- Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003261323
作品紹介・あらすじ
主人公は小心で引っこみ思案の典型的小役人。家柄も才能もないが、栄達を望む野心だけは人一倍強い。そんな内心の相克がこうじたあまり、ついにもう1人の自分という幻覚が現れた!精神の平衡を失い発狂してゆく主人公の姿を通して、管理社会の重圧におしひしがれる都市人間の心理の内奥をえぐった巨匠(1821‐81)の第2作。
感想・レビュー・書評
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嗤う分身も良かった
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ドッペルケンガーとは自分への罠だろうか。
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最後の解説を読むまで、ゴリャートフの妄想だと気づきませんでした…
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小心な下級官僚の主人公が、官庁、住む都市から、思わぬ圧迫感を受け、自分の分身を幻覚に見るようになる。病なのでやむを得ないところもあるやに感じるが、環境が違えば救済が得られたかは不明である。ドストエフスキーの「貧しき人々」に次ぐ第2作とのこと。著者として自信作だったらしいが、あまり知られていない。2020.8.26
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ドストエフスキーの第2作目。
1846年。作者25歳の時。
内容からすると、「二重人格」よりも「分身」の方がぴったり。
ドイツ語に直すとドッペルゲンガーだそうだし。
ゴーゴリ風の文体で書かれた作品という訳者の説明だが、前半はとくにそうなのだろうが、後半になると、主人公のモノローグに近くなり、不安と葛藤と焦燥にかられて暗鬱なペテルブルグを彷徨う主人公ゴリャートキンの内面描写は、後年の「罪と罰」のラスコーリニコフを思い起こさせる。
だが、デビュー作の「貧しき人々」の大好評に反して、この作品はさんざんな評価だったらしい。
ドストエフスキーは終生この作品を気に入っていたというから、もともとこういう病的な心理描写が好きでもあり、余人には真似できないという自負もあったのだろう。ドストエフスキーの魅力の一つである支離滅裂にのたうちまわる内面を描写する手法を、ここで発見したということもあるのかもしれない。
もちろん、作者も主人公も、まだ深淵に、地下に降りておらず、たんに地上を駆け回っているだけという感じ。
発表当時、冗長という批判があったそうだが、そのせいもあるだろう。
その一方で、すでにゴーゴリ的世界を抜け出て、現在の都市生活者の不安と幻想を持つゴリャートキンの心理的リアリティを、当時の感覚ではまだ理解できなかったということもあるのではないか。