二重人格 (岩波文庫 赤 613-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003261323

作品紹介・あらすじ

主人公は小心で引っこみ思案の典型的小役人。家柄も才能もないが、栄達を望む野心だけは人一倍強い。そんな内心の相克がこうじたあまり、ついにもう1人の自分という幻覚が現れた!精神の平衡を失い発狂してゆく主人公の姿を通して、管理社会の重圧におしひしがれる都市人間の心理の内奥をえぐった巨匠(1821‐81)の第2作。

感想・レビュー・書評

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  • なかなか、しんどい、きびしい内容であった。文章技法、構成の面で。発表当時、酷評されたそうだが、むべなるかな。

    『二重人格』とされているが、実態としては「ドッペルゲンガー」奇譚。
     通例ドッペルゲンガーは、本人の知らぬところでもうひとりの自分が街を歩いていたりする。本人とかち会うことは無い。たしか芥川龍之介『歯車』もそんなイメージだった気がする。
     なのだが、本作では、旧ゴリャートキン氏と新ゴリャートキン氏は対面するばかりか、あたかもがぷりよつに格闘する如しである。ただ、展開のテンポが悪く、文章表現もまわりくどい。読んでいてヘトヘトになる。なので、スラップスティックコメディのように軽快に読み進める楽しさには程遠い。
     ただ、途中で、これはゴリャートキン氏の精神病理、分裂症的な狂気から見た世界なのかも、と思い至る。その読み方にわりきってからは、少々読める気分になった。

  • 嗤う分身も良かった

  • ドッペルケンガーとは自分への罠だろうか。

  • 結末が予想外な上に、読んでいるときもなかなか胸糞が悪くなるほど怖かったので、ホラー小説感覚で読んでいました。

  • ドストエフスキーは自信満々だった作品らしいが、当時世間からは酷評だったらしく…。
    あらすじをみた感じすごく面白そうな話だなと思って読み始めて、最初の方はまだ動きもあるしわかりやすいから楽しく読めてたけど、途中からはそりゃ酷評だったろうな…という気持ちになってくる。

    あまりにも冗長で反復的。
    ドストエフスキーはそういう作風ではあるとおもうけど、これは特にそうで、その上反復する内容が無意味で支離滅裂なことばかりなのでしんどくなってくる。
    あとゴリャートキンは読点感覚で相手の名前を連呼してくるので、台詞の半分近くが相手の名前になっちゃってることもあり、そこもうっとおしく感じた。

    新ゴリャートキン氏は、最初は実在してるとおもって読んでいたけど、あれ?幻覚か?と思わせる部分もあり、解説でも『完全な精神錯乱を起こし、ついに幻覚が現れるようになる。』と書いてあるからやはり幻覚なのかな?
    自分には敵がいると思い込んだり、呼ばれてもいないパーティーに参加して醜態をさらしたり、初っ端から精神になにか異常をきたしている気配はあった。
    どこまでが現実でどこからが幻覚だったのかわからないのでもう一度読みたいけど、いま読み返す気力はないのでまたいつかあらためて読んでみたい。

    テーマ自体は好きな部類なので、冗長さをもっと減らしてこざっぱりとした短編にしていたら、もしかしたらもっと楽しく読めたのかもしれない。

  • 最後の解説を読むまで、ゴリャートフの妄想だと気づきませんでした…

  • ドストエフスキー作品の中でも読みづらさでは上位にくるように感じた。中々入り込めない上に主人公も好きになれなかった。

  • 小心な下級官僚の主人公が、官庁、住む都市から、思わぬ圧迫感を受け、自分の分身を幻覚に見るようになる。病なのでやむを得ないところもあるやに感じるが、環境が違えば救済が得られたかは不明である。ドストエフスキーの「貧しき人々」に次ぐ第2作とのこと。著者として自信作だったらしいが、あまり知られていない。2020.8.26

  • ドストエフスキーの第2作目。
    1846年。作者25歳の時。

    内容からすると、「二重人格」よりも「分身」の方がぴったり。
    ドイツ語に直すとドッペルゲンガーだそうだし。

    ゴーゴリ風の文体で書かれた作品という訳者の説明だが、前半はとくにそうなのだろうが、後半になると、主人公のモノローグに近くなり、不安と葛藤と焦燥にかられて暗鬱なペテルブルグを彷徨う主人公ゴリャートキンの内面描写は、後年の「罪と罰」のラスコーリニコフを思い起こさせる。

    だが、デビュー作の「貧しき人々」の大好評に反して、この作品はさんざんな評価だったらしい。

    ドストエフスキーは終生この作品を気に入っていたというから、もともとこういう病的な心理描写が好きでもあり、余人には真似できないという自負もあったのだろう。ドストエフスキーの魅力の一つである支離滅裂にのたうちまわる内面を描写する手法を、ここで発見したということもあるのかもしれない。

    もちろん、作者も主人公も、まだ深淵に、地下に降りておらず、たんに地上を駆け回っているだけという感じ。
    発表当時、冗長という批判があったそうだが、そのせいもあるだろう。

    その一方で、すでにゴーゴリ的世界を抜け出て、現在の都市生活者の不安と幻想を持つゴリャートキンの心理的リアリティを、当時の感覚ではまだ理解できなかったということもあるのではないか。

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