- Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003243213
作品紹介・あらすじ
青年詩人マルテは一人故郷を去ってパリに出た。不安と恐怖、絶望と焦燥-孤独な生活の中で、マルテは深く内的な世界に沈潜し、日々の経験と幼き日の思い出を書き綴る。リルケ(1875‐1926)は自身がパリの現実に直面して受けた衝撃を、一詩人の内面告白という形でこうして形象化した。リルケの特質を最も明快に示す作品である。
感想・レビュー・書評
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なかなかの難物。比較的具体的なエピソードの部分と、観念的な部分がある。後者の部分は、一体何を言わんとしているのか正直言ってさっぱりわからない。観念と表象が奔流のように噴出、こんこんと説き続ける。
ただ、少年青年時代らしき思い出をモチーフにしたエピソードのパートはわりと読みやすくもあり、面白いものもある。
パリ市街で遭遇した〝舞踏病“の男のエピソード。
そして、パリのアパートの奇妙な隣人ニコライ・クスミッチュの話。すこし神経症的で、時間を秒単位で節約し、その〝時間の貯蓄“を後で払い戻してもらおうと考えたのだ。だがいったい誰が時間を払い戻してくれるというのか? このエピソードはちょっとポールオースターの風味で面白い。
他にも、デンマーク(?)の親族の古城で過ごした日々。故人の女性が夜の食事の広間に姿を見せ一同は戦慄する。亡霊の出現。本作は1910年前後に書かれた作品だが、同じころに書かれたマンの「 魔の山 」にも心霊に関するエピソードがある。「 マルての手記」にはスウェーデンボルグの名も登場するし、この時代はもしかしたらちょっとした〝心霊ブーム“だったのかもしれない。
※ P229には、
オランジュに残っている古代ローマの円形劇場でのことであった。
から始まる観念と表象の一節もあるのであった。
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「マルテの手記」リルケ著・望月市恵訳、岩波版ほるぷ図書館文庫、1975.09.01
293p ¥300 (2020.12.04読了)(2020.11.25借入)(1973.01.16/23刷)
リルケの著作を読むのは初めてのつもりでした。解説を読んでいるうちに「ロダン」を読んでいる可能性があることに気づき調べてみたら読んでいました。ということで、リルケの著作を読むのは、二冊目でした。
「マルテの手記」は、新潮文庫版を積読していたのですが、見つからなかったので、図書館から借りてきて読みました。
「マルテの手記」は1904年から1910年にわたって書かれた作品であって、主人公のマルテはデンマークの貴族の家に生まれた若い無名の詩人である。(284頁)
「マルテ」は小説とか物語とかいうものではなく、いくつかの断章から組み合わされた「寄木細工」のような作品である。パリの経験と、それによって呼びさまされた幼年時代の思い出とが内容になっていて、この幼年時代の思い出は、幼年時代の体験の思い出と読書の思い出とになっている。(285頁)
「マルテ」のなかで幼いころの読書の思い出として語られているのは、14世紀を中心にした時代、いわゆるゴシック時代の物語に関するものといえる。(289頁)
【目次】(なし)
九月十一日 トゥリエ街 7頁
国立図書館で 40頁
訳注 257頁
解説 望月市恵 1973年1月 277頁
●時間(171頁)
日ごろから時は金なりと聞かされていたが、これほどの巨額の時間を持っている人間に警護もつけずにおくことは不思議であった。いつ盗まれるかもわからなかった。
ニコライ・クスミッチュは、けちな一秒銭の一部分でも両替してくれる国家の施設、時間の銀行のようなものがあるに違いないことに気がついた。とにかく贋金ではなかった。(173頁)
☆関連図書(既読)
「ロダン」リルケ著・高安国世訳、岩波文庫、1941.06.10
(2020年12月7日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
青年詩人マルテは一人故郷を去ってパリに出た。不安と恐怖、絶望と焦燥―孤独な生活の中で、マルテは深く内的な世界に沈潜し、日々の経験と幼き日の思い出を書き綴る。リルケ(1875‐1926)は自身がパリの現実に直面して受けた衝撃を、一詩人の内面告白という形でこうして形象化した。リルケの特質を最も明快に示す作品である。 -
津村のよみなおし世界文学の1冊である。最初に日付が書いてあったので、日記と勘違いさせられた。次の章が図書館であった。ドイツ語のタイトルが原著であるが、内容はパリでの生活の様に思われた。
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一週間くらいかけてようやく読了。
大詩人の小説なのにどうも没頭できず、ページをくる手がにぶかった。
本書中物語が占めるのは250ページくらいだろうが、その内すらすらと内容の入ってくるのは20ページもなかったかと思う。
恐らくそれは、この小説の内容がわたしにとって近しいものじゃなく、リルケの(普遍性に欠ける)個人的事情の昇華のように思われたのが原因と考える。単にわたしとこの小説を書いたリルケとの距離が大きすぎたせいで合わなかっただけなのだ。
でも、再読に挑戦する気は、読了直後の今はない。 -
リルケが書き上げた唯一の長篇小説。
詩人が書いた小説のせいか、始めから終わりまで、隅々まで詩的だった。感受性むき出しで生きている人間から見た当時のパリの生活は、激しくて汚くて、刺激が強すぎるのだろう。
タイトルが「手記」ということで、1つの物語というよりは複数の文章の寄せ集めのような作品だった。リルケの詩集も読んでみたくなる。 -
『ぼくらの頭脳の鍛え方』
書斎の本棚から百冊(立花隆選)85
世界文学
まあ、最低こんなところを。 -
ようやく読了。
多くの人が、よく分からなかったと漏らす作品。私も例外ではなかった。あと何度読むことになるのやら。
何に重きを置くのか考えないと。 -
リルケすきだな〜。