3・11 複合被災 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313557

作品紹介・あらすじ

途方もない被害をもたらした東日本大震災は、歴史上類をみない「複合災害」だった。地震と大津波、そして福島第一原発事故が折り重なる中で、人びとは何を思い、どんな経験をしたのか。そこから何を教訓として引き出すべきか。被災地に通い続ける著者が現地のルポをまじえながら、3・11全体の輪郭を描き、残された課題を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災

  • 元朝日新聞記者のジャーナリストが、東日本大震災の1年後に、「3.11」の全容をまとめたものである。
    著者はこの本を、「東日本大震災について、何が起きたのかを、できるだけわかりやすく、コンパクトに伝えること」を目的に、そして、「震災から10年後の2021年に中学・高校生になるあなたが、「さて、3.11とは何だったのか」と振り返り、事実を調べようとするときに、まず手にとっていただく本のひとつとすること」を目標に書いたという。
    本書では、
    ◆「3.11」は、広範囲にわたる大規模な震災と火災、その後の大津波、さらに福島第一原発の原発事故が発生した、人類史上類を見ない「複合災害」であった。しかも、これだけの規模で先進国を直撃した例も過去にはない。
    ◆地震の規模は、マグニチュード9.0で、20世紀以降では、1960年のチリ(M9.5)、1964年のアラスカ(M9.2)、2004年のスマトラ(M9.1)に次ぐレベルで、エネルギーで比較すると、1923年の関東大震災(M7.9、死者行方不明者105,000人))の45倍、1995年の阪神淡路大震災(M7.3、死者行方不明者約6,400人)の1,450倍にあたる。津波の規模は、岩手県宮古市で遡上高39.7メートルで、1896年の明治三陸大地震(死者行方不明者22,000人)の38.2メートルを超えた。
    ◆国際原子力機関(IAEA)が2011年6月にまとめた事故調査報告書によると、福島第一原発では、「福島第一は、津波により安全関連装置の大部分、そして六号機に電源供給するディーゼル発電機一台を除きすべての外部および内部電源を喪失した。これにより一、二、および三号機の原子炉、そして四号機の使用済燃料プールに対する冷却が失われた。さらに、他の安全関連設備の冷却が、利用不可能、または接近不可能となった。これらの結果として福島第一原子力発電所の四基での事故状態をもたらした」という状況が発生した。
    という災害そのものの事実と、震災発生後1年間の、被災者を取り巻く状況、被害(拡大)の原因究明の状況、自治体等の取り組み、原発事故への対応などが記されている。
    震災から4年が経過したとはいえ、首都圏に在住して震災当日は帰宅に影響を受けただけの私にとっても、TVで繰り返し流れた大津波の衝撃的な映像は昨日のように思い出すことはできる。しかし、未だに20万人を超える避難者(復興庁の発表)のことや、福島原発への今後の対応について、関心が薄まりつつあることは否定できない。
    著者の意図するように、3.11で何が起こったのか、網羅的、客観的、かつコンパクトに記したものとして、本書は意義あるものと思う。
    (2012年5月了)

  • <閲覧スタッフより>
    地震、津波、原発事故といくつもの災害が重なり合った甚大な被害。そのひとつひとつを震災後1年が経過した時点で分析・検証した一冊です。現地のルポとともに、引き続き考え続けてゆかなければならない今後の課題、教訓を考えます。

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    所在記号:新書||369.3||ソト
    資料番号:10212129
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  • 被災地から離れて住んでいるためか、放射線の被曝量がピンとこなかった。危機意識がないかもしれないと自覚した。
    また、災害基本法が長期にわたる災害に対応できていないことを初めて知った。

  • 本当に情報源といった感じ。
    著者の私情があまりはさまっていない。また、たまにはさまっていても、冷静に評価できるところは評価している態度に好感が持てる。あとは、今現在進行している原発問題を追跡していただきたいところ。

  • 大規模な震災と大津波、さらに原発事故。3・11はかつて世界が経験したことのない複合災害。この本は震災から10年後に中高生が事実を調べるようとするときに手にとってくれる本とすることを目標としている。被災された方にとって一番つらいのは忘れられるとこだと思っている。そのため3・11のことに限らず地震、津波、原発に関する本をときどき読むようにしている。なので、時折読むのに手ごろかと思ったけど、いろいろなことを詰め込もうとしてまとまりに欠いているような気がした。

  • 東日本大震災は自然災害・人的災害が複雑に重なったものだった。被災した方々・そしてこの震災をとらえ直そうとする人々にとって,タイトルの『複合被災』という言葉は,これを如実に示していると思う。地震・津波・原発事故,その後の防災体制や放射線対策など,様々な情報が入り乱れたため,私の中では未だ整理しきれていないことが多かった。この本を読みながら,当時の記憶や情報を少しずつ整理することができた。
    著者は『はじめに』に記している。
    「この本は,東日本大震災について,何が起きたのかを,できるだけわかりやすく,コンパクトに伝えることを目的に書かれています。
     たとえば震災から10年後の2021年に中学・高校生になるあなたが,『さて,3・11とは何だったのか』と振り返り,事実を調べようとするときに,まず手にとっていただく本のひとつとすること。それが目標です。」
    様々な情報が入り乱れた年,自ら情報を取りに行き・判断を迫られることになった年,人生が一変することになった年。その起きた事柄をもう一度整理するきっかけとして,読んでおくといいのでは…と感じた。10年後の中学・高校生に伝えるために,今の大人が自らの見解を整理しておくべきと考える。
    図書館から借りたが,もう一度時間をおいて読み直したい。

  • 2021年の中高生が「10年前」に起こった東日本大震災を学ぶ本となるよう心がけて書いたという。
    インターネット上の文章、新聞、雑誌、書籍、このうちどれが2021年頃の人々にとって的確な記録として残っているだろうか。新聞社にいた著者は「書籍の力」を信じたと思われる。地震災害が起こってまもない頃から、2011年末にかけて何度も丹念に現地を見て写真を撮り、人々に話を聞いてまとめた2012年現在の記録としては価値がある。
    福島県大熊町の「双葉病院」での患者置き去り報道の顛末と真相を丁寧に取材しているのは評価したい。
    東北地方太平洋岸一帯に甚大な被害をもたらした大津波の被害とその後、福島第一原子力発電所、そして、大事故の影に隠れたほかの原子力発電所での綱渡りの様子や、福島県一帯から広く川や海まで飛び散った放射性物質。その実態と復旧に向けての人々の努力と見通しを冷静に書き綴ったことは、後年、貴重な資料になると思われる。予断なく、感情が入っていない書きぶりも、信頼できる。

  • 2011年3月11日の大地震、それに伴う激烈な津波、原発事故。
    あの日から起こったことを時系列かつ体系的につづっている。
    ジャーナリズムとは本来こうであるべき本だと思う。

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著者プロフィール

ジャーナリスト・作家
1953年生まれ。東京大学法学部在学中に、石川啄木をテーマにした小説『北帰行』(河出書房新社)で文藝賞を受賞。朝日新聞社に入社、ニューヨーク特派員、AERA編集委員、ヨーロッパ総局長などを経て、東京本社編集局長。同社を早期退職後は、震災報道と沖縄報道を主な守備範囲として旺盛な取材・執筆活動を展開。『地震と社会』『アジアへ』『傍観者からの手紙』(ともにみすず書房)、『3・11 複合被災』(岩波新書)、『震災と原発 国家の過ち』(朝日新書)、などのジャーナリストとしての著書のほかに、中原清一郎のペンネームで小説『カノン』『人の昏れ方』(ともに河出書房新社)なども発表。

「2018年 『圧倒的!リベラリズム宣言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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