つながりを煽られる子どもたち――ネット依存といじめ問題を考える (岩波ブックレット)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (88ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002709031

作品紹介・あらすじ

LINE疲れ、快楽でなく不安からのスマホ依存、友だち関係を維持するためのいじめ、親友を作りづらいイツメン(いつも一緒のメンバー)同士のしがらみ…。子どもたちが「つながり過剰症候群」に陥る社会背景と心理メカニズムとは?「いいね!」を求めあう承認願望の肥大化と、それはどう関わっているのか?また、その隘路からの出口はどこにあるのか?大好評ロングセラー『「個性」を煽られる子どもたち』『キャラ化する/される子どもたち』に続く待望の第三弾!

感想・レビュー・書評

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  • 「ところが、今日のように価値観が多様化してくると、自分がどんな選択肢を選んだとしても、それを選んだことに安定した根拠を見出せなくなってしまいます。様々な選択肢が横並びになると、別の選択肢の魅力がいつまでも意識のなかに残り、いま自分が選んだものが絶対とは思えなくなるのです。せっかく選んだものに何か少しでも不都合な点が見つかると、すぐに別の選択肢へと目移りが始まってしまうからです。このとき人は、周囲の他者からの評価にすがることで、自らの選択の安定性と客観性を確保しようとします。自らの判断が妥当であったことの根拠を、そこに求めざるを得なくなるのです。」p.48-49

    今苦しいのはこれだなぁと。
    自分の選択に自信を持つという事がいかに難しいか。どうして難しいのか、この本を読んで少し理解が進んだように思う。
    この本が書かれた当時からもう10年経ったけれど、InstagramなどSNS炎上のニュースを見るにつけ、ますます現状は厳しくなっているような気がする。
    一方でその様な現状の問題に気づいて声を上げたり動き始める人が増えているような、そんな希望も感じる。

    作者の最新の本を読んでみたい。

  • 2022年10月~11月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00510809

  • スマホやSNSの普及によって常に繋がっていることを強いられる子どもたちの状況を解説している。2010年代に学校生活を送っていた私にも、『確かにな』と実感する箇所がいつくかあった。

    フラットな人間関係というのは最近の流行でもあるし良いように聞こえるが、深い信頼関係がなく、権威に裏付けされているわけでもない人からの「承認」は軽く、承認願望を満たすことで得られる自己肯定感を与えてはくれない。

  • ◆1/28オンライン企画「わたしの“モヤモヤ”大解剖―わがまま論・つながり論を切り口に―」で紹介されています。
    https://www.youtube.com/watch?v=GTaAW7pHRII
    本の詳細
    https://www.iwanami.co.jp/book/b254440.html

  • 「キャラ化する/される子供たち」と似た内容ではあるものの、時代はすでにキャラ化を超えた繋がり依存へと進行しているという話。
    前作からなぜかAKBの例がよく挙げられているのが気になった。筆者は好きなのかと。

    それはともかく、前の著作を発展させた内容で、今の子どもたちになにが必要か?とても考えさせられた。

    キャラ化する、というのは自分探しの延長のようなもので、価値観が定まらない世の中で確固たる自分を保つための手段だった。
    今は、自分探しではなく、友達からのキャラ認定が彼らの価値観になっているそうだ。
    その友達との関係というのも予定調和だから、衝突も成長もない。そして壁になっていたはずの大人たちも、友達とさほど変わらないフラットな関係に落ち着いている。

    多様性が謳われるようになったはずだが、だからこそ選択肢は少ない方が好まれる時代、一致団結という言葉さえ、そこからはみ出す人間の排除の理由になる。
    一人ひとりの中の多面性、多様な価値観に触れること、大人たちの役割を今一度確認するような内容。

  • 367.6-ドイ  300379245

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99657520

    2015年度の「ネットのあれこれ」でも取り上げられました。

  • 2014年6月初版
    土井隆義 著
    ==

    【以下、読書メモでーす】
    ・メビウスの輪
    ・コミュニケーションの同期性の過剰化
    ・つながり依存といじめ
     仲間はずれになりたくないから、いじめに加担する。
     人間関係を破壊するいじめではなく、維持するためのいじめ。
     「つながり過剰症候群」

    ・友人や仲間のこと
     「充実感を覚える」と「悩みや心配のもと」は
     2002年と比較して両方上昇

    ・「コミュニケーション能力」という言葉が
     頻繁にメディアに踊るようになったのは2004年から。
     日本の失業率が急激に悪化した時期と重なる。
     元々島国で、同質性の高い日本人が、
     価値観の多様化・自由化を迎えて、「分かりあうこと」へのコストが
     高まってきた。それは、アメリカのような国家には当たり前のことだが、
     日本人にとっては、一大転換だった。

    ・かつて、若者間のコミュニケーションを円滑化する潤滑油の大きなものとして、
     「大人社会への敵意」があった。生きづらさやもどかしさの源泉を大人たちに見いだしてた。
     しかし、大人も子供と同質化し、友達親子が増える中で、
     同世代間のコミュニケーションにおける「いじり」「いじめ」に
     潤滑油を求めるようになった。
     大人という共通の敵、がいなくなった。

    ・ベネッセ教育総合研究所の2005年の調査
     「幼児の生活アンケート調査」
     親が子供に期待すること
     1位 友人を大切にする人
     2位 他人に迷惑をかけない人
     3位 ジブンの家族を大切にする人
     ⇒どれも人間関係にまつわることがら
     「社会のために尽くす人」は圧倒的に少ない。

    ・インフラ友だち

    ・承認の耐えられない軽さ
     親や先生との関係が摩擦のない友達のようになった今、
     「重み」のある人間関係がなくなりつつある。
     一見、承認願望を手軽に満たしやすくなったと思われがちだが、
     その承認は、圧倒的に軽い。
     本当にその人の安心感や自信につながるような、
     間違いなく信じられる承認を下せるほどの、険しい人間関係を
     今の若い人は望んでいない。だから、本来的に欲している
     「真の重い承認」が得られていない。
     イツメンはいても、心友はいない。

    ・キャラ立ちは真の自分発の個性にはならない。
     キャラとはあくまでも、特定のコミュニティにおける、
     役割分担の中で、空いたピースによってきまる。
     「キャラかぶり」は象徴的な言葉。
     各自が呈示するキャラはあくまで予定調和の範囲内で
     割り当てられたものでなければならない。
     キャラ化された人間関係では、その安定感が確保されやすいのとは裏腹に、
     そこにいるのがほかならぬ自分自身だという確信が揺らぎやすくなります。
     キャラ疲れ、の根底にあるのはこの不安だと思う。

    ・「安心」は得やすくて「不満」は少なくても、「自信」は得づらい
     だから結局「不安」から逃れられない。

  • SNSやいじめがなぜ蔓延するのか。
    現代の子どもたちが置かれている状況を、研究者の目で解説してくれています。

    単純に、ネットが悪い、親のしつけがなっていない、という話しではないのですね。

    社会の成熟、人間関係のパーソナル化、フラット化する社会、コミュニケーション力を求める危険性

    この本から、考える種をたくさんいただきました。

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著者プロフィール

筑波大学人文社会系教授/社会学

「2018年 『談 no.112 感情強要社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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