- Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004201267
感想・レビュー・書評
-
これは久々に大当たりだった。岩波文庫のプラトンの訳者で有名な藤沢令夫の『ギリシャ哲学と現代』。僕が生まれた年に発刊された新書だが、道徳や価値の多元化がより進んだ現代こそ意味のある書物だと思う。
現代の消費社会に見える物質主義の違和感を克服するために、主観・客観、宗教・科学、価値・物質の二元的対立の起源を古代ギリシャの思想までさかのぼり、その克服、調和を目指している。しかしそれは弁証法的になされるのではなく、古代ギリシャのもともとの世界観と思想から、その調和のイメージを取り出す作業だ。精神・物質の二項対立の思想的土台を作ったのも確かに彼らだった。しかしそれらの思想が訴求されていった背景を知ることを通じて、そのとらえ方と範疇を丁寧に理解し、物心一方のみの暴走を止める必要がある。現在は方法論的な立場から、一面的な追及がなされた結果、上に述べたような消費社会の違和感が私たちを「現代」というとらえどころのない宇宙空間に投げ出してしまっている。人間が幸福を求め探求していたものとはいったい何だったのか。それを考え直す、よい材料を提供してくれる一冊。
余談だが、僕はAmazonの中古で300円で購入した。しかし現在は中古であっても8500円になってしまった。記号の価値の恐ろしさを感じた一冊(笑)。
17.9.6
200ページほどの新書で、語り口調で詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1980年発行。20年前に大学時代の先輩からもらって、すっかり黄ばんだ本を今頃になって読んだ。「客観的」「没価値的」な「科学的」「機械的」世界観が現代世界に歪みをもたらしている、という今となっては言い古された現状認識にたって、そうした世界観の淵源を古代ギリシアの原子論や実体・属性の観念に求める。そしてまた、それを乗りこえ得る発想をも古代ギリシアのプラトン・アリストテレスの思想に求めている。「機械的」世界観が人間の生き方をも物理的な「運動」としかとらえられないものにしていくのに対し、アリストテレスのエネルゲイアの思想は人間の生き方を「活動」という本来的なとらえかたにつなぎとめてくれる。
哲学関係の良書は、どれも古さを全く感じさせない。蒙を啓かれる読書体験の連続である。 -
[ 内容 ]
現代は自然科学と工業化によって特徴づけられるが、そこには世界・自然を認識する知と、人間の生と行為を導くべき知との分裂がある。
著者はこの分裂の淵源を古代ギリシアに求め、プラトンとアリストテレスの哲学に、人間の生と行為の本来的なありかたを捉え直すための原理的視点を認め、その継承と再生を自らの課題とする。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]