キノコの教え (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
3.53
  • (4)
  • (14)
  • (21)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 173
感想 : 27
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313656

作品紹介・あらすじ

木の根と共生し、木材や落ち葉を分解して、菌類はひっそりと森を支えている。キノコは菌類の繁殖装置。植物とも動物とも異なる宿命のもと共生へと進化したキノコの教えをいま人類は学ぶべきではないか。マツタケやトリュフ栽培の苦心、キノコと炭による松林の再生、放射能を集めるキノコなど、食と環境と生命をめぐる興味深い話題を満載。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 第X次キノコブーム中。キノコ図鑑を図書館で借りるついでに、隣にあったキノコタイトルの本を適当に借りてきた。新書だし、特に期待していなかったのだが、これが大当たり。一読後、購入して手元に置いておくことにした。

    以前から「菌根」というものに興味を持っていた。キノコ本を読んでいると時々出てくる言葉で、「植物の根にキノコがついて共生しているもの、または状態をいう」そうだ。キノコの中には「菌根菌」と呼ばれるタイプのものがいて、彼らは植物と共生しているらしい。え、それってどういうこと? キノコ何してんの? と思うのだが、キノコの説明文中に「菌根を作る」としれっと書いてあるか、せいぜい数行の補足説明があるだけで、素人のこっちはなんのことやらわからないのだ。なんかすごく大事なことのように思えるので、「菌根」で参考になりそうな本を検索までしたが見つからない。それが思いがけず本書に詳しい説明があったのだ。

    本書はキノコの進化やら、生態やら、キノコ研究の歴史やら、新書によくあるよもやま話のように見えるし、最初はそのつもりで読んでいたのだが、実はキノコを含む菌類と森の共生がメインテーマだ。その重要な要素として菌根が登場する。正直びっくり。森がこんな精妙なしくみになっているとは初めて知った。これは人間が生半可な知識で介入してもうまくはいかないだろう。マツタケの人工栽培が未だに成功しないのも無理はない。植物学者、菌類学者によっては常識なのかもしれないけれど、もっと早く教えてよもー、という気分になった。

    著者も言うように、菌類と木々の関係に見られるような絶妙なバランス(それは共生に限らない)は、海で、陸地で、菌類と植物だけでなく、昆虫や細菌や動物といったすべての生き物の間で成り立っているのだろう。ぼくらはまだその一端しか知らないのだ。

    本書ではさらっと書いているけれど、著者は世界中を飛び回って森の再生に尽力している人らしい。どんな人なんだろうといろいろ検索していたら、つい最近亡くなったことを知った。ショックだが、遺志を継ぐ人たちはいるようだし、書いた本も残っている。他の本も読んでみようと思う。

  • ひとりキノコ祭り、まだまだやってます♪しかしながら、最近スーパーの野菜売り場では真っ先に「変わったキノコはないか」と探してしまう自分に気づき、いよいよ…の域に達しそうなので、あえて自制しておりますσ(^-^;)こちらはキノコの偉大さを真面目に語り尽くした1冊!著者のおっしゃるとおり、菌類界はもっとスポットライトを浴びてもいいハズだと思いました。キノコは菌類が仲間を増やすための「装置」。子実体ってやつね。ホラーだしファンタジーだしミラクルです☆キノコ好きさんのための真面目なキノコ本。

    • april-catさん
      わー、まだキノコ祭り、続いてたんですね!
      はこちゃんのレビューで、私も最近キノコの絵本を読んだことを思い出しました(笑)
      わー、まだキノコ祭り、続いてたんですね!
      はこちゃんのレビューで、私も最近キノコの絵本を読んだことを思い出しました(笑)
      2013/09/03
    • はこちゃんさん
      やっほ~(*^_^*) 四月猫荒らしさん。ようやくここに到着ですσ(^-^;) これは過去の読了本…とりあえずきのこ本を…と登録していて、途...
      やっほ~(*^_^*) 四月猫荒らしさん。ようやくここに到着ですσ(^-^;) これは過去の読了本…とりあえずきのこ本を…と登録していて、途中で力尽きました(笑)。
      2013/09/05
  • 壮大な気持ちになってくるなぁ~

    岩波書店のPR
    「木の根と共生し、落ち葉を分解して、菌類はひっそりと森を支えている。キノコは菌類の繁殖装置。まわりの栄養を吸いあつめておいしくなるが、放射性物質まで濃縮してしまう。植物とも動物とも異なる宿命のもと、共生へと進化したキノコの教えをいま人類は学ぶべきではないか。食と環境と生命をめぐる興味深い話題を満載。(カラー口絵一丁) 」

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1000856950

  • 農学部図書館の学生アルバイトの方に、おススメの電子ブックを推薦いただきました。

    ☆推薦コメント☆
    本書は森林総合研究所土壌微生物研究室長、同きのこ科長を務められた小川眞先生によって2012年に書かれたものです。本書ではキノコとは何者なのか、キノコは私たちの生活とどのようなかかわりがあるのか、キノコは環境に対してどのような役割を果たしているのか、キノコを取り巻く環境は今どうなっているのか、キノコから私たちが学べることは何か、というようにキノコの話題を中心として、それを取り巻く環境や我々の生活についても考えています。

    キノコについてとてもわかりやすく、そして詳しく書いてあるため、キノコにあまり馴染みのない方でも読みやすい本となっており、キノコについての雑学的な部分にも多く触れているので、親しみやすいと思います。

    ところで、日頃我々の食卓によく上がる割にはキノコについてあまりご存じない方が多いのではないかと思います。じつは、学術的にも近年までキノコはあまり相手にされていなかったことにも本書は触れています。ついつい見過ごされがちなキノコの強かな生態を、この機会に覗いてみてはいかがでしょうか。

    ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです(電子ブックで利用できます)☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/NB00164803

    ※学外から利用する際は、こちら↓のリモートアクセスをご利用ください
    https://www.shinshu-u.ac.jp/institution/library/find/r-access.html

  • 新書文庫

  • 文系素人には少々専門的過ぎました。植物学や生物学の基礎的な理解があればもっと楽しめたんだろうと思います。それくらいのレベルの本。

  • 日経書評、2012-06-03

  • きのこにまつわるトピックを総花的に取り上げて解説した本。随所にきのこを擬人化する表現が用いられて、著者のきのこへの愛情が感じられるとともに、わかりやすい解説となっていると思われた。
    なんだか不思議な生き物なんだなあというのが読了後の第一印象。これまであまりきのこが好きでなかったものだから、、、食べてみたいような気持ちも湧きつつといった印象。

  • 請求記号:I-1365 図書ID:20003151 

全27件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1937年京都生まれ。京都大学農学部卒、農学博士、林業試験場土壌微生物研究室長等。1991年森林総合研究所退職。環境総合テクノス生物環境研究所長を経て、現在大阪工業大学環境工学科客員教授、「白砂青松再生の会」「日本バイオ炭普及会」会長等。日本菌学会名誉会員。「日本林学会賞」「ユフロ学術賞」「第8回日経地球環境技術賞」「日本菌学会教育文化賞」「愛・地球賞」(愛知万博)などを受賞。

著書に『マツタケの生物学』『菌を通して森を見る』『キノコの自然誌』『作物と土をつなぐ共生微生物』『炭と菌根でよみがえる松』『森とカビ・キノコ—樹木の枯死と土壌の変化』、訳書に『不思議な生き物カビ・キノコ—菌学入門』『チョコレートを滅ぼしたカビ・キノコの話—植物病理学入門』等。

「2010年 『キノコ・カビの研究史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川眞の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
大野 更紗
池井戸 潤
冲方 丁
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×