ロシア異界幻想 (岩波新書 新赤版 772)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307723

作品紹介・あらすじ

北方の森の民スラヴ人にとっての「異界」とは、キリスト教以前の異教的色彩を色濃く残した世界である。夜ごと訪れる亡者や家の精ドモヴォイたちは現代ロシア人の意識の深層に今も息づいている。そして死神や地獄の生々しい絵図、ロシア思潮の根底に流れる霊や終末のイメージを織り込みながら、世界樹へとつながる壮大な宇宙へと誘う。

感想・レビュー・書評

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  • 口承文芸や民間儀礼から近世ロシアの異界観を読み解くっていうのがテーマ。キリスト教布教以前の中世ロシアの異界文化について知りたかったのだが、なにせ参考にしてるのが近世のものなので、すっかりキリスト教ナイズされてるんだが、それでも異教時代の影響がまだ少しは残ってて、それがペーチカなどの家の構造や、ドモヴォイやキキーモラなどのロシアの妖怪、葬送儀礼に表れているのが興味深かった。というか、ドモヴォイってキリスト教のロシア布教に伴って成立した妖怪なのねというところに驚いたし、しかし妖怪というのが堕ちたる神なら、ドモヴォイは異教時代の竈の神がキリスト教によって変容したものと考えるのはわりとすっと理解できた。ヨーロッパや日本では楽園幻想というものは大体海の向こうや海の下に存在すると思うのだが、ロシアの場合は海の下にあるのは苦界であり、楽園は天にあり、天は歩いてたどり着ける、現実と地続きに存在する、という部分にロシアのヨーロッパともアジアとも違う特異性を感じたりなんだり。

  • 最近岩波の新書にハマってるので適当に買ってみたけど、ロシアの俗信的な話の内容からロシアの宗教の歴史的な見解などについて書かれている内容だった。
    ロシアの俗信的な話はそんなことあるんだ~っていう感じで読めたけど、宗教については、そもそもキリスト教のことを深くわかっていないので、あまりピンとこなかったというか勉強不足だなと思った。30代のうちに宗教についてもう少し知識を広げたいと思っていた昨今なので、これを機に少し宗教について書かれた本を読んでみようと思う。過去のロシア人が考えていた反キリスト教という対象は、現代でも受け継がれているのだろうか。ロシアはほんと土地的にもでかいし、偉人も多いし、謎が多い国だと改めて思った。ロシアという国自体が謎が多すぎて読んでいてピンとこなかったので、全体として楽しめなかった。そんなおれは無知な人間なのかな(笑)
    ドストエフスキーとかラスプーチンの話も絡めてほしかったなぁ~。絡まないかもだけど(笑)
    トルストイは偉大だ!(全く関係ない)

  • 近くて遠い文化大国ロシアと、日本人にとって未知がまだまだ広がるスラヴ、その基層としての民間伝承に迫れば、現代も理解る。

    九州大学
    ニックネーム:天神ルナ

  • [ 内容 ]
    北方の森の民スラヴ人にとっての「異界」とは、キリスト教以前の異教的色彩を色濃く残した世界である。
    夜ごと訪れる亡者や家の精ドモヴォイたちは現代ロシア人の意識の深層に今も息づいている。
    そして死神や地獄の生々しい絵図、ロシア思潮の根底に流れる霊や終末のイメージを織り込みながら、世界樹へとつながる壮大な宇宙へと誘う。

    [ 目次 ]
    第1章 「この世」と「あの世」のしきい
    第2章 家の霊域に棲むもの
    第3章 ロシア・フォークロアにおける「死」の概念
    第4章 「聖なるロシア」の啓示―民衆宗教詩『鳩の書』
    第5章 ロシア的終末論
    第6章 天国と地獄の幻景

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • キリスト教と古くからの信仰とが混ざり合った独特の世界観にうっとりとなる。ロシア素敵。ロシアの信仰について知りたい方にはおすすめ!

  • 民衆の口伝や文学などから話を集めた本。そういえば前に「吸血鬼伝承」で読んだような内容も書いてあった。死んだ肉親がその家族に会いに来るという。それと、竈の神様(先祖の霊)の話も沢山あった。ドゥオモヴォイという、竈の神でありまた、先祖の霊でもある神様の話はとても興味深かった。それに最後のロシアの宗教観。地獄や天国、死ぬということのフォークロアはなかなか興味深い。最後の付録「鳩の書」とやらも面白くはないが、何となく「付録」として私の好みだ。して、最後の審判のときに吹かれる七つの喇叭。普通は七人の天使が吹くけれど、ロシアではミカエルがすべて――しかも三つしかない――吹くようだ。ふむぅ〜。

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著者プロフィール

1934年、東京生まれ。東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。
東京大学名誉教授。博士(文学)。専攻はスラヴ文献学・スラヴ言語文化論。

著書に『スラヴ吸血鬼伝説考』(河出書房新社)、『スラヴのことわざ』(ナウカ)、『ロシア民俗夜話』(丸善)、『ロシア異界幻想』(岩波書店)、『諺で読み解くロシアの人と社会』(東洋書店)などがある。
訳書にプーシキン『ボリース・ゴドゥノーフ』(『プーシキン全集』第三巻、河出書房新社)、アンドリッチ『呪われた中庭』(恒文社)、ブルリッチ=マジュラニッチ『昔々の昔から』(松籟社)、ポゴレーリスキイ『分身』(群像社)など。

「2018年 『宰相の象の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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