりするのかな。

  • ハエの進化もすごいけど、人間の応用力もすごい。共生ってすばらしい。

  • 回虫でアトピーを治す本を思い出した。

  • 皮膚潰瘍部に無菌性ウジ虫を閉じ込めると、腐ったところをなくし、細菌感染をおさえ、傷を治す速度を速める。下肢切断から救える。

    最近は、ウジもあまり見られなくなって、不潔・腐敗・汚染、といったイメージもなくなってきていますから、受け容れやすいんじゃないでしょうか。カワイイと言う話も聞きます。

  • 面白かったです。

  • 以下2冊がキッカケで読む事になった『糖尿病とウジ虫治療――マゴットセラピーとは何か』(岡田匡)。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    ❶『7SEEDS』(田村由美)の13巻でマゴットセラピー紹介あって、「ホントに治るのか??」と気になった。

    ❷『世にも危険な医療の世界史』(リディア・ケイン ネイト・ピーダーセン)を読んでいる時、

    「マゴットセラピーはインチキ療法と思われた事はなかったんだろうか?」と思った事を確かめたくなった。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    2013年時点で「40代以上は3人に1人が糖尿病になる」と言われ、

    発症した人の中には足の傷から潰瘍になり、感染を起こして下肢切断にまで至ったケースもある事を読んで、

    黒板を引っ掻いた時のような表情になった。

    「長期間にわたり治癒は難しい」とされる糖尿病性足潰瘍の治療手段の1つに【マゴットセラピー】があるわけですが、

    まぁ読んでビックリしたポイントがありすぎてやばかった。

    それが以下9点です。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    ❶古来数千年前からマゴットセラピーは存在した。

    オーストラリア先住民族のアボリジニ族や中米の古代マヤ族などは、傷の治療のために、すでにウジ虫を利用していたらしいです。

    どうやって「これは使える!やってみよう!」と思い立ったのかが謎…。

    ❷2013時点の生物を用いた医薬品の割合は、米国の場合約40%

    アメリカにこの割合は浮かばなかったなぁー!

    「ハッ!そんなの時代遅れサ」って切り捨ててそうだと勝手に思ってた。

    ❸ 米国南北戦争時、北と南それぞれの野戦病院で生存率が高かったのは南軍だった。

    「医療材料が豊かな治療を受けた北軍の負傷者と、ウジ虫が湧くような劣悪な環境下の南軍の負傷者。生存率が高かったのは南軍の方だった。」と読んだ時にはビックリしたね…。

    いろんな戦争映画でだいたいダウンしてる兵士のイメージは【血まみれ体中から虫】で、

    回復どころか悪化してるものだとばかり思ってたけど…セラピー受けてたんだ…。

    ここで初めて「ウジごめん」って思った。

    ❹ウジにも良いやつ悪いやつがおります。

    1988年リビアのトリポリで、【死肉だけでなく生きた動物(人でも)の体内でも増殖するハエ】が大発生し、緊急事態宣言が発せられたそうです。

    「全部治療してれるやつじゃないんだ」って思ったし、

    1930,1950年代に起きた米国ハエ被害対策に【不妊バエ】を放って事態が収束した話を読んだ時には

    『ジュラシックワールド/新たなる支配者』(コリン・トレボロウ)のバッタが浮かんだ。

    ちなみに治療で使われるのはヒロズキンバエというハエで、

    「人間は宿主ではないので、体の中に住み着きはしないし、そこで蛹になることもハエになることもない」とのこと!

    そして最初の段階では気持ち悪いと思うけど、治療回数が重なれば徐々に思わなくなるらしいです。

    ❺ウジ虫の食事事情

    「新鮮で栄養価が高い食べ物ではなく、競争ができるだけ少ない腐ったもののほうが生存上有利、とある種のハエが選択してもおかしくはない。レッドオーシャン(既存市場)ではなく、ブルーオーシャン(新規開拓市場)戦略が有効なのは人間の経済界の話ばかりではない。」とありましたが、

    ウジ君「まっずー!」って思いながら食べてるイメージしか浮かばなくて、

    「ハンバーグとかステーキ食べててごめん」って思った。

    ❻日本のマゴットセラピー費用

    2013年時点においてのお話では、

    「⑴マゴットセラピーは自由診療であるため処置代も含めて治療行為すべてが自費診療になり、その他の医療行為も保険診療は使えなくなる

    ⑵現在(2013年)マゴットは100匹程度で約3万円前後。処置料として一回につき数千円かかる。週に三回交換したとして一週間で10万円前後になる。」

    とのことで、「今はどうなのか?」という話ですが…

    ネットで読んでも自由診療しか出てこなかった。

    ❼絆創膏貼りっぱなしの方が治る??

    ハエから離れた話ですが、

    「健康な人の傷や熱傷潰瘍であれば湿潤環境におけば十分である」と読んだ時に、

    「絆創膏貼りっぱなしの方が傷の治りが良いし後が残りにくい」と聞いた事を言っとるやんと思った。

    ❽ウジ虫の食欲は桁外れ

    「たった五分間で自分の体重の半分の量を昼夜休まずひたすら食べ続ける。約三日で数十倍の体重になる。」とあり、

    この本を読んだからこそ「マゴットセラピーの治療速度は速い!!」と思うけれど、

    そうでなければ負のイメージを持続させてたかもしれない。

    ただ、桁外れな事には理由があって

    「幼虫の期間が一番多くの病原微生物と直接遭遇する危険な時期である。さらに蛹になるまでに体内の浄化を完遂していなければ、細菌に命を奪われて蛹がそのまま棺桶になってしまう」と読んだ時には「人間よりしっかりしてる」とメチャクチャ思った。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    …といろいろ良い意味で忙しかった本でした。

全10件中 1 - 10件を表示

岡田匡の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×