平成経済 衰退の本質 (岩波新書 新赤版 1769)

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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317692

作品紹介・あらすじ

バブルとバブルの崩壊から始まった平成時代。マクロ経済政策も、規制緩和中心の構造改革も、「失われた20年」を克服できないどころか、症状を悪化させてきた。セーフティネット概念の革新、反グローバリズム、長期停滞、脱原発成長論などをキー概念に、一貫して未来を先取りした政策提案を行ってきた著者による30年の痛烈な総括。

感想・レビュー・書評

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  • 平成時代に日本経済はほとんど成長していない。むしろ、衰退の道を歩んでいると言って良い状態である。その理由を筆者はその間の政策にもとめている。結果として、現在の日本経済の状態は筆者の言葉を借りれば、下記の六重苦の状態となっている。
    ①産業衰退の加速
    ②貿易赤字の定着
    ③実質賃金と実質家計支出の継続的低下
    ④少子高齢化と地域衰退
    ⑤銀行経営の圧迫と金融リスク
    ⑥中央銀行の機能麻痺

    私の感覚で言えば、この中では、①の「産業衰退の加速」、すなわち、日本の産業競争力の弱体化(要するに競争に負けているということ。例えば、電機産業、特に昔の家電メーカーは往時の面影は全くない。三洋電機、シャープ、東芝等)は、他の項目の遠因となっている。競争力のない産業(ほとんどがそう)では、貿易で稼げず、というか、利益が出ない、そのために賃金が上がらない。そのために、政府は異次元金融緩和等の無理な政策をとる。金利が下がり金は余り、少々業績の悪い企業、いわゆるゾンビ企業も生き残ってしまう、そして、また産業競争力を下げ、賃金が上がらないという悪循環に陥る。異次元金融緩和も、ほとんど限界にきている。円安を容認するかどうかは別にして、仮に円安が行き過ぎていると考えても、金利を上げるわけにはいかない。多くの企業が支払い困難になる可能性もあるし、そもそも、政府の利払い、財政赤字は更に大変なことになってしまう。
    というように、日本経済は、八方ふさがりの状態に近いのでは、ということを筆者は主張し、回復のためのいくつかの処方箋を掲げている。ただし、それは即効性のあるものではなく、回復にはかなりの時間が必要であると述べている。

    バブル崩壊後の日本経済の衰退の理由や対応策についての本を、最近、続けて読んでいる。これまでの政策の失敗はあるが、それよりも、少なくともしばらくは、現在の衰退は上向きにならないのでは、という予測が多く、気分は滅入る。

  • 著者は、立教大特任教授の金子勝さん。
    アベノミクスを一貫して批判し続けている方である。

    アベノミクスに新しさはなく、あるとすればこれまで失敗してきた財政出動や金融緩和などの政策を寄せ集めて大規模化したと。

    更に、アベノミクスは出口のないネズミ講のようなもので、ずっと続けざるを得ない。金融緩和政策から抜け出す『出口』に道筋をつけるために日銀が国債やETFを売り始めたら、国債価格は下落し、株安になるので方向転換できないと。

    日本企業は先端産業で世界に取り残されてしまった。
    GAFAは米国、サムスン電子やファーウェイは韓国・中国。

    異次元の金融緩和や財政出動で、衰退する日本企業を何とか生き延びさせる政策が、実はアベノミクスだったと。

    さて、今後の日本はどうなるのか?


    以下、2021年8月23日、追記。

    著者、金子勝さん、ウィキペディアには次のように書かれています。

    金子 勝(かねこ まさる、1952年6月25日 - )は、日本の経済学者。立教大学大学院経済学研究科特任教授。慶應義塾大学名誉教授。専門は、マルクス経済学、制度経済学、財政学、地方財政論。日本経済学会(主流派経済学の学会)には所属しておらず、経済理論学会(マルクス経済学の学会)に所属。

  • 金子勝という人はイデオロギーの色が付き過ぎて素直に信じられなくなっているが、原発を始めとする過去の主張を見ると、本質を掴まえる事においては信頼できそうだ。であるからこそ経済学者は政策の実現に責任があると思うのだが、どこか他人事だ。そんなに先が見えるのなら自分が責任を引き受けて行動すべきであって、その覚悟がないなら安易に為政者を無責任などと糾弾すべきでない、と思う。
    仮に本書の見方が大方正しいとして、何が諸悪の根源かと言えば縁故資本主義であるように感じた。安倍、竹中のヨコシマコンビは言うに及ばず、ほとんど“家業化”した世襲国会議員こそがネポティズムの象徴であり、彼らのお仲間が楽して特権を維持するには現状の格差社会は実に都合の良いものだ。教育の機会均等なんてとんでもない。金はないけど理念や能力のある人に国会や中央省庁を目指されると困るのである。最終的にはこの悪弊を打破しないと日本はいつまでも二流国のままだが、どうすれば良いのかは皆目見当が付かない。
    それにしても、コロナ禍のような本物の危機が起こるとリーダーの資質や無能さが否応なく見えてしまって悲しいね。こんな奴らを国会に送り込んだ有権者が悪いんだけど。

  • アベノミクスへの批判、安倍政権への危機感が強く出ている。
    主流の意見とならないのは残念。
    やや極端で断定的な所もある。

  • 平成の経済を復習することができました。
    前時代の昭和が、「戦後」や「朝鮮特需」など特別な背景があったため「高度成長」を成し遂げ、また「GDP世界2位」にまで登り詰めました。
    平成は平時が当たり前になり、経済を他力に任せた「投資」や「投機」に傾き過ぎました。
    令和は始まったばかりですが、地に足をつけ経済一辺倒ではない“日本”をつくりあげましょう。
    私も微力ながら貢献したいと思います。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/729457

  • 前半と中盤は、平成30年間の、自民と民主政権批判と、日本社会のダメさの分析が続く。
    僕も日頃思っているようなことも多く、日本の未来は過去よりもさらに暗いなあとは思っているが、この辺りは悪いことしかないので読んでいてしんどくなってくる。
    そして、最終章には金子さんなりの前向きなプランもあるが、前述の批判とは量的にも質的にも、申し訳程度としか言いようがない。
    リベラルよりの政治家や先生にはこんな人が多いなぁ。これをリベラルと呼ぶのは、「リベラル」という言葉に対する冒涜でもあるが、他の言い方を知らないので許してほしい。

  •  第二次安倍内閣が長期化したので平成経済の総括が安倍政権批評に収斂していくのは仕様がないのかもしれないが、それにしても冗長で飽いてしまう。平成は30年間あったわけだからもう少し構成を考えた方がよろしかろうと思える。実際の所、経済学的な観点すら離れて単に安倍政権叩きに終始してしまった感がある。
     
     それと、これはもう言ったらお終いなのかもしれないが19年4月に出版された(執筆して上梓された)ために20年に突如として出現してなおかつ、現在も進行中の『新型コロナウイルス』に関する事がすっぽり抜け落ちている。令和に起きた事だから、では済ませられないだろう。リーマンショックなど屁か何かのごとき経済の大ダメージが、新型コロナウイルスによって今なお全世界的に続いているのだから。
     平成の間になされた事がコロナによってどうなったかといった視点がない為に、厳しい言い方になるが、今読んでも虚しさを感じる代物になってしまっている。
     わかりやすさはあるし、1章や2章など前半部は平成のみならず第二次大戦後の世界の動きなどを追っていて、その辺りは面白く読めたのだが、うーん、執筆を一年待てばよかったのだろうな。筆を執ったタイミングが悪い。

  • 改竄の常態化

  • 失われた30年は大きすぎる。

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著者プロフィール

金子 勝(かねこ・まさる):1952年、東京都生まれ。経済学者。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。東京大学社会科学研究所助手、法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て現在、立教大学経済学研究科特任教授、慶應義塾大学名誉教授。財政学、地方財政論、制度経済学を専攻。著書に『市場と制度の政治経済学』(東京大学出版会)、『新・反グローバリズム』(岩波現代文庫)、『「脱原発」成長論: 新しい産業革命へ』(筑摩書房)、『平成経済 衰退の本質』(岩波新書)、『資本主義の克服』(集英社新書)ほか多数。

「2023年 『イギリス近代と自由主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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