社会力を育てる――新しい「学び」の構想 (岩波新書) (岩波新書 新赤版 1246)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312468

作品紹介・あらすじ

子どもや若者に広がる社会や他人への無関心。協力し、助け合える社会は築けるか。著者は前著『子どもの社会力』で「人と人がつながり、社会をつくる力」を「社会力」として提唱し、注目を集めた。いま互恵的協働社会の実現に向けて、地域や学校で社会力を育てる必要性を説き、学力重視の教育からの転換を提案する。

感想・レビュー・書評

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  • 第一章第三節、第四章第四節、それとあとがきは、読む価値があります。
    逆にそれ以外の章は…、よく言われていることを説得力のない言い方で主張しています……。

  • 社会力という言葉は筆者の造語だが、人が幸せに生きられる社会を作り出すために各個人が備えるべき能力のことである。それはすなわち人とつながる力や、人とつながろうとする心性のことである。本書はそれがなぜ今必要か、またそれを身につけるための教育が可能か等について、社会学・教育学や脳科学の見地から説明している。
    言っていることはとにかく正しく理想的と感じたが、それを実現する方法は説明不足に感じた。

  •  学力重視の教育から、地域や学校での「社会力育成」の教育を目指すべきと提言する本。1970年代から子どもの日常から「サンマ」=(遊ぶ)時間、空間、仲間がなくなり、社会に参加する「社会力」が衰退していったことを主張する。 

     著者が提案するのは、あらゆる差別がなく、教育機会や資源が平等に分配され、恵まれた能力や資源を持つ者がそれを他者に提供し、他人へのケアが自分の生きがいになるような互恵的協働社会の構築。

     帯の言葉を借りるなら〈競争〉の教育から〈協働〉の教育に転換して助け合える社会を築く力を養うということだろう。こうした内容にはある程度同意できるのですが、テレビゲームやインターネットに対する見解が典型的な俗流若者論に陥っているのがマイナス。

     たとえば、著者はネット上で他者を貶める若者が増えたと言うが、そもそもこれは若者だけの問題なのか、他者への不満がネットというメディアを通じて顕在化しやすくなっただけなのではないかと私は疑問に思った。メディア(ネットの普及)、経済(失われた10年)の両分野の転換期がダブっただけなのではないかと。

  • 人間は集団の中で生きる動物である。そして、教育の目標はいつの世でも社会力を育てることである。そこで、社会とつながりながら地域がかかわりながら社会力を育てることが大事である。

  • 教育論

  • 『子どもの社会力』を参照しながら、何度か読んだ。

    一言【確かにそうなんだけど、…で?】

    『子どもの社会力』は、しばらく前になるが大学1年の時に感銘を受けた覚えがある。しかし、この本においては全体として物足りなさを感じた。社会学では「新たな社会像」を提示するものがあるが、ある種本書と同様の社会像を指摘するものも少なく、また幅広く浸透している論説であることから具体的な議論を求めて本書を手にとった。よって本書に求めていたのは、同様の社会像を単に指摘に終わるのではなく、「具体的に社会力を育てるには?」といった内容であった。正直、そのような内容を想定していると少し物足りない。
    ただ、大学入りたての入門書としては良いかもしれない。

    〜〜〜
    4点ほど

    ■1つ目 【最良の入門書】
    「社会化」を学ぶに当たり、満遍なく網羅されており、昨今問題に挙がる項目が並べられている印象。大学の前半のうちに出会っていれば、本当に面白く読めたという印象。

    ■2つ目 【納得する。と でました。】
     述べられていることに基本的には納得。やはり当たり前だけど、大切にしなければならない核心なるものを再確認できる。しかし反面、「でましたその論説」と思うようなものが多数。過去との比較を持ちだし、現在を批判的に述べることにより、現代の若者が多くの問題を抱えているというもの。もちろん、当事者として気づかないこともあるだろうし、納得できることもある。しかし、実際の人々との関わり合いを通じて感じることは、「いや若者だけではないし、むしろ・・・」ということである。


    ★3つ目 【事例紹介が上っ面、今求められているのは…】
    著者の年齢も考慮すれば仕方がないのだろうけれど、後半に挙げられる事例情報がテレビニュースと同レベル。
     今日、形だけ「社会力育成」のようなことを掲げる取り組みも少なくなく、求められているのは具体性。写真や一時的な映像では汲み取れなさそうな、関わり合い、相互行為があり、そこで葛藤、様々なゆらぎがあるはず。
    そのようなことは、この本で述べられている核心であるのに、そのような具体的な相互行為に迫る記述は少ない。
     
    〜〜〜

    4年前に書かれていることを考慮しても、よくある論説と上っ面の事例紹介。確かに再確認させられることもあり、そのようなことを確認するには適しているが、どうも物足りなさを感じてしまう。

  • (「BOOK」データベースより)
    子どもや若者に広がる社会や他人への無関心。協力し、助け合える社会は築けるか。著者は前著『子どもの社会力』で「人と人がつながり、社会をつくる力」を「社会力」として提唱し、注目を集めた。いま互恵的協働社会の実現に向けて、地域や学校で社会力を育てる必要性を説き、学力重視の教育からの転換を提案する。

  • 社会で人として生きていくための力。

  • 楽しく読んだ。遺伝子レベルでも社会力を持つ人間であることもわかった。
    そして最後にそこに難問が潜むことも知った。
    ただ、あまりに論理が単純すぎるのが気になる。
    世の中単純ではないと思う。それが互恵的社会の実現はユートピアでしかないとボクに思わせるのかなぁ。

  •  至極まっとうな教育関係の本で、いっていることはきわめて正論、納得できる。人間と人間がきちんとつながるためには、そのための能力が必要であり、それは意識して教育するべきであるという考え方である。
     まさに現代的な課題であり、おそらく教育関係で責任ある立場にある人間なら誰でも意識せざるを得ないことであるにもかかわらず、なかなか取り組むことができていない課題であると思う。

     このほんのちょっと残念なところは、説得力を持たせるためであろうか、脳の話に入り込んでいるところである。
     個人的な気持ちなのかもしれないが、どうも「この部位がこういう意識に関係している」と言われると眉に唾をしてしまうところがあるし、教育と言うことに標準を合わせて論じるのであれば、そんなことは別にどうでもいいのではないかと思ったりもする。
     その部分のみが退屈だったのだけど、案外その部分が長かった。

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著者プロフィール

門脇 厚司(あどわき あつし)
1940年生まれ、山形県出身。1970年、東京教育大学大学院教育学研究科博士課程修了。専門は教育社会学。筑波大学名誉教授。筑波学院大学学長、つくば市教育長等を歴任。
主な著書に『子どもの社会力』『社会力を育てる』(以上、岩波新書)、『学校の社会力』『親と子の社会力』(以上、朝日選書)、『社会力がよくわかる本』『社会力再興』(以上、学事出版) 、『社会力の時代へ─互恵的協働社会の再現に向けて』(冨山房インターナショナル) ほか。

「2020年 『社会力育ての現場を訪ねて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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