憲法第九条 (岩波新書 黄版 196)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004201960

感想・レビュー・書評

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  • 憲法第九条が生まれる歴史的経緯が解説されるとともに、九条の平和主義をめぐる著者の主張が展開されています。

    本書は米ソ冷戦時代に書かれた本なので、現代の国際情勢にあわない叙述も散見されます。それは、中国や北朝鮮の脅威が高まりりつつあるという、改憲派の主張するような意味においてだけではなく、九条の平和主義を国民国家の水準においてのみ論じているという点にも見られるように思います。

    ただしかえってそのために、今日では憲法をめぐる議論のゼロ・ポイントが当時より相当にせりあがっていることに改めて気づかされることになりました。その意味では、本書刊行以後の憲法をめぐる議論の推移は、改憲派の台頭ということ以上に、護憲派の理論的怠慢にその責任があるというべきなのかもしれません。

  • [ 内容 ]
    「陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない」。
    惨憺たる戦争体験の後に生まれた平和憲法、その中核たる非武装規定は、戦後の軍事力強化の波に翻弄され続けてきた。
    だが、そこに凝縮された思想こそ、今日、世界に向かって鮮やかな光を放っている。
    第九条誕生の背景と空洞化の跡をたどり、新しい平和保障の構想を具体的に提起する。

    [ 目次 ]
    第一章 地球時代における平和憲法(人類の当面する危機と課題;根本発想の転換の必要;憲法九条を支えるグローバルな客観的条件)
    第二章 憲法九条の誕生とその背景(憲法第二章の成立;第九条の発案者と推進力;平和憲法誕生の歴史的意味)
    第三章 憲法九条の意味の解し方(九条解釈論争-とくに自衛権論をめぐって;公定解釈の変化と「戦力」の意味論;非武装規定の現実的意義)
    第四章 空洞化する非武装規定(再軍備の始動と進展;軍事国家への道;第九条をめぐる政治と裁判)
    第五章 平和憲法を歪めるもの(憲法と日米安保条約;「安保」をめぐる政治的力関係;国内における軍事推進力;自衛隊とその存在性格)
    第六章 国民世論の推移と憲法(第九条をめぐる国民の意識;憲法九条の「変遷」と規範力;自衛隊の法的地位の考察)
    第七章 現代国防論の欠陥と虚妄(「自主=防衛」論の矛盾と虚偽性;狭い閉鎖的思考の危険;体制防衛のパラドックス)
    第八章 平和のための積極的構想(軍縮=平和のための運動と教育;安全保障の制度的諸方式;非武装防衛の方法;非暴力抵抗の問題点)
    結び-憲法九条を生かす途

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著者プロフィール

1921年生まれ。[現職]東京大学名誉教授。[専攻]憲法学・法哲学・人間学。
『憲法の構成原理』東京大学出版会,1962。『日本国憲法の問題状況』岩波書店,1963。『憲法秩序の理論』東京大学出版会,1986。『憲法学の基本問題』有斐閣,2001。『法の人間学的考察』岩波書店,2002。

「2005年 『東北アジアの法と政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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