日の丸・君が代の戦後史 (岩波新書 新赤版 650)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306504

作品紹介・あらすじ

掲揚と斉唱の定着化をめざす政府によって、さまざまな軋轢が生み出されながら、人びとの心に刺さり続けてきた日の丸・君が代。それに抗う人たちが訴えるものは何か。占領期から国旗国歌法成立後にいたるまで、数々の事件やエピソードをたどり、戦後社会が思想・良心の自由と歴史認識の問題にどう向き合ってきたのかを浮かび上がらせる。

感想・レビュー・書評

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  • 親は祝日のことを「旗日」と言っていた。確か、子どもの頃は日の丸を出していたようにも思う。そういう「刷り込み」があるせいか、「日の丸」「君が代」に違和感を持ったことがない。ただ、そうではない人もいる。強制するのはどうかとも思う。学校での「刷り込み」を懸念するのは理解できるが、親からの「刷り込み」もあるのでは。こっちは、問題ないのか、あるのか。

  • 新書文庫

  • 国歌・国旗問題をここできちんと勉強しておく。結局、戦争が悪い。それに尽きる。戦争を引き起こす、独占を根絶しよう。


    _____
    p23 日の丸禁止の巡幸
     昭和天皇は1946年から足掛け9年かけて全国を巡幸した。始まったころはまだ東京裁判も始まっていなくて、天皇が国民にどれだけ必要とされているかをアピールするためにも全国巡幸をした。
     この巡幸の始まりの頃は占領軍も日の丸の使用を禁止していた。しかし、解禁されてからは天皇の行く先には日の丸の旗を振る人が沿道を敷き詰めた。

    p46 緑の山河
     日教組が君が代を否定するためにつくった国民歌「緑の山河」という平和を歌った歌がある。

    p70 1958年のターンニングポイント
     58年の学習指導要領改訂によって教育路線はかなり変わった。日本の逆コースも関わっていたのか、反社会主義てきになった。ちなみにこの58年学習指導要領の目玉は道徳の導入である。

    p133 沖縄の日の丸
     本土で唯一戦場になった沖縄では、戦争の象徴となった日の丸・君が代はアンタッチャブルな象徴である。それは今も続く。

    p159 国旗・国歌は国際化
     88年の学習指導要領改訂で国旗掲揚・国歌斉唱を「望ましい」から「指導する」に格上げした。その根拠は、国際化の進む社会で必要な愛国心を育てるために、国の象徴である国旗と国歌の指導は必要だ。ということ。
     わかるが、国旗と国歌の選択を国民選挙で決めてからにすればいい。

    p167 聞かない自由
     国旗・国歌の問題は、「嫌なら歌わなければいい。見なければいい。起立しなければいい。」という自由があるから別に良いじゃんと思われる。
     しかし、「聞かない自由」を達成するのは難しい。斉唱の場にいたら耳をふさいでいてもかすかに聞こえてしまうだろう。
     
    p177 国立市
     戦後、公立学校の公式行事に日の丸・君が代が登場したことのない町(2000年当時)

    p194 校長の模範解答
     なぜ国歌斉唱で君が代を歌わなければならないのか。
    校長はこういう。「学指導要領にも書かれているし、教育委員から強く要請されている。また、国歌が無い国はなく、子供に日本国民としての自覚を育てるのに必要である。」
     ひどい時はこんな言い方もある。「そもそも子供は国歌なんてものは訳も分からず歌う。政治色に染まることなく歌っているのだから問題ない。国歌の意味は大人になってからわかるものだ。」
     洗脳の怖いところは、訳も分からず常用して、色を染められていくところなのにww

    p214 子供の差別の原因
     子供は無邪気ゆえに残酷である。
     子供たちは国歌や国旗問題を指導されるようになって、従って当然と何も考えずに起立して、斉唱する。しかし、万に一人、それに反対し、起立せず歌わない子供がいたら、その子は異端者になる。

     子供は異端者に厳しい。知識がないだけに、自分勝手な行動をする人間を妬みだけで差別する。国歌・国旗問題は指導を始めた時点で差別を生み出す装置になる。

    p221 君が代の意味
     君が代の君は天皇である。これは自民党の正式発表である。天皇の国である日本が永遠に続きますようにという意味の歌になる。
     そんな火に油を注ぐ解釈を公式発表にしなくてもいいのに…。
     さすがにここくらいは君=国民くらいにしとけばいいのに。

    p228 平和のドームの日の丸
     広島の原爆ドーム、そのそばに日の丸の国旗がはためくというのは、人によっては違和感の極致である。
     戦争反対の象徴のそばで、軍国主義の象徴だった旗が今でも揺らめいているという矛盾。



    ______

     この問題の理想的な解は、「棚上げ」だね。

     日の丸・君が代のままでいいけれど、強制されず、選択の自由を残したままにする。これ以外にないな。

     子供も、「なんで我が国の国旗・国歌にはこんな不思議な雰囲気が漂っているのだろう。」と疑問を持って、その意味を知ろうとするだろう。自分で勉強するようになるだろう。

     自分も何となく、日の丸・君が代のままでよいと思っていた。一番の理由は面倒くさいからだろう。
     でも、まぁ、やっぱりそのままでいいんだけれど、もっと好きか嫌いかを表現できる自由が無いとダメだと思った。

     自分はこれをどう教えていくのだろう。

  • いまだ話題になる日の丸・君が代について。

  • 「日の丸」「君が代」が日本の戦後社会でどのように受け止められ、
    また国家がどのように発信してきたかを描く一冊。
    著者の語気が非常に強く意識の高さを感じるが、
    その反面で裏付けとなる資料や根底にある原因などの提示が薄く、
    始終そのテンションの高さに置いていかれてしまった。
    紙面の都合や私の知識不足によるところが大きいが、
    「日の丸」「君が代」が戦前戦中にどのように取り扱われ、
    また戦後においては関連事象や背景について
    もう少し客観的な情報を知りたく感じた。
    文体が平易で読みやくはある。

  • 日の丸、君が代の議論は、底が浅いと言われることがある。
    なぜ、底が浅いと言えるのだろう。

    第二次大戦前に決めたことと、
    敗戦後に決めたことの連続性を求めたいのだろうか。
    あるいは、全否定したいのだろうか。

    もっと、文化、音楽、芸術の視点から、大きな取り組みが必要なのではないだろうか。

    最近、祭日に日の丸を掲げる家が少ない。
    その背景をもっと見ないと、日本が崩壊していくような気がする。

    10年、100年単位の議論があるとよいかも。

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著者プロフィール

1941年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。朝日新聞記者を経て、現在ノンフィクションライター。著書に『ドキュメント・昭和天皇〈全8巻〉』(緑風出版)、『合祀はいやです。』『生と死の肖像』(以上、樹花舎)、『反忠神坂哲の72万字』(一葉社)、『ドキュメント憲法を獲得する人びと』(岩波書店・第8回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞)、『日の丸・君が代の戦後史』『靖国の戦後史』『憲法九条の戦後史』(以上、岩波新書)、『蟻食いを噛み殺したまま死んだ蟻──抵抗の思想と肖像』(佐高信との共著、七つ森書館)他多数。

「2009年 『これに増す悲しきことの何かあらん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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