精神科病院を出て、町へ――ACTがつくる地域精神医療 (岩波ブックレット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708546

作品紹介・あらすじ

日本では、重い精神障害をもつ人々は精神科病院への長期入院を余儀なくされてきた。だが、患者の地域生活を支援するための、多職種チームによる訪問医療「ACT」(包括型地域生活支援プログラム)の導入は、希望をもたらす成果を上げはじめている。「病気が主人公」から「その人が主人公」へ。ACTの登場は今、地域から精神医療の概念を変えつつある。

感想・レビュー・書評

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  • 細田武伸先生  おすすめ
    29【専門】369.28-I

    ★ブックリストのコメント
    ACTとは、重い精神障がいを抱えた人が住み慣れた地域で生活できるように様々な職種からなる医療チームが支援を提供していくプログラムです。わが国では、まだ途上とも言えますが、誰もが安心して自分の望む場所で生活できるためには必要なことです。医療関係者を目指す人達には是非一読して貰えればと思います。

  • 369.28-イト 300379575

  • 現在、精神障害 知的障害 性同一性障害など社会が様々な判断基準を用いて、障害を理解しようとする試みが行われている。

    本著は、精神病院の歴史や文化的背景から地域社会への共生を模索しようと考えられている。
    ・精神病院の位置づけ
    ・患者の待遇
    ・社会福祉と就労へのフォロー
    ・限定的な医療→複合医療〔ACTの試み〕

    地域社会へ精神病院やそういった施設を建設する際、反対運動が起こる現実もある。
    社会が排除ではなく、寛容・共生の道に進むことで変わる可能性を考えたい。

  • リカバリーの概念をベースに、地域で精神障害者を支えていこうというお話。
    その人らしさを大切にした、他職種チームで行う訪問支援ということでしょうか。
    確かに優れた支援の形ではあると思うけれど、ACTならでは!という特徴がわからなかった。

  • 伊藤順一郎『精神科病院を出て、町へ ACTがつくる地域精神医療』岩波ブックレット、読了。従来、精神疾患をもつ人々への治療は閉鎖病棟での長期入院が担ってきたが、本書は、近年注目を浴びる地域生活に根ざした訪問医療(ACT)プログラのを最前線を紹介。精神医療の概念を変える試みだ。

    ACTとは「包括型地域生活支援プログラム」のこと。医師、看護師、作業療法士や精神保健福祉士などがチームを組み、地域社会の中で訪問し、精神障害をもつ人々の治療やケアにあたる方法のこと。訪問医療の導入は成果をあげつつある。

    閉鎖病棟での治療から地域社会での治療とは「病気が主人公」から「その人が主人公」への転換。「精神医療は『生活を立て直す』支援を含んでこそ、地域生活の中で訳に立つ支援となりうる」。入院中心の医療ではなかなか得られない視点。

    ACTにおいて大切にされるのは「言葉の役割」。慢性的なスタッフ不足の医療現場で医師や看護師と患者が言葉が交わすのはせいぜい一日数回。言葉のやりとりでつくられる信頼という文脈で治療を一緒にやっていくのは対照的だ。

    戦後日本の精神医療は「隔離」が国是であるといってもよい。見えなくさせることで解決できるわけではない。ACTの試みは精神医療の概念だけでなく、精神疾患を取り巻く社会の認識を転換する試みでもある。戦後医療史の叙述も参考になる。

  • ACT(Assertive Community Treatment)の活動の考え方について紹介されています。
    精神医療の歴史について、「それが患者さんからみてどんな経験であったか」という視点からも紹介されている、貴重な一冊です。

    「ストレングスの視点を持って、リカバリーの考え方に基づいて行われる支援」に深い興味を抱きました。

    「生活の立て直し」から始まり、その人らしく生きていけるように、ともに歩み支えていくのが支援者の役割である、と受け取りました。

    こんな風にできたらいいな、と思いつつ、人件費の確保が気になるところでした。

  • 日本の精神病治療は隔離の側面が強いのは知ってたけど、欧米ではそうでないのにびっくりした。精神病院をたてまくるために法律改正されてたのも驚いたし!
    やっぱり、カウンセリングの観点は重要だね。それを町にまで拡げて支援していくのがACTなのかしら。

  • ACTとはassertive community treatment(包括型地域生活支援プログラム)のこと。病院に閉じ込めてきた精神障害者たちを、治療というよりもありのままに地域で生活できるように様々な職種が協働しながら支えていくという仕組み。ただ、ACTが実際のところ、どう特徴的なのかがよくわからなかった。
    「精神科病院を出て、町へ」というのは、現実はともかく、もうずいぶん長く言われていることだと思う。それとACTとの違い、というかACTの先進性、有効性といったところの記述が薄いのではないかと思う。文章から著者の真面目さ、誠意は伝わってくるのだが……。読み手に「あなた」と呼びかけるのもそういった誠意の表れだろうが、「あなた」が障害者になったり、支援スタッフ側になったりと目まぐるしいのもこんがらがる。

  • 精神病の患者を家庭や病院に閉じ込めるのではなく、地域で暮らしていけるように生活を支える「包括型地域生活支援プログラム(ACT)」の話。
    日本の精神医療の成り立ちや現状から、ACTの理念と内容まで。
    「心の医療 宅配便」で書かれていたこととだいたい同じなので目新しさはなかったけれど、手軽に紹介できるという点で良書。


    病をみるのではなく、病を抱えた人の生活を見る。
    病気ではなく生活を、病人だけではなく病人を支える周囲を、地域の中で支えていくことがACTの基本理念。
    「危ない奴を野放しにする」とか「家族に負担を押し付ける」と思われがちな「地域で暮らす」ことへの不安をやわらげるように、もしあなたが患者だったら、家族だったら、医療関係者だったら、と、自分の身に置き換えて想像しやすいように説明されている。


    「心の医療 宅配便」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4163723102
    「精神病院を捨てたイタリア捨てない日本」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4000236857

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著者プロフィール

【監修者プロフィール】
伊藤順一郎(いとう・じゅんいちろう)
1954年東京都生まれ。千葉大学医学部卒業後、旭中央病院精神科、千葉大学医学部附属病院精神科を経て、国立精神・神経センター精神保健研究所に勤務。1994年社会復帰相談部援助技術研究室室長、2000年社会復帰相談部部長、2010年国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部部長。2015年よりメンタルヘルス診療所しっぽふぁーれ院長。専門は、コミュニティ・メンタルヘルス、統合失調症の患者さんの治療と社会復帰、家族支援。NPO法人地域精神保健福祉機構(コンボ)共同代表、一般社団法人コミュニティ・メンタルヘルス・アウトリーチ協会(アウトリーチネット)共同代表、日本のMattoの町を考える会副代表。

「2023年 『新版 統合失調症 病気の理解と治療法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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