- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004160588
感想・レビュー・書評
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古代から現代にいたるまでの中国科学史を概観している本です。
東西の占星術を比較しているところで著者は、ヨーロッパの占星術とは異なり、中国の占星術は皇帝を中心とした国家の運命を占うものであり、古人の運命を占うものではなかったという点に着目して、政治と知のありかたに密接な関連があることを示唆しています。さらに中国の数学は、「九章算術」のような非常に高度な算術の発展を見たにもかかわらず、アリストテレスにおいて大成されたような形式論理学をもたず、学問的な普遍性を追求する方向へと知が発展することがなかったと論じられています。こうした見かたは、西洋近代の学問観を基準に中国の科学的な知を評価するものであり、現在ではややステレオライプの議論にも思えます。
そのほか、イスラム文明との交渉や、近代以降の中国が西洋の科学に対してどのような態度をとってきたのかといった問題についても解説がなされています。 -
YK7a
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中国は、エジプト文明などと並んで四大文明の一つに数えられます。しかし他の文明と異なるのは、中国古代の文明が、今日にも受け継がれ、実際に利用されているものが少なくないところです。例えば鍼灸や漢方薬などは、古代に発祥して今日も利用されていて、実際の効果を発揮している。また、中国が生み出した火薬、羅針盤、紙は、世界三大文明と賞賛されることも多く、世界史的に与えたインパクトは大きい。
しかし早い段階で成熟した中国文明も、近代に入るとその威光は徐々に薄れていき、自らの力では変革、発展ができなくなってきて、西洋の先進国からの導入を余儀なくされた。
こういった中国科学文明の流れを丁寧に解説しているのが本書で、1970年発行という内容の古さが若干あるのは否めなくもないが、中国の科学史を知る上では現在も尚、好著であります。