歌謡曲――時代を彩った歌たち (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312956

作品紹介・あらすじ

日本に生まれたポピュラー音楽「歌謡曲」。それは誰が、どのように作り、どう歌われたものだったのか。時代を象徴するヒット曲を手がかりに、作詞家、作曲家、編曲家、歌手の各側面から、その魅力の源泉に迫る。制作の背景、楽曲・歌唱の音楽的分析、作品の与えた影響など、初めて書かれる本格的ディスコグラフィである。

感想・レビュー・書評

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  • この本は、筆者の紹介によれば、「歌謡曲という日本に生まれたひとつの音楽ジャンルを紹介し、作品を通じて探究する書籍」である。
    もう少し筆者の本書の紹介を引用する。
    【引用】
    本書が目指したのは以下の要素を横断しながら総合的に歌謡曲という音楽の全体像をまとめあげていく手法である。
    ①その発展の歴史と特性についての時代ごとの考察
    ②個々の作品の基礎情報の記述および楽曲としての構成要素の紹介と分析
    ③それに伴う歌手、作詞家、作曲家、編曲家の役割と個々の特徴および他に与えた影響
    具体的には1960年代から1980年代までの約30年間を10年単位で区切り、各年代をジャンル、傾向別に分類した。
    【引用終わり】

    私自身は、本書の中で紹介されている1960年代の曲はほとんど分からなかったが、1970年代・1980年代のものとして紹介されている曲と歌手は、懐かしさを覚えながら読んだ。紹介されている曲や歌手についてのことを読むと、それを聞いていた当時のことが思い出されるのだ。
    それらを紹介する筆者の博覧強記ぶりには驚いた。また、筆者の楽曲の音楽的分析の内容の詳細さにも驚いた。当時の曲をまた聴いてみたくなるような本だった。

  • <目次>
    序章   戦前・戦後の歌謡曲
    第1章  和製ポップスへの道~1960年代
    第2章  歌謡曲黄金時代~1970年代
    第3章  変貌進化する歌謡曲~1980年代
    終章   90年代の萌芽~ダンス・ビート歌謡

    <内容>
    21世紀のJ-POPSになる前の「歌謡曲」を、作曲家、作詞家、歌手の三者をうまく分析している本。音楽業界に造詣の深い著者による分析は、コード進行や曲の展開、歌詞の分析、と細かい。さらに歌手の歌のルーツまできちんとまとめている。シンガーソングライターについてはほとんど触れていないので、王道の歌謡曲を問いたかったのだろう。

  • 昭和20~30年代の歌謡曲について知りたかったので、序章だけで読了しました。
    戦前の歌謡曲は、ポリドール、コロムビア、ビクター少し遅れてテイチクが並び立ち、レコード会社専属作家システムでどんどんとヒット曲が生まれた。
    歌手は戦前においては声楽出身者が大半だったが、戦後はシャンソン、カンツォーネ、ラテンといった洋楽畑の他、民謡や浪曲、流しといった背景を持つ者が珍しくなくなった。また、専属作家の弟子以外のアマチュアも、コンクールやオーディションといった道で経てデビューするようになった。
    1950年前後にはタンゴ、ボレロ、ルンバといったダンス音楽を取り入れた曲がブームになったが、お座敷ソングとミックスしたゲイシャ・ワルツも大流行。リズムや風潮のアイディアを洋楽に求める和洋折衷が盛んであった。

    これだけの表記の中に、たくさんの作家、たくさんの歌手、たくさんの歌が思い浮かびます。東京大衆歌謡楽団の歌う歌が多彩であるのは、1950年代までの歌謡曲が和洋の、そして古今の素材を貪欲に扱っていたからですね。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705897

  • 1960年代から90年代までを中心に、日本の歌謡曲、演歌、ポップ・ミュージックの変遷をたどっている本です。

    佐々木敦の『ニッポンの音楽』(2014年、講談社現代新書)が、はっぴいえんど、YMO、シブヤ系と小室系、中田ヤスタカと、あつかう対象をしぼり込んで、日本の音楽業界における彼らの音楽の意義を論じているのに対して、本書は客観的な通史をえがくことに終始しています。流行歌を論じた本としては、ほかに社会学者の見田宗介による『近代日本の心情の歴史―流行歌の社会心理史』(1967年、講談社)がありますが、本書はプロデューサーとして日本の音楽シーンを見てきた著者による本で、アカデミックな観点からの考察ではなく、著者自身が現場で体験した流行歌の変遷が記されています。

    あつかわれている内容が多いため、個々の歌手・アーティストについての説明は簡潔なものになっていますが、歌謡曲シーンの全体像を把握することができるという意味では、有益な内容ではないかと思います。

  • まあいわゆる、羅列モノですわな。新書でこれを読むことになると、たまに写真も挿入されるとはいえ、かなりキツイものがある。その音や映像が浮かぶ場合は良いけど、大半が知らない楽曲で占められていた自分なんかからすると、相当しんどい内容でした。あと、サザンが2か所しか触れられておらず、それもホント、名前だけっていう扱いも不満。ってか、何ならそれが一番不満かも(笑)。

  • 歌謡曲史.
    新書の内容としては,かなり網羅的で分析的.
    時代を彩った歌たちがなぜ時代を切り開き,大衆の支持を得られたかというのを,作詞,作曲,編曲,歌手など多面的な視点で分析している.あまりポピュラー音楽の知識のない私でも新発見があるから,ポピューラーを演奏する人や,楽器に詳しい人が読めば,もっと楽しめると思う.
    こうして通史とでもいうような本を読むと,歌謡曲は,なかにし礼さんがいうように,20世紀,それも昭和の産物だったというのがよくわかる.

  • 歌謡曲はメロディと歌詞がはまらないと聞くのも恥ずかしい作品になり、そして編曲もかっこよくなくちゃいけない。だから音節と歌詞にこだわったのは自然なことで、そこに当然洋楽の影響、社会背景、というのにも触れるんですが、取り上げるべきはあくまで音楽そのもの、というスタンスは素晴らしいと思いますね。あまり好きな歌謡曲ってないんですけど、そんじゃま聴き直してみようか、という気にさせる。それは叙情的な説得というより視点を与えてくれるもので、歴史の俯瞰では意見いろいろあるでしょうが、ファーラウトの名前が出るのはビビった。

  • 戦後の歌謡曲の歴史はミーハーなものではなく、しっかりと音楽理論に基づいた骨のある本でした。弘田三枝子、西郷輝彦、黛ジュン、ピンキラなどロカビリー路線であったが故のビートの効いた歌唱は私が好きなタイプでした。一方、舟木、ザ・タイガースの文芸路線は私には気だるいものでした。歌謡曲の作詞をした西條八十はフランス文学教授、詩人であったので、低俗な歌謡作者であることに自家中毒的コンプレックスを抱えていたと書かれていましたが、その奥の深さに驚きです。例えば次の1文(P137)「GSの衰退とアイドル歌手の台頭と共に8ビート系の歌手は後退するが、70年代を迎えてシーンは新たな局面を迎える。欧陽菲菲とアグネスチャンの登場である。2人とも全く新たなビートの解釈を導入したエポックな歌手で、アグネスは独特のスタッカートでフォーク/ポップス系に新規塾をもたらし、欧陽菲菲は8ビートだけでなく、16ビートをも歌謡曲に取込んだ。同時期の男性歌手で、根源的なビート感覚を携えてロック・ヴォーカルと歌謡曲の融合をごく自然に達成したのが西條秀樹で、広音域だが、音圧を充分に伴う実声で8ビートを大変した新たなタイプのシンガーである。」 私にとっては、懐かしい曲の謎解きであり、音楽理論は読み飛ばし入門書的な読み方でしたが、音楽専門書としてもいろんな読み方が出来そうです。ここに登場した多くの歌を改めて聴いてみたいです。

  •  岩波新書にしてはちょっと変わったテーマの本です。とはいえやはり「岩波」、内容は多彩かつ豊富で結構充実しています。「歌謡曲」を材料にした「世相史」としても面白いですし、個々の「歌謡曲」を歌唱・作詞・作曲・編曲・演奏といったパーツに分解し多様な観点からテクニカルに解説しているくだりも興味深いものがあります。

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