制作 (下) (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003254561

感想・レビュー・書評

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  • 映画「セザンヌと過ごした時間」でゾラとセザンヌの関係、幼馴染で親しかったがゾラが先に成功し、セザンヌをモデルにした小説を書いたことで関係が破綻する、と知った後に興味を持って本書を買った。
    印象派をめぐる当時の画壇が詳しく書き込まれ非常に面白かった。特にサロンの詳細な描写は刺激的だ。音楽にも言及され、芸術に興味があればあるほど面白いだろう。
    クロードの画風はセザンヌではない。サロンで落選するくだりは絵としてはマネだし、外光派(印象派)の元になったといえばモネだし、セザンヌが裸婦に入れ込むわけでもないのだが、セザンヌが不遇だった時代に読むと腹が立ったのだろう。作家のサンドーズがゾラ自身だとしたら贔屓されていい人すぎる(苦笑)ただし、芸術家としての不安や世間への訴え、希望に満ちた青年からその後脱落していく仲間への思いが生々しく描かれており、ドラマチックだ。

  • 当時の画学校の様子やサロンのコンテストの様子がとても面白い。革新的な印象派に対する風あたりがとてもリアルに感じられる。このへんは西洋美術史の教科書的記述では感じ取ることの出来ないものだろう。それだけでも本作を一読する価値はある。

  • しかし、下巻に入ると一気に暗く重くなり、画家の苦悩と精神の破綻が進み、こっちまで苦しくなった。
    ゴッホの精神病もこうだったのかもしれないと想像せずにはいられなかたった。
    ゾラを立て続けに読むのはキツイ。

  • ゾラの制作の下巻。上巻は若者の情熱にあふれ、とても明るい内容だったけれど、さすがはゾラ。下巻に入って途端に暗転していきます。
    思う芸術が作れないとあせる芸術家、そんな芸術家を支えきれず、どんどん傷ついていく妻。そのふたりの犠牲となって死んでいく子供。完全にネグレクトされる子供の描写を読むとなんとも言えず心が締め付けられるような気持ちになりました。「居酒屋」の中でも虐待されて死んでいくこどもが描かれていましたが、読むのがつらすぎます。貧困の中で、精神がダメになっていく大人とそのひずみをすべて受け止めてしまう子供の悲劇をきっとゾラは伝えたかったのでしょうね。

    本の中で様々な芸術家たちが、制作することの苦しみを語ります。思った作品を作れない苦しみ、作品に支配される自己、その犠牲になっていく周囲の人間、そして成功の後にあるまたまた大きな苦しみ。ゾラ自身の思いを様々な形で表現したのでしょう。

    それでもすばらしい作品を生み出す時のしあわせは、苦しみを埋め合わせるぐらいの強いものなのでしょう。麻薬みたいなものかもしれません。

    ゾラの生みの苦しみを集結させた作品。でも、生みの喜びも少しは分けて欲しかったなあ・・・。

  • セザンヌの親友でもあった小説家エミール・ゾラが得意の観察眼を駆使して書き上げた作品。アカデミズムと身内びいきに凝り固まった当時のフランス画壇を風刺しつつ、主人公が狂気に侵され破滅していく様を生々しく描きます。
    表紙の絵のセンスが素晴らしい!上巻ではセザンヌの「水浴の男達」でしたが、下巻ではギュスターヴ・モローの「出現」が使われています。神秘主義に傾倒していく主人公の作風の変化を表しているのでしょう。

  • 2007年7月22日
    上下巻を持つ文庫本小説を読み終えたのは初めてかもしれない。クロードが徐々に心身ともに衰退していく様、幸福とは勇ましく理想を追求し続けることなのか、それともある時点では妥協を許すことなのか、考えてしまう。また彼を裏切らなかったサンドースやクリスティーヌが示し続けたものが真の友情、愛情なのだろうか。
    セザンヌの図版が何枚か載っている解説はまだ読んでいないので、読んでみたい。

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著者プロフィール

エミール・ゾラ
1840年、パリに生まれる。フランスの作家・批評家。22歳ごろから小説や評論を書き始め、美術批評の筆も執り、マネを擁護した。1862年、アシェット書店広報部に就職するが、1866年に退職。1864年に短編集『ニノンへのコント』を出版、1865年に処女長編『クロードの告白』を出版。自然主義文学の総帥として論陣を張り、『実験小説論』(1880年)を書いた。1891年には文芸家協会会長に選出される。

「2023年 『ボヌール・デ・ダム百貨店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

エミール・ゾラの作品

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