市民自治の憲法理論 (岩波新書 青版 A-42)

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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004100423

感想・レビュー・書評

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  • 「市民自治」を基軸に据えた憲法理論を構築することの必要性を主張している本です。

    第1章は、戦後になってもなお、憲法学説の中に官治主義的な発想が根強く残っていることを指摘し、市民自治に基づく新しい憲法理論を構築することの大切さを訴えています。とくに行政法学において、「私人」の統治という観点から理論構成がおこなわれており、市民自治に根ざした理論の欠如が著しいことを批判的に論じています。

    第2章は、従来の憲法学説を検討し、その問題点が指摘されています。著者は、1948年に法学協会が発表した『日本国憲法註解』を取り上げ、その問題点を明らかにします。

    第3章は、著者の考える市民自治の憲法理論の大枠が素描されています。

    とくに第2章の学説史的な解説が、興味深く読むことができました。

  • コミュニティ政策学科 K先生

    それまでの「行政は法の執行」という行政学の概念を改めて、
    憲法に明記されている国民主権=市民主権と置き換え、
    主権者である市民に近い政府としての自治体が
    第一義的な政策の責任を担うとの考え方は、
    1975年当時の自治体行政に大きな影響を与えた。

    今日読んでも、まったく色あせない名著である。


    資料ID: C0002911
    配架場所: 本館2F新書書架

  • 1975年時の論ですが、ほとんど古びた感がないです。
    今、自民党の改憲案論議が盛んですが、なにが論点の軸になるべきなのか、改めて理解するためのヒントを提供してくれます。
    ちょっと用語が今となっては難解かも知れませんが、繰り返して論述されるので、分かりにくくもないです。

    これまでいかに憲法理論の議論が専門家にも市民の間でも成熟してきてないか。その土壌の上に現れたのが今回の、とんでも案だったのかも。
    「憲法理論の再編という課題は、いわゆる憲法学者をもふくめて、ひろく市民としての具体的な個人によって遂行されるものである。」(著者)
    「国家」からでなく市民から出発して考えるべし。

  • トップダウンの憲法から、ボトムアップの憲法へ。
    国家―自治体―市民の構造も健在。彼の思考に刺激を与えたのは公害病とそれへの市民自治体による運動なんだろうなあと感じさせる。

  • [ 内容 ]
    憲法は国家のものか、市民のものか。
    今日、市民運動の昂進は、従来国家統治の対象とみられていた市民こそが、憲法理論をつくる主体であることを認識させつつある。
    本書は、既成法学の国家法人論的概念構成を批判し、市民自治から発する分節政治システムと、基本的人権を核とした国民の政府への機構信託を構想することによって、憲法学と政治学の結合を前提とした、国民主権の日常的発動を目標とする憲法理論の再構成を具体的に展開する。

    [ 目次 ]
    1 市民参加と法学的思考(憲法と対立する法学的思考;官治型理論から自治型理論へ;分節政治システムの構想;市民自治の法学的課題)
    2 戦後憲法学の理論構成(戦後憲法学への展望;国民主権と国家主権;基本的人権と公共の福祉;自治体と国家統治;戦後憲法学の問題点)
    3 憲法理論への市民的視角(憲法理論の問題性;市民運動と憲法構造;憲法範疇の再構成;憲法理論の基本論点;憲法理論の再編と自立)

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著者プロフィール

1929年福井県に生まれる.現在,法政大学名誉教授.元日本政治学会理事長,元日本公共政策学会会長.
著書:『市民政治理論の形成』『現代政治の条件』『現代日本の政治的構成』『戦後民主主義の展望』『現代政治学』『シビル・ミニマムの思想』『都市政策を考える』『現代婦人問題入門(編)』『市民参加(編)』『市民自治の憲法理論』『新政治考』『職員参加(編)』『市民自治の政策構想』『都市文化をデザインする(編)』『市民文化は可能か』『社会教育の終焉』『ロック「市民政府論」を読む』『自治体の国際政策(編)』『都市型社会の自治』『昭和後期の争点と政治』『政策型思考と政治』『戦後政治の歴史と思想』『現代政治の基礎理論』『日本の自治・分権』『政治・行政の考え方』『自治体は変わるか』『都市型社会と防衛論争』『戦後政党の発想と文脈』『自治体再構築』『転型期日本の政治と文化』『現代政治*発想と回想』『国会内閣制の基礎理論』『自治体改革*歴史と対話(本書)』など.

「2010年 『自治体改革*歴史と対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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