天文対話〈下〉 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003390627

作品紹介・あらすじ

本書の公刊は1632年。今日でこそ地動説は不動の真理として認められているが、ガリレイの生きた時代にあってはコペルニクス体系を支持することは容易なことでなく、この本を書いたためガリレイは異端審問にかけられた。しかし、地球の運動の証明に捧げられた本書は、新しい科学の方法論を確立した科学史上の古典として遺された。

感想・レビュー・書評

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  • 《概要》
    全4日間の対話篇の形式。下巻には3日目から収録。

    3日目では、大地が年周運動をしているかどうかという問題関心を背景に、諸々の天文観測結果が取り扱われる。
    ここには「世界が有限か無限かは立証されていないが、もし世界が有限で球形で中心があると仮定すれば、太陽の方が中心にふさわしいと思われる」という主旨の言及がある。
    また、地動説を補強するために、地球が磁石であるという説に触れている。

    4日目では、ガリレオが地動説の証拠と主張した海の潮の干満が取り上げられる。
    地上の事物はほとんどが地球と共に動くから地球の運動の証拠を示さないが、大量の水(海)だけは例外であり、潮汐こそ地動説の証拠としている。

  • ガリレイ(青木靖三訳)『天文対話』(下)岩波文庫、1959年:第三日、第四日の鼎談を収めている。第一日はアリストテレス自然学への疑いを示し、第二日は地球の自転に関する議論で、落下点の移動や遠心力の影響などの駁論を検討していた。第三日では、まず、1572年カシオペア座に現れた「新星」が月下界のものであるとする、キアラモンティ・スキピオーネ(1565-1652)の『反ティコ』(1621)に対して批判を行う。『反ティコ』に書かれたティコ・ブラーヘ、ラントグラーフらの13人の天文学者のデータを再検討、幾何学的検討および光滲作用から、新星が月下界にないことを論証する。つぎに望遠鏡で発見された金星の満ち欠け、火星・木星・土星の外惑星に滞留・逆行(地動説でいえば地球が外惑星を追い越すときに起こる逆行や速度の変化)の現象が生じることなどから、シムプリチオの口からコペルニクスの地動説体系を「力づく」で言わせる。また、黒点の移動や形の変形から太陽の自転を説明する。地球が公転しているとすると恒星に視差が現れるはずであるが、当時の観測精度では見いだせなかった(1837年ベッセルで恒星の視差が観測される)。地軸の傾きからは、季節の変化も説明している。さらに、イギリスのウィリアム・ギルバートの「磁石哲学」から影響をうけ、地球が磁石であることも結論している。第四日の議論は、潮汐の原因が地球の自転と公転の合成運動によるものとし、速度が変化しながら動く容器に入った水の振る舞いから、潮汐を「振り子」として説明している。この潮汐論から、ガリレイはコペルニクス説の優位を結論する。万有引力の理論がなかったころの話なので、機械論から潮汐を理解するとこうなるのである。よく言われるように、ガリレイは潮汐について月や太陽の影響を無視したわけではない。このころ、潮汐については、マルカントリオ・ドミニス(1556-1624)の月と水の引力理論や、ジロラモ・ボロ(1512-92)の月の熱による蒸発理論などがあり、まだよく分かっていなかった。ガリレイによれば、潮汐は規則的な運動ではなく、現代の言葉でいえば「複雑系」なので、これを導き出す理論も変化を内包していなければならない。この変化を説明するためにガリレイは地球の公転と自転が加減することをもちだすのである。万有引力(ある意味、天体の親和力)は地上の物体を扱う力学から考えると不思議な面があり、重力の媒介が何かという点で今でもよく分からないのである。ガリレイはケプラーの『神秘な宇宙』を献呈されたとき、コペルニクス説を採ると手紙で言っているが(1597年)、ニュートンの万有引力に近い考えを抱いていたケプラーの神秘主義を惜しんでいる。つまり、ガリレイは一貫して機械論哲学だったのである。書中のデータ、太陽との距離は地球半径の1208倍、太陽直径は地球半径の11倍、60マイルの北進で北極が1度高くなること、地軸の傾きは23度半なども大変興味深い。これを換算すると、地球の直径は6873マイル、約12万kmになる(1マイル:miglio=3000腕尺:braccia、1braccia=0.58m、現代では139万2000km)。太陽までの距離は1444万5000km(現代では平均距離は約1億5000万km)である。まあ、現代の観測値とは桁が違うのであるが、この辺りのデータの出典や測定方法は書かれていない。どこからでてきたのか調査が必要である。『天文対話』は1632年2月公刊、同年8月には禁書となった。翌年33年6月には異端審問所から有罪判決を受けた。「それでも地球は動く」とか「ピサの斜塔から落体の実験をした」というのは伝説である。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/4003390628
    ── ガリレイ/青木 靖三・訳《天文対話(下)19610405 岩波文庫》
     
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/400339061X
    ── ガリレイ/青木 靖三・訳《天文対話(上)19590825-19701030-岩波文庫》
     

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著者プロフィール

数々の実験を考案して力学や地動説を確立した「科学の父」。

「2013年 『望遠鏡で見た星空の大発見』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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