- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004314776
作品紹介・あらすじ
日本人はなぜこれほど、舶来品が好きなのか?正倉院の宝物、艶やかな織物や毛皮、香料、書、薬、茶、珍獣…。この国の文化は古来、異国からの舶来品、すなわち「唐物」を受け入れ吸収することで発展してきた。各時代のキーパーソンとの関係を軸に、唐物というモノを通じて日本文化の変遷を追う、野心的な試み。図版も多数収録。
感想・レビュー・書評
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久々に面白い新書を読んだ。
「唐物」と総称される外国からもたらされる品々を、日本人はどのように受け取り、利用していったのかということを概説している。著者の河添房江氏は、源氏物語の研究者であり、作中に登場する品々についての著作もある。題名が「唐物」なので、明治以降の舶来品についての言及はほとんどない。
唐物に着目して歴史を語る、というのは面白い着眼点だけれど、かなり難しい試みだっただろうなぁと思う。
本書では、唐物は聖武天皇の時代では、国家の管理下で輸入・分配されていたのが、次第に摂関家や平家などの権力者が仕入れるようになり、「文化材」としての性格から、「威信材」としての性格に変わっていく。それが、戦国時代から江戸時代になると、市場規模の拡大によって、「贅沢品」として徐々に底辺まで唐物が広がっていくさまが論じられている。
日本人が唐物を珍重するのは、第一には進んだ文明だった中国・朝鮮の文化を尊んだということがあるだろうし、そもそも得難いものを得ることは、それだけで権威と権力を示すものになる。日本における唐物の位置付けは、古代では先進国だった中国・朝鮮と遜色ない文化を持ち、また世界の広まり(ポルトガルやオランダ)によって変遷していくが、やはり「得難い」ということが一番最後まで唐物を唐物とした魅力であったと思う。
明治になると、文物の移動も人の移動も容易になり、「唐物」という概念は個々の輸入品に細分化されていく。本書が明治以降の「唐物」について語らないのは、その把握がまず不可能であるからと言ってもいい。しかし、舶来品の信仰は現在でも続いている。例えば、映画では「洋画しか見ない」という人はたくさんいる。個々の分野では、舶来を尊ぶ心はまだ残っているが、それもインターネットの発達によって、早晩消えるのかもしれない。
唐物を通して、日本人の精神性を探る、という着眼点は良かった。東アジアの大きな文化圏の中で、和物と唐物を別個のものと考えるのではなく、国内でお互いが影響しあって文化を洗練させてきた。個人的には、日本人が中国(とアジアの国々、ポルトガル、オランダなどなど)をどのように認識していたのか、ということを唐物の取り扱いともっと結びつけてほしかった。でも、それは、国際政治史などでもっと詳しい本があるかもしれない。
また、本書は唐物史の概説なので、どうしても時々の権力者に焦点を当てざるをえないが、もっと古代においても民間に唐物の広まりはあったと思う。もちろん、そういうことは文献には出てこないが、考古学の分野での成果ももっと詳しく知りたいと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古代から近世までの日本史を、唐物=舶来の文物(唐もの~南蛮もの)を軸に通してみる。その模倣品もふくめて、なにが贈答され、なにが交換されたのか。物自体より、その稀少で権力的なシンボリズムの互酬関係が問題なのですね。
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「日本の文化や社会において、“唐物”と呼ばれる舶来品がどのように受容されてきたのか」を考察する一冊。興味深い内容だったが、初版が2014年なので現在(2022年)ではやや古い学説を用いた箇所が幾つかあった。
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【展示用コメント】
海外のモノへの興味や憧れは、今も昔もあんまり変わっていないのかも。
【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?lang=0&amode=11&place=&bibid=2001606689&key=B154510041507525&start=1&srmode=0&srmode=0# -
文化交流、異文化憧憬、文化と政治のダイナミクスを存分に味わった。
唐物の羅列はいささか面倒だが、唐物と日本の文化的通史は珍しいのではないか。
戦国大名と茶の湯、最後の日本文化論のところは特に面白い。
・元冦の背景。一方的な攻撃ではない。
・鎖国という言葉は正確ではない。国家により貿易の管理。 -
貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784004314776 -
日本人の生活に、ここまで唐物が関わっていたことを知らなかったから面白かった。
分かりやすく書かれていたから、ちょっと日本史をかじっただけな私でも無理なく読めてよかった。 -
本書は唐物、すなわち古の輸入品を中心として歴史的背景などを記されたものであり、一般的な美術書や歴史書とは立ち位置が大きく異なります。
日本の地政学的な優位性は大陸より文化的に劣りながらも朝貢へと繋がり、貴族文化に唐物が必須となっていきます。
それがどのように使われ、なぜ重宝されたのか。好きだった人、嫌いだった人。そして茶の湯によって棗ひとつで城ひとつの価値を与えたその背景も見えてきます。
歴史で「〜より伝来した」としか習わなかった物の背景を知る事がこんなに楽しいとは思いませんでした。
多くの方にお勧めしたい良書です。