秀吉の朝鮮侵略と民衆 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313908

作品紹介・あらすじ

日本では「文禄・慶長の役」と呼ばれてきた二度にわたる豊臣秀吉の朝鮮侵略は、後世の朝鮮観に大きな影響を与えた事件であった。秀吉はなぜ朝鮮に出兵したのか。その構想と李舜臣による亀甲船の戦いなど戦争の実態をたどりながら、朝鮮水軍の船漕ぎや朝鮮人となった日本人など日朝両国民衆の姿を描きだす。図版多数。

感想・レビュー・書評

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  • 一次情報を組み合わせた点は悪くないが、もう一歩再構築したい。章毎に分断され、翻訳に止まるのがやや残念

  • 2012年刊。著者は元共立女子大学教授。

     文禄慶長の役に関して、豊臣軍を悩ませた李舜臣の備忘録的日記を元に、当時の朝鮮内の状況を解読しようとする書。
     クロスリファレンスが少ないのは困った点であるが、そもそも李舜臣の日記といった殆ど知る機会がない史料を基に説明するのは買いである。
     特に、降倭(逃亡・捕虜の兵士、日本の農民)、中でも加藤清正の部下その他が配下を率いて投降(当然朝鮮側の勧誘は想起可能)した件はなかなか見ない記述である。戦国時代、国内に数多見られた武将間の合従連衡の模様が当該役に移築されたかのようにも見える。

     一方で、降倭の中でも、幕内で火事を引き起こしたり、再逃亡したりなど、豊臣軍の諜報活動ではないかと思える節も見受けられる。
     逆に、朝鮮民衆の中には豊臣軍に協力し(情報提供)、自身の安寧を図ろうとした人物がいたことや、鍋島氏に娘を差し出した役人、ここぞとばかり戸籍を焼却して奴婢の身分から脱却しようとした人物をも描く等、一筋縄ではいかない戦乱期の模様を叙述する。

     とはいえ、豊臣軍が李海軍の根拠地を攻めなかったのも事実のようだ。もちろん攻められなかったのかもしれないが、そうだとしてもその理由がイマイチ判然としないままの読後感ではある。

  •  豊臣秀吉の朝鮮侵略戦争を戦場における民衆の動向に焦点をあてて叙述。特に朝鮮水軍に徴用・動員された船大工や船頭・舟漕ぎ、朝鮮軍や明軍に投降した日本人将兵の動きやその社会的背景を、李舜臣の日記・文書等を用いて明らかにしている。戦争の戦闘経過や日朝明間の交渉などの軍事史・外交史的叙述にも紙幅を割いているが、言及されていない問題も少なくないので、同著者の『豊臣秀吉の朝鮮侵略』(吉川弘文館、1995年)との併読が望ましい。

  • これを読むと朝鮮の人たちがなんで秀吉の朝鮮出兵の歴史に憤っているかがわかる。
    いわゆる学校で習う日本史では「天下統一を果たした秀吉が朝鮮に2度出兵したが、明の増援もあり敗退した」程度の説明しかない。
    まず、秀吉は明を征服しようと思っていた。朝鮮はその足がかりに過ぎなかった。秀吉は朝鮮は対馬の属国くらいに思っていた。武勲を示すために首をとる他に鼻を削ぐということをした。捕虜として日本に連行される者も多数いた。そんな事実に驚く。特に鼻を削ぐというのは何とも凄い話だ。それは怒っても仕方ない。
    戦争にかりたてられた日本人も朝鮮で殺されたり捕虜になったりで、この戦争によって朝鮮人も日本人も随分と散々な目にあったわけだ。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705994

  • 1592年から始まった七年にもおよぶ秀吉の朝鮮侵略について、李舜臣の「乱中日記」から、配下の人の動きや、降伏した日本人「降倭」のことや、船の戦いの様子、陣営の様子などなどが分かる。前半は朝鮮侵略時の戦いの場所や時系列などで、詳細にはあまり興味がなかったが、後半の「乱中日記」から見た戦いの様子や陣営の様子などは興味深かった。また、人々がこの悲惨な戦いで振り回されていることがよくわかる。急に沖合に沢山の船が現れ、自分たちの国に乗り込んできて、略奪の限りをつくすのだから、韓国の人たちが秀吉、そして日本人に対する気持ちもおして知るべしだろう。

  • いまだに理解できない

  • 朝鮮侵略と民衆とあるが、前半は日本の大名と朝鮮と明の大将との話であり、さらに後半は朝鮮水軍の李舜臣の話であった。残りの2章が李舜臣の水軍及び降倭の話であり、一般民衆ではない。タイトルと内容がかなり異なるのは仕方がないのかもしれない。

  • 北島万次『秀吉の朝鮮侵略と民衆』岩波新書、読了。「まず自分の生命と生活の安全を優先する。それが民衆にとっての戦争なのである」。英雄たちの事績からではなく、日朝両国の民衆の姿から、朝鮮出兵の実態を生々しく活写する。投降した日本人、そして日本へと連行された朝鮮人の姿は真実を語る。

  • 確かに、しっかり読めばいいのでしょうが、なんと読みづらい新書でしょうか。
    もう少し、新書としての体裁を考えてもらえないものでしょうか。
    朝鮮の地名や人名は、読めないのです。
    読めない漢字をそのまま読み進めていくことのつらさといったらありません。
    学がないので仕方がないとはいえ、この手のものこそ、あまり資料を重視しないで、本筋をしっかりわからせてほしいものです。

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