新・韓国現代史 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
3.81
  • (5)
  • (12)
  • (10)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 218
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315773

作品紹介・あらすじ

日本の植民地支配から解放されて七〇年。分断、戦争、独裁、軍事政権、民主化運動、経済破綻…盧武鉉から李明博を経て朴槿恵政権へと移り変わる中で激しい変化をとげる韓国。いったいどこへ向かおうとしているのだろうか。日韓関係はどうなるのか。近年の動向を反映した、グローバル時代の新たな通史。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  本書では江戸時代の朝鮮通信使から主に日本とどのような関係を結んできたかから始まり、その後脱亜入欧へと加速した日本による植民地支配、第二世界大戦終戦後の米ソによる南北の分割占領、その後の軍事政権から脱却を図るための民主化運動、アジア通貨危機による経済破綻など、朴槿恵大統領政権までの歴史を概観することができる。本書を読むことによって、『K-POP 新感覚のメディア』に書かれていた韓国で共有されているという「恨」(ハン)の感情のルーツの一端を見ることができた気がする。

  • 221-M
    閲覧新書

  • 【これまで韓国の市民社会は,外国支配や分断,独裁権力といった生活世界の外部からやってくる脅威に身構え,そのことを通してそのアイデンティティを育んできた。だが,もはや韓国社会は,その内的なアイデンティティそのものの深刻な揺らぎや危機に直面している】(文中より引用)

    知っているようで知らない韓国の現代史を時系列的にまとめた作品。民主化運動の高まりや急速な経済成長といった国内面に加え,北朝鮮や日本との関係といった外政面についてもコンパクトに詳述した一冊です。著者は,立命館大学の国際関係学部で教授を務める文京洙。

    教科書的な記述であることに加え,特に現在に時が近づけば近づくほど著者の韓国内政に対する政治的立ち位置が如実に反映された書きぶりとなっているため,その点は若干認識した上で読み進めた方が良いと思います。他方,それ故に本書の評価が低くなるというものではなく,わかりやすく包括的な記述のおかげもあり,韓国について学びたいと考える方の最初の一歩として十分にオススメできる作りになっていると感じました。

    類書も多いですが☆5つ

  • 旧刊は2005。新板までにおこったことをざっと書くと、02年日韓ワールドカップの共催、03-08年進歩派ノムヒョン政権下で過去清算ブーム、韓国ドラマブーム04年、竹島問題05,6年。
    04年韓国への親近感を感じる日本人の比率は56%に達し過去最高を記録。ところが安倍談話に象徴される歴史認識の改変にともない日韓関係はひえこみ、2012年には親近感比率は39%と過去最低を記録。新版では日韓関係に比重を置いて書いている。この10年でおこったグローバリゼーションにともなう社会不安、停滞に発した排外主義、そんなあたり。
    映画「タクシー運転手」から興味を持ったので、光州事件の出てくる第二章(軍事政権の時代と光州事件)から読み始めた。そのあたりをメモ。

    61年5月16日パクチョンヒ少尉が軍事クーデタをおこす。発表された革命声明は反共・親米の枠内だが、軍を私物化した前大統領とはちがい腐敗のすすんでいた軍内部を刷新し経済的自立を実現しようとする若い(45歳)パクら将校が中心に起こした決起であった。大統領、首相が声明を追認すると(ついでアメリカが早期の民主化を求めて事実上追認)、決起グループはただちに司法・立法・行政を掌握する。パクは63年末大統領に就任し第三共和政発足。70年には三選禁止を改悪した憲法で18年に及ぶ長期政権を維持した。のち漢江の奇跡とよばれる輸出主導(IMF協調路線)経済(73年からは重化学工業分野)に注力した経済政策が成功し、GNPの伸び率は毎年9%を記録。一方で都市に人口が流入し低所得劣悪労働をうみだし開発に取り残された地方との格差が拡大。言論は厳しく統制されており、反対派の「不正蓄財処理」の名目で逮捕、軟禁があいついだ。
    71年キムデジュンとの一騎打ちとなった大統領選では国家予算13%をつかって選挙資金をねん出しからくも三選を果たす(その差わずか95万票)。

    ケネディのうちだした国内の貧困と共産圏の脅威との「ふたつの戦線での闘い」に同調し、インドシナにも65-73年の期間31万人派兵している。作戦遂行にあたり41000人の「敵軍」を射殺したとされる。アメリカ軍以上に残忍とされる虐殺報告(ベトナム文化通信報告推定80件9000人)もあり、十分なアメリカへの協力から軍施設に必要な資金をアメリカに援助させ特需をつくりだした。一方で枯葉剤の後遺症やベトナム人の反韓感情などをうみだした。

    一方日本との関係だが、賠償金をめぐる日本の態度は、日帝時代のインフラ整備資産返済をほのめかすなど強硬姿勢をつらぬき(53年久保田発言)、日本国内のムードもこれに同調した。日韓条約は予備会談の51年から締結まであしかけ15年の長期間におよぶ。日本は52年に西側諸国と単独講和をむすび国際社会に復帰、五族協和や共栄圏思想の崩壊の結果、一民族一国家、小国主義といった内部の他者に対して同化と排除するという意識を生みだすにいたった。講和の背景には米国主導の勝利であり中国・朝鮮らアジアの対日抗戦は軽視されていた現実があり、日本国内では唯一の原爆被害ばかりがとりあげられ、中国朝鮮への侵略については近代化に貢献したとの回答を繰り返し国内世論もこれに同調した。60年には日本で安保闘争が闘われ、軍事大国化を諦め平和憲法下の経済大国化路線という以降の方針が定着する。一方韓国ではインドシナ出兵をひかえ日本からの経済援助がその一端を担った。結局合意内容には相互に解釈の矛盾をはらんだままで(日韓併合条約の有効性、経済援助か賠償請求か。これは両論併記)、なおかつ「完全かつ最終的に解決」されたとしてその後の補償のみなおしを封じる根拠となっている。資金供与は5億ドル。(ちなみに66-72年経済テイクオフ期導入された外資は40億ドル)

    さて光州事件。1979年9月アメリカの援助をうけた金泳三の民主化運動を弾圧するべくパクは金を逮捕、妨害工作にもかかわらず野党議員の結束は揺るがず、各地で民衆運動がさかんになり軍隊が出動。10月26日中央情報部キムジェギュがパクを宴席で暗殺。キムは最悪の流血事件を回避するため、と語ったが、ソウルに民主化ムードが訪れても民衆の足並みはそろわなかった(三金時代)。80年4月炭鉱労働の市民3000人がデモをおこし、デモは全国に拡大。5月17日軍部は戒厳令を拡大し政治活動を禁止し民主化ムードは収束。ソウルの執行部が逮捕され、摘発をおそれた光州の執行部はさきに行方をくらましており、5月18日未明に配置された空てい部隊と学生とのあいだで自然発生的な衝突、つづいて街頭デモ、多数の逮捕者をだし、翌日には市民が中心となった数万規模のデモが組織されて部隊は一旦撤退を余儀なくされる。ところが部隊は光州をとりかこんで通信・交通・報道は遮断して完全包囲し、部隊はあらためて突入。抵抗市民・学生らの3日間におよぶ会議の末徹底抗戦が決議されたのをうけ、部隊・戦車の突入は多数の死傷者をだして完全に鎮圧される。

  • かつてないほど混迷する日韓関係を読みほどきたくて、本書を手に取る。
    日本が戦後復興、高度経済成長を謳歌していたとき、安定した社会、政治構造をもてない韓国は苦しみ続ける。それは、現在も続く。草の根レベルと指導者レベルの団結、離散の対比になんとも言えない気持ちになる。

  • 韓国の近現代史。日本の敗戦から解放された朝鮮半島は、しかしながら北からの共産勢と南からの資本主義勢との間で引き裂かれた。双方の勢力で国土は蹂躙され、多くの住民が亡くなった。解放から、朝鮮戦争、李承晩時代、軍事クーデタによる朴時代、光州事件、軍事政権、そして金大中、盧武鉉、李明博、朴槿恵までの期間を描く。日本は朝鮮半島に対して何をなしてきたか。隣国に対して、もっと冷静に向き合わないといけないだろう。

  • この間読んだ「沸点」(6月抗争を描いたマンガ)を読んだら、韓国の現代史についてもっと知りたくなったので、この本を読んだ。

    とても面白かった。韓国の現代史はほとんど全く知らなかったのだが、この本は非常に理解しやすかった。

    民主化運動は、民主化されても終わりではことがよく分かる。権力者は一度倒れても再び民衆の権利を奪い返す勢力がまた現れてくる。この本を読むと民主化というのは一気にやってお終い、ではないことがよく分かる。民主化というものは一気に進んではまた押し戻され、また進む、ということの繰り返し。

    ここで韓国の市民がすごいと思うのは、例えば野党が分裂して選挙に負けたとしても、次はそれを克服して新たに挑戦することを繰り返していることだ。「野党は情けない」という評価が固定して「結局やっても無駄」と冷笑に繋がって何もやらないというどこかの国の市民とは大違いだ。彼らはなぜこんなに粘り強いのか。

    一つの理由としては、韓国では権力者の市民の弾圧の仕方がすごくひどい、ということではあるだろう。そういう意味ではどこかの国はそこのところは非常にうまくやっている。水に入れたカエルを強火でゆでるとカエルはすぐに水が熱くなり自分が殺されてしまうことを自覚する。しかし、弱火で徐々にしか水温が上がらなかったらカエルはかなりお湯にならないと自分が殺されるとは思わないだろう。

    だが、カエルにも限度はある。おそらくこのまま行くと大半のカエルが「もしかしたら殺されるのでは?」と気が付くことになるだろう。しかしそれは一体何年後になるのか?早くからそれを気付いているカエルはそれを黙って見ているしかないのか?(むろん、黙って見ているわけではなく、一生懸命に周りにそれを伝えているのだが、気が付かないカエルは「まさかそんなことは起こり得ないだろう」と楽観視し、むしろ気が付いているカエルに対して「そんなことやっても無駄」と冷笑している。そしてもっと怖いことに、一部のカエルは「いいぞいいぞ、もっと熱くしろ!」と声を挙げている。。自分がいずれ殺されることに全く気が付いていないらしい)

    歴史は繰り返す。繰り返しながら前に進む。それはどの国の歴史を見ても同じだが、韓国の歴史の進み具合は本当に早い。展開がめまぐるしい。

    朝鮮半島問題に関しては、対話しか前に進む方法はないだろうと思う。対話はすぐに成果が現れないが積み重ねにより徐々に進んでいる。むしろ、保守政権下での圧力一辺倒、関係断絶ではまったく前に進まないことがこの本を読むとよく分かる。今現在、対話でようやくまた前に進み始めた。が、それが最終的にうまく行く道になるのかは今のところはまだよく分からないし、期待はもちろんしているが、途中で順調にいかなくなったとしても、そこで「やはり対話ではダメだ」という結論にはならないだろう。どこかの国はこの期に及んでまだ圧力が通用すると思っていて、この問題からは完全に「蚊帳の外」になってしまっているのは、どこかの国のカエルとしては非常に歯がゆい思いをしている。。

    あとはやはり経済問題。盧武鉉はこれができなかった(李明博、朴槿恵は北朝鮮問題は何も解決できなかったし、経済もうまくいかなかったので論外)。今の文大統領のこれからの問題は経済だろう。財閥関係や保守勢力の力を抑えてどうやって格差を縮めるか。

    これを機にもっと突っ込んだ韓国の政治や市民運動のことについて知りたいと思ったが、これについて日本語で書かれた本って少ないのがね、、まぁ朝鮮語についても勉強しなきゃダメってことだよね。。

  • 韓国の歴史がわかりやすくまとめられていて、とても勉強になった。正直なところ、どうして韓国と北朝鮮に分かれているのか、そんな基本的なこともよくわかっていませんでした。韓国と北朝鮮が別々に存在し続けることと、韓国と北朝鮮がひとつの国になること、韓国と北朝鮮の国民にとってはどちらが幸せなのでしょうか。

  •  旧版を読んだ時も思ったが、現代史というより「市民運動史」に近い(朴正煕射殺に1.5頁(しかもその項のタイトルは「光州事件」であり前座扱い)、「ソウルの春」に2.5頁、光州事件に5.5頁割いているのは象徴的)。また筆者の主張というか思い入れが強い。廬武鉉政権は「巨大保守言論の垂直的で一方的なコミュニケーションに対する水平的で自由なコミュニケーションの勝利」「(戦争や独裁を経た後の)ハッピーエンドに終わる物語のよう」である一方で、その後の李明博・朴槿恵政権は「息を潜めていた旧時代の亡霊たちを一挙に蘇らせてしまった」と、極端な対比である。いずれもその時々の市民の選択の結果なのに。朴槿恵政権末期の国民の離反はまた「ハッピーエンド」と言うのだろうか。尤も、崔順実ゲート自体は軍事独裁スタイルとは関係あるようには思えず、「旧時代の亡霊」とは言い難いが。
     新版では日韓関係の推移にスポットを置いたとのことである。確かに日韓関係は、一般の日本人が韓国現代史を見る上での重要な要素である。しかし筆者の論調では、中間派・穏健派の日本人の共感も得られにくいのではないか。
     と批判的に書いたが、同名の中公新書が政治史・政局史とすれば、こちらは「下から」「周縁から」の視点。両方から見ることで理解が深まるのは間違いない。また、韓国で左派と言われる人々の思考を知ることができる。さらに、民主主義が安定し全羅道差別・地域対立が薄まってきた現在の下にも、こういう歴史及び歴史認識が積み重なっていることを再認識するのにも有益である。光州事件の認識が今でも時折問題となることがあるように。

  • 2016年2月新着

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

立命館大学国際関係学部教員。政治学・朝鮮現代史。主な著書に『韓国現代史』岩波新書、『済州島四・三事件』平凡社、共編著に『ろうそくデモを越えて』東方出版、『在日コリアン辞典』明石書店、『エティック国際関係学』東信堂など。

「2012年 『危機の時代の市民活動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

文京洙の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×