- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003364031
感想・レビュー・書評
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個人的・内面的な「宗教的経験」をたくさんの事例(文献)によりながら解明していこうという姿勢は、心理学のモノであって、社会学のそれとは根本的に異なる。1902年の本だから、ジェイムズの心理学は今日から見れば少々古くさくて「甘い」ところもあるのだけれど、しかしそれは読むに値しないということではない。むしろ、最後まで面白く読めた。
人類学的な諸宗教の知識をジェイムズが持っていなかったわけではなく、ヒンドゥー、イスラム、仏教などにもほんの少し触れているが、やはり文献はヨーロッパのキリスト教のものが圧倒的に多いのだから、基本的にここで書かれている「宗教的経験」は西欧キリスト教のそれである。
ヨーロッパだからそうなったのか、キリスト教だからそうなったのかは知らないが、ヨーロッパ=キリスト教の宗教的経験の構造は、あくまでも「個人対神」である。他の人間たち(他者や社会)は、この特権的体験にあっては黒く塗りつぶされて完全に視界から消える。これはアジアの伝統宗教にはない構図だ。あくまでも西欧は、「個人」がすべての起点であって、その「個人」とは神以外の他者を必ずしも必要としないモナドなのである。
そう思いながらこの本を読むと、ヨーロッパ精神史の中核部分に触れているような気がしてくる。
また、神そのものや宗教制度の構造を問うのではなく、ひたすら宗教的経験の個人にとっての意義を問題にしてゆく手法は、やはり「プラグマティズム」なのである。
全然関係のない、私的なことになるが、そういえば、自分の音楽観も「プラグマティズム」なのかもしれないなあ、と、はたと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
先月の末から読み始めて昨日読み終わった。上巻よりも理性と感情に迫る部分が多く読み応えがあった。自身は宗教者であり、信仰を人生のよりどころとしながら、狂信や盲信を否定し、個人に対する人生の救済と世界の福祉とかかわらないような信仰に疑問を投げかける。
決して護教的な論説ではなく、経験に基付いた観察と研究の成果としての力作であると思う。プラグマティズムの中心的な思想家として位置づけられるジェイムス。理性のみの哲学思想から、必ずしも合理的だけではない歴史と人間の生を宗教経験を基にして語り掛ける。
とても面白かった。そして何度もうなづいた。よかった。
16/6/18 -
心理学から思想、哲学、そして宗教学へ流れていったジェイムズ。えきさいてぃんぐ!
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https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00130295 -
大学で神秘主義を勉強してた身としては必読の書。…なんだけど、上巻を3分の一くらい読んで放置状態…。
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宗教的経験が人間生活に対して与える"果実"について分析しています。ジェイムズの結論としては宗教的経験は潜在意識が意識に流入することによって神が現前する感覚が起きるものとしていますが、彼自身の過剰信仰として、それでもなお神は存在すると告白しています。