バブル経済事件の深層 (岩波新書 新赤版 1774)

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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317746

作品紹介・あらすじ

バブル崩壊がきっかけとなって発生した数々の経済事件。それらはやがて、日本の金融・行政システムをも揺るがし、長年にわたって日本経済を苦しめることになった。「平成」が終わろうとする今、そこから何を未来への教訓とすべきか。新証言や新資料を発掘し、新たな視点から重要な事件を再検証。背後にある深い闇の奥へとわけ入る。

感想・レビュー・書評

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  • 私は1991年生まれなのでバブル時代を知らずに生きてきたので、本書に書かれているような「料亭の女将に数百億の金が融資された」とか「一人の事業家のせいで銀行が潰れた」とか、この手のエピソードは控えめに言って狂っているとしか思えず、穏やかな時代に生まれてよかった~と思う次第です。

    おすすめ度:
    ★★★☆☆

    故郷は群馬(図書館職員)

    ---
    品川図書館 338.2/O57

  • 自行が発行した債券(金融債)を顧客に買わせ、それを担保とした融資を「ノーリスク」と表現し資金使途も確認せず過剰に貸し出す。破綻の危機にある融資先に自行職員を送り込み、自行に有利な偏頗弁済をさせる。大蔵省(当時)担当局長の意を忖度するあまり、海外当局への事故報告を怠ることのリスクを見失う。不良債権の早期処理を標榜しながら、個別の銀行の問題では資産査定のエンピツを舐める弥縫策に終始する…

    ひどい話だと思うが、これらがバブル期特有の奇特な症状であるとも言い難いのが虚しいところ。おそらく今後金融システムに異常が起こるたび、似たようなことは起こるだろうし、今現在も程度の差はあれ密かに行われているはず。たとえなんらかのリーダーシップが発動し大鉈が振るわれるとしても、問題はその時、何を守るべきものとして優先するかを明確にしない限り、やはり本書に紹介されているのと同じ茶番が繰り返されるだろう。もはや本書のように役人や大銀行のメンツが優先順位の上位には来ないだろうが、なんだかんだといっても本書で紹介される4銀行は今も形を変えて存続しているのだ。バブル期の金融行政の不条理の記憶を、この令和の時代でも蘇らせることの意義は大きい。当時、特捜検事と大蔵省キャリアのエースにパイプを持っていた元記者ならではの記述が生々しく、読ませる。

    ところで257ページ、他のところでは伏せられている大手生保の実名がここだけ出てしまっているが、いいのだろうか。

  • 経済記者による、バブルを象徴する事件の当事者たちへのヒアリングをまとめた本。
    事件後に当事者に取材を当てているだけでなく、事件時・あるいは事件前から接触をしているケースもあり、他の経済事件本とは臨場感が違う。

    一番面白いのは終章で、定期的に昼食会を開くほど仲睦まじかった大蔵省と特捜部のキャリア組が次第に険悪になっていく様が淡々と描かれるところ。
    その昼食会にずっと参加していた著者でしか書けない。
    この章だけ具体的な単独の事件を追った内容ではないので浮いた感じになっているが、この部分だけでもこの本を読む価値がある。

    著者らにとってはバブル崩壊は人生をかけたテーマだという。
    何らの解答もまだ得られていないのでは、と。
    その事自体にケチをつけるつもりは毛頭ない。
    個人としてはそういう人生もあろう。

    問題は、日本経済がその後の30年、迷走を続けていることだろう。
    その後、アメリカではドットコムバブルもサブプライムバブルも弾けたが、さっさと経済は回復し、平均株価はゼロが一つ違うまでに伸展し。
    また、その間バブルだバブルだと言われ続けながら、隣の大陸の経済は膨張を続け、アメリカに覇権を挑むまでになって。
    一方で未だに日本はそのときのことにこだわり続け、デフレに苦しみ、人口は減り続け、技術は奪われ、ようやく株価はピーク時の半分くらいまできたところか。

    どこかで間違えたからこの結果があるのだろうし、それを知りたいがゆえの著者らのテーマ設定だが、本書でもどこまでいっても決定的な悪人は出てこない。
    巨額な賄賂が動いて私腹を肥やしたヤツがいて、とかならわかりやすいがそんなこともない。
    当事者に通じた著者らが内側を切り取って現在の視点から見直してみてもなお、皆、それぞれに真面目に仕事をした結果がこれなんです、としか導き出せない。
    これはこれで頭を抱える。

    強いて言うならば、日債銀の処理や大和銀行の処理などに顕著に見られるが、特捜にせよ監督官庁にせよ、国益よりも正義感が勝る判断をしがちだったのかな、と。
    ナイーブさに付け込まれての経済敗戦みたいな総括で自分でも癪だし、それじゃ勝手にブチ切れて国際連盟を脱退してきてからの70年前の敗戦と変わらないじゃないか、という気もするが、案外そういうことかもしれないな、とも思ったり。

    国益というと右翼じみた解釈をされるが、そういうところから変えていかないと変わらないんじゃないか、と思うにいたり、
    だとしたら朝日の記者だという著者には解けないテーマじゃん、というオチでした。

    いや、すべての朝日記者がアサヒると考えてはいけませんが・・・。

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1774/K

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著者プロフィール

奥山 俊宏(オクヤマ トシヒロ)
朝日新聞編集委員
朝日新聞編集委員。東京大学工学部卒。1989 年朝日新聞社入社。社会部などを経て、特別報道部。2009年にアメリカン大学客員研究員。『秘密解除 ロッキード事件』(岩波書店)で司馬遼太郎賞(2017 年度)を受賞。同書や福島第一原発事故やパナマ文書の報道を含めた業績で日本記者クラブ賞(2018 年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書)。

「2019年 『現代アメリカ政治とメディア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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