言語の興亡 (岩波新書 新赤版 737)

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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307372

感想・レビュー・書評

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  • 言語系統樹のモデルは万能ではないと主張し、地理的な伝播も考慮に入れた断続平衡モデルを提案する。安易な普遍化、演繹的な理論化を拒む生真面目さがフィールド言語学者らしい。第8章では、エヴィデンシャリティ、従属部標示型vs主要部標示型の対立と形容詞タイプとの相関など、言語類型論の主要なトピックが紹介されている。「基礎言語理論」についての概説もあって参考になった。
    ただ一点、歴史的に一度分岐した言語同士が再接近する例として、沖縄の例が挙げられている箇所が気になった。「沖縄語と日本語は元来二つの異なる言語へと発展を遂げたのだが、その後クレオール語化のような形をたどり、再び日本語の一方言になりつつある」(p86)
    沖縄の言語状況はそのような歴史的変化ではなく、いわゆる「言語シフト」という社会言語学的事象ではなかったか。適切な例示であったか疑問符がつく。

  • なんとなく、現在、世界で使われているあらゆる言語は、ある一つの言語から枝分かれしてできたもので、綿密に調査を重ねれば、系統図が描けるんじゃないかと思っていた。そうだよなぁ、そんな単純じゃぁないんだよなぁ。
    これから何世代か後も、世界が多種多様な言語で満ちあふれる複雑な世界であるといいな。

  • 世界各地で固有の言語が失われていく状況を示すと共に、言語"分析"の方法に関して「系統樹」的な分類による”言語圏”という考え方の限界を説いている。そして、断続平衡説と著者が呼ぶ、言語の変化(分化・統合)の考え方を示す。
    オーストラリア現地でのフィールドワークや、広範な知識に裏打ちされた話だけに、とても説得力がある。さらにはそれを一般読者にも分かるレベルで解説してくれている。
    グローバル化やそれに伴う英語公用語化の流れの中にいる我々にとって、読むべき一冊だ。

  • 【本文抜粋】
    どんな言語も、彼らがどう考えているか、何に価値を置いているか、何を信じているか、外界をどう分類しているか、彼らの生活をどう秩序だてているかなど、その話者の世界観を内に包んでいる。言語が死ぬということは、人間の文化の一部が奪われるということだ―永遠に。

    今日の言語学の最も重要な仕事、実際唯一の本当に重要な仕事は、フィールドに出ていき、まだ可能なうちに言語を記述することだ。形式文法主義者の理論の自画自賛は今でなくてもよい。いつでもできることだ。言語学的記述は今行わなければならない。

著者プロフィール

1939年イギリス生まれ、ロンドン大学にてPhD.を取得。前オーストラリア国立大学教授、現在、ジェームズ・クック大学教授。専攻はオーストラリア原住民語、言語類型論。主要著書に『The Dyirbal language of North Queensland』『A grammar of Yidin』(Cambridge University Press)、『Basic linguistic theory(Volume 1:Methodology/Volume 2:Grammatical Topics)』(Oxford University Press)ほか多数。

「2018年 『能格性 ERGATIVITY』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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