集落への旅 (岩波新書 黄版374)

  • 岩波書店 (2011年5月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784004203742

みんなの感想まとめ

テーマは、現代社会における人々の迷走と、自然や人類知との接点を再発見する旅です。多様な集落を巡ることで、均質な空間からの脱却や、真の魅力を感じ取ることができると示唆されています。著者は、系統だった記述...

感想・レビュー・書評

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  • 現代の迷走は、均質的な空間にすむことにより、自然や人類知と呼べるものから切り離されることから生じるのではないか。一度接点を振り替えることでこれから進むべき姿が見えてくるのではないか。そう思わせてくれた。

  • 建築家の原広司氏が1970年代の世界各地の集落を訪れて、その建築や環境から学んだことを綴った紀行文。

    筆者らは、近代建築の理念に基づいて作られたインターナショナルな空間とは異なるヴォキャブラリーを基にした建築空間の作り方を模索しており、集落や集合的な空間の中にそのあり方を探っていた。本書でとり上げられている集落への旅は、そのようなヒントを探るために実際の集落とその空間を体験するために始められたものである。


    各地での発見はそれぞれに大変興味深い。

    スペインから北アフリカを巡った最初の旅では、様々な広場のあり方を発見している。我々がよく知るヨーロッパの都市の広場はキリスト教典型集落の広場であり、それは権威の表現のための広場という性格が強い。一方、モロッコのメディナの広場は、外部から訪れる人々と集落の内側との緩衝地帯という役割を担っている。イスラム圏における交通の要衝であり、集落の外から多くの人が訪れる。中庭を持つロの字型平面の住戸や迷路のような街路空間は外からの人や情報の侵入から守りを固める形になっており、広場だけが外部からの隊商や旅人を受け入れる空間になっている。これによって、集落の中の秩序や安全を守りつつ、外からの情報を取り入れることができる。広場はいわばフィルターのような機能を果たしていると言ってもよい。

    また、スペインの横穴住居集落であるクエバスは、広場が集落を分節化しコミュニティの秩序を構成するために作られている事例と言える。この集落では、個々の住宅に便所や風呂がない一方で、横穴住居の上の地面にひろがる空間にこれらの機能が置かれている。このような広場の単位によって、家族的な付き合いの範囲が規定される。


    また、集落における建物の密度にも、世界各地で大きなバラエティがある。集落というと非常に密集した形態を想起しがちであるが、筆者らがグァテマラで見た離散型集落では個々の住居は互いに離れて建てられている。それらは互いに身振り手振りで意思疎通をすることが可能な程度の距離で隔てられており、その間は休耕地となっている。筆者はこのような事例から、密集して建っていなくてもこれらは集落と呼べる一体性を保つことが可能であるということを述べている。

    密度だけでなく、空間や人の流れを分離するやり方にも、世界各地で多様性がある。例えばインドは、宗教、民族、そして身分において非常に多様な人々からなる混成系の社会である。そして、共同施設や宗教建築の位置、集落内部の道や空き地のような隙間空間、さらには住居内部のゾーニングまで、様々なレベルの空間が集団の中のサブグループを分離し秩序立てるために使われる要素になっている。インドの集落はこれらの様々な手立てを駆使した混成系の空間であり、一見外部から分かる構造的な特徴がないものの、その中には明らかに集落と呼べる空間的構造と社会的秩序が存在している。


    本書は、集落の空間構成の原理を理論的に整理することが目的の本ではないが、最後に筆者はこれらの集落への旅を通じて筆者が感じた集落がつくる風景の捉え方を述べている。それは主に〈一覧表〉と〈配列表〉と筆者が呼ぶものから構成されている。


    〈一覧表〉とは集落を構成する代表的なヴォキャブラリーを集めたものである。例えば集落には、円形プランの棟、方形プランの棟、厨房、あずまやといった建物、塀や屋外の仕切り壁、さらにはかまどやベッドなどの道具など、基本となるヴォキャブラリーが存在する。これらを様々な集落から事例を集めることで、〈一覧表〉を作ることができる。また、これらの要素をどのようにつなぎ合わせていくかというルールを示した〈配列表〉も、様々な集落の事例から抽出することができる。それぞれの集落には、その集落の社会の構造に沿った領域形成としての〈配列表〉がある。

    様々な集落の事例を集めることで、世界の集落を網羅した〈一覧表〉と〈配列表〉が出来上がる。それに加えて自然条件や地理的条件が存在するため、それらに適合するための工夫や創造性も求められる。このような条件に適合するために集落の人々が編み出した工夫が、空間形成の方言として、世界中の集落の多様性を生み出している。

    外見は多様でありそれぞれの土地に根付いた集落という仕組みを、このように〈一覧表〉、〈配列表〉、その土地の環境要因という視点で見つめ直すことで、別の場所で建てられる建築の空間を考える上でも参考になるアイデアを与えてくれる。


    様々な土地の集落を同じ尺度や視点で比較するのではなく、それぞれの社会のあり方や自然環境から立ち上がってきた形態や機能としてまず虚心坦懐に見つめて、その構成原理を発見的に探求していく視点が、とても興味深かった。また、たとえ文化的な背景が異なる地域で見られた空間構成であっても、その理屈が分かれば筆者自身の建築作品にも応用できると筆者は考えており、集落に学ぶという筆者の姿勢が垣間見られる本だった。

  • 2012-6-21

  • 紀行文である。

  • あまり系統だった記述でないし、それでいて写真が豊富なわけでもなくイメージがつかみにくい。ただし、かえってそれゆえに「世界各地を回って、出会いを先々で探る」というスタイルの旅のあり方の魅力が滲み出してくる。それに、また、やはり自ら現地にいかないと感覚は掴めないものだよな、という思いも抱かされる。結果として、やっぱりあちこちに旅したいという思いが強くなる本でもある。

    イランを旅したときの記述で、ガイドの青年について書かれているのが興味深かった。やぱり、未知の土地を巡る際には、ガイドの存在がとても大きいし、ガイドの性格その他がその土地への印象に与える影響が大きいのだと思った。

  • ※自分用メモ

    【出会い】
    書店店頭にて。復刊版(1987年→2011年)とのこと。
    日本でも国外でも、都市を離れた集落には何かしら惹きつけられる魅力がある。
    世界各地の集落を俯瞰した時に、その魅力の源泉はどこにあるのか、またそれに迫るためのフィールドワーク術を知りたいと思い。

    【概要】
    世界の集落探訪

    【感想】
    よくこんな隅々までまわったなという感じ。生産研にこんなエキサイティングな研究者たちがいたとは。

  • (110922)
    原広司氏の集落論といえば、「集落の教え100」が有名だが、
    本書はその原点ともいえよう。
    図や写真が少ないため、少し難解な部分もあるが、
    熟読すればするほど味の出る1冊であるように思う。

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著者プロフィール

建築家。1936年生まれ。1964年、東京大学大学院博士課程修了。1969 年、東京大学生産技術研究所助教授、1982 年より教授。1997 年、退官、同名誉教授。1970 年よりアトリエ・ファイ建築研究所と設計共同。1999 年より原広司+アトリエ・ファイ建築研究所所属。主な作品:田崎美術館(1986)、ヤマトインターナショナル(1986)、内子町立大瀬中学校(1992)、新梅田シティ(1993)、京都駅ビル(1997)、東京大学生産技術研究所(2001)、札幌ドーム(2001)など。主な著書:『建築に何が可能か』(学芸書林、1967)『空間〈機能から様相へ〉』(岩波現代文庫、2007)『集落への旅』(岩波新書、1987)『集落の教え100』(彰国社、1998)『Discrete City』(TOTO 出版、2004)『住居集合論Ⅰ・Ⅱ』(鹿島出版会、2006)『YET』(TOTO 出版、2009)など。

「2014年 『HIROSHI HARA : WALLPAPERS』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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