家族・私有財産・国家の起源: ルイス・H・モーガンの研究に関連して (岩波文庫 白 128-8)
- 岩波書店 (1965年10月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003412886
感想・レビュー・書評
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エンゲルスの唯物史観を理解できる有名な歴史的古典名著。左派イデオロギー著作の側面もさることながら、人類学の書としてとても面白い。本書がイデオロギーに束縛されることなく読書・レビューできる点において、世の中が改善されたと思うようにしたい。約130年前の書物だけに、今となっては誤りや差別的発言も多々あると思われるのだが、古典として楽しめれば良いと思う。
盟友マルクスの死後、「男の約束」により書きあげられたという。(笑)
人類学者モーガンの仕事に立脚しながら、人類の無制限な性行為から家族・男女格差を形成するに至る発達段階を叙述していく。また、私有財産の創出が次第に格差・階級を生み、国家が形成されるまでの道程を描く。要点は巻末の解説にわかりやすく記載されています。
本書の要諦は、第二章と第九章ではないだろうか。
第二章は、人類が家族を形成するまでが描かれているのだが、正直言って面白すぎました。難を言えば、全体の4分の1程度を構成する一番長い章であるので、節にわけて欲しかった。あと、エンゲルスさん、もっと図を多用して欲しい。少し不親切です。えっと、姉妹の夫と兄弟の妻が互いの・・・、だんだん頭がウニウニになっていきます。(笑)
近親相姦を含む性行為→集団婚(母系家族の形成)→プナリア婚(氏族の形成)→対偶婚(私有財産が生まれる)→単婚(父系による相続)という人類史発展の大まかな命題が提出されており、とても刺激的な興味をそそります。ただ、モーガンの書の引用が多すぎ、紹介がほとんどなところは現代では少し通用しない部分であると思える。また、その後の人類学の進展からモーガン説もかなり乗り越えられているようにも思う。
第三章から第八章は、イロクォイ族、ギリシャ、ローマ、ドイツといった具体例が記述され、第九章が全体を振り返り、氏族→富の格差形成(商品、奴隷)→国家の形成に至る発展を見通している。個人的にはその洞察・分析手法は大変に優れていると思うのだが、未来への見通しの部分については、現代視点において社会主義国家のその失敗が明らかなことから、やはり「空想的」だったと思わざるを得なく、せっかくの論理に水を差しているような気がしてならない。また、国家への形成が軍の指揮官による王化であり、富の格差から生じた階級間の調停者として現れたとする論理には飛躍が感じられ、もう少し論理と見通しの補強が必要なのではないか。
全体として自身の歴史発達段階説とイデオロギーに対応するように、モーガン説を巧みに取り込んでおり、強引さと懐疑性を思わざるを得ない要素があると感じる。また、理論もかなり大雑把すぎるように思う。ただ、時代を反映した古典的叙述であることを考慮に入れ、純粋に研究史的に後に与えた影響がとても大きかったことからやはり歴史的名作と言えるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
エンゲルスとマルクスによる著書。
国家について論じるにあたって、
国家の最小単位である家族の起源にまで遡って論じる。
家族の起源にまで遡ることから、
国家の起源、現代の国家像への遷移をすくい取っていく論理の組み方は、
ジョンロックの市民政府論や、ルソーの社会契約論と近い。
また、
ラッセルの結婚論にも、家族の起源についての言及があり、男女間の性愛、家族、国家の政治哲学と、ここにきてあらゆるものが繋がっていく感覚になる。
人間は、
一夫一妻制が自然なのではなく
多夫多妻制、集団婚が自然であったことが、
見えてくる。
集団婚が単婚になった背景に、
文明の変遷があり、そこに面白さがある。 -
高校時代想い出の2冊のうちの一冊。
家族制度なんて信じちゃだめだ。労働力を自動的に再調達するための手段なんだ。テレビドラマはプロパガンダなんだ。なんて言ってカノジョを困らせた。
とは言え、この本読んだからそう言ったというよりは、違和感にぴったりの題だから引き込まれた。生徒会長やってた同級生に薦められた。これって同志?な交換日記、などなど。
今読んだらどんな感じかなー。取り敢えず大きい字のが要るな。 -
マルクスを読む前に教授に薦められた本。
半分くらいしか理解できなかったけど、国家の成り立ちについての解釈は興味深かった。ヘーゲルとは全く違う見方をしていて面白い。 -
・・・・・書きかけ・・・・・
189年前の1820年11月28日ドイツに生まれて、74歳で亡くなった思想家・革命家、マルクスの相方。 -
初心な子たちに人の欲望や醜さを見せずに社会の変遷を説く、結構無理のある健気な本
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社会主義の歴史的正当性の証明を試みる。