獄中一九年: 韓国政治犯のたたかい (岩波新書 新赤版 345)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303459

作品紹介・あらすじ

一九七一年、祖国に留学していた在日韓国人の著者は、「北のスパイ」として突然逮捕される。執拗に続けられる拷問、屈するよりは死を願い負った火傷、そして死刑判決…。新書『徐兄弟 獄中からの手紙』で知られる著者が、監獄という社会を克明に描きつつ、独裁政権への痛烈な批判、そして分断下にある民衆への深い愛情を文字に刻む。

感想・レビュー・書評

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  • 1994年出版。在日朝鮮人である著者、徐勝氏がソウルに留学中の1971年に「スパイ」として逮捕され、その後19年もの間、監獄に入り見たこと考えたことなどを記した新書。
     
    著者の徐勝先生を私はそれなりに知っているつもりだった。数年の間ではあったが、比較的近くで接したことがあるからだ。韓国人のアジョシのような人懐っこさと、火のように苛烈な性格を持つ先生。私はそれを、19年もの間、転向工作や拷問に耐えた鉄のような意志の人間だからこそだと思っていた。しかし実際は、そんな先生すら萎縮するような激しい拷問、過酷な監獄での生活・・・想像してしまうと胸が悪くなるような内容ばかりが並ぶ。
     
    私は先生と一緒に西大門刑務所跡を訪ねたことがある。先生が施設の方に「あそこが俺の部屋だ」と言って、見学範囲外の部屋の鍵を開けさせていたのを思い出す。その時、先生は言っていた。運動の時間に運動場に出て、遠くの山を行き来する普通の生活を送る人を眺めるのが何よりも楽しみだったと。
    思想一つで、人の普通の生活を奪ってしまう「思想転向制度」とはなんだったのだろう。
     
    私は先生が19年も獄中にいたことを知りながらも、今まで関連の本を読もうとはしていなかった。いま、ようやく読んだのは皮肉にも、非転向長期囚をモデルとした北朝鮮映画を見て関心を持ったからだ。
    まだ、彼らについてよく知らないし、かつては先生の主張についてもよく理解できないことが多かった。

    私が礼を失して長らく連絡も差し上げていないのだが、今になって改めて当時のことや北朝鮮についての話を聞いてみたい気持ちだ。しかし、はてさて、そんな機会があるかどうか。それまでに関連の本を数冊でも読んでおきたいと思う。

  • 著者とは言わずもがなの仲。
    忘れちゃいかん過去と思うけど時論的な問題意識は持たなきゃ、ね。

  • 2冊

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著者プロフィール

1945年、京都府生まれ。立命館大学法学部特任教授。東京教育大学卒業、ソウル大学校大学院に留学。2011年6月「真実の力」第1回人権賞受賞。東アジアにおける重大な人権侵害とその回復、および同地域における和解と平和を研究。著書に『獄中19年』(岩波新書、1994年)、『だれにも故郷〈コヒャン〉はあるものだ』(社会評論社、2008年)、『東アジア平和紀行――韓国、台湾、沖縄をめぐって』『東アジアの国家暴力と人権・平和』(かもがわ出版、2011年)、『文明と野蛮を超えて――わたしたちの東アジア歴史・人権・平和宣言』(共編、かもがわ出版、2011年)など。

「2013年 『言葉のなかの日韓関係』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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