日韓関係史 (岩波新書 新赤版 1886)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318866

作品紹介・あらすじ

日韓関係は、なぜここまで悪化してしまったのか。交流が増えるにつれて、日韓の相互理解は進むはずではなかったのか。——その謎を解明するため、本書は一九四五年から現在に至る歴史を、北朝鮮・中国など国際環境の変容も視野にいれながら、徹底分析する。一つの生命体のように変化を遂げる日韓関係の履歴と未来とは。

感想・レビュー・書評

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  • こんなに近いのに、こんなに遠い日本と韓国の関係を1876年の日本の開国要求を受け入れた朝鮮の「開国」や1910年の「韓国併合条約」の時代も踏まえつつ、日本にとっては敗戦、韓国にとっては独立という1945年からの関係史を詳細に記しています。それは知っているつもりで、知らないそれぞれの国民の心の動きの歴史だったりします。「非対称」から「対称」な関係へ、というこの長い間の歴史を、理解している日本人は少ないのではないか、と思いました。特に本書で初めて目にした「移行期正義」という概念は印象に残りました。前政権のやった事を徹底的に糾弾してバージョンアップを続ける韓国社会と、戦前・戦後さえシームレスに繋がっていく日本社会を「移行期正義」の観点で見ると、こりゃ、ギア噛み合ないや、と思ってしまいます。キムチでも冬ソナでも繋がる事の出来ない両国の溝は、まったく時が解決してくれるものではなく、さらに広がっているようにも思います。米中の対立や北朝鮮の問題など、さらに難しい変数は増えているような気がします。その中でも光を探そうとしている著者の想いは、両者の想いを丁寧に研究することで生まれているのでしょう。外交上の「共通利益」の創出…広くて長い目線を持って取り組まなくてはならない状況で、この新書は大切な基本書になると思いました。

  •  これは圧巻です。 新書でここまで書けるとは素晴らしい!
     
     主に1945年以降の日韓関係を記述していますが、事実関係を丁寧に扱いながら、「非対称から対称へ」という独自の見方で潮流を読み解きます。特に優れているのは、日本・韓国それぞれの立場・意識・価値観の違いを、極めて冷静・客観的に分析している点。これを読むと、隣国であっても、「正義」(約束・合意を守ろうとする「手続き的正義」の日本と、その時の関係当事者が納得する「実質的正義」の韓国)や「歴史」の捉え方で、お互いに大きな違いがあることがわかります。

     特に、第4章では、①国力(パワー)の「均衡化」、②体制価値観の「均質化」、③日韓関係の「多層化・多様化」、④日韓関係の「双方向化」、の4つをもとに「非対称から対称へ」を論じるところは納得感があります。

     日韓の一人当たりGDPの差では、1970年の7倍から2018年には1.3倍までに縮小。ソフトパワー(文化)の面でも韓国がグローバルに展開し、かつてとは異なる状況になりながら(非対称から対称へ)、日本側の価値観の変化が追いついていないところもあるとも分析しています。

     米中対立のなかでは、日韓が手を結ぶほうが得策とのことですが、韓流好きも嫌韓も、「この本を読まずして日韓関係を語るなかれ」と言いたくなるほどの1冊です。

  • 日韓関係史の概論。大韓帝国成立以前の日朝関係、それ以降の現代までつづく日韓関係を簡潔にまとめている。歴史認識問題、経済関係などをめぐる日韓の関わり合いがよくわかる。

    日韓歴史認識問題における両国の齟齬は、日本人と韓国人が元来もっている考え方の間に相違があることも一因となっているようだ。また著者によれば、民主化以降の韓国には独裁政権期の行いを正そうとする、いわゆる移行期正義という考え方、関係当事者の同意を重視する、実質的正義という考え方が世論に根付いていることも注目に値する。日本の場合は対照的に、過去の約束・取り決めを守ろうとする、いわゆる手続的正義が重視されているそうだ。

    戦後日韓関係史を概観すると、そこでは「非対称的関係から対称的関係への移行」という現象が見受けられ、対称的関係への移行こそが日韓の対立を惹起している節もあることがわかる。非対称的時代、つまり韓国が一種の独裁制を敷いていた時代は、韓国内の言論空間を統制することが容易であった。それに加え、当時は日韓間の経済格差が歴然であり、国家安全保障上の必要性も手伝って、日韓協力が容易であったという事情がある。

  • 日本と韓国には、一見すると外交上の違いがあるように思えるが、北朝鮮の非核化や国際社会への
    本格的な参加より利用価値を重視している中国に、韓国が主導する南北の統一が中国に不利にはならないことを日韓で示すべき。ロシアも同様。

    南北の経済協力と日韓国交正常化で、拉致問題も進展するかもしれない。

    今こそ分断ではなく、協力することが大切なのではないか。

    厳しさを増す国際環境に対して、どちらが望ましい外交ができるかを競うべきだと思う。

  • ー158

  • 「過去における解決」を尊重しながらも不断に「進化」させていく取り組みが、双方に要請される。それが歴史問題を「管理」するということである。対立を激化させるのではなく、双方がどのような取り組みをするのか、競争するのである。(218頁)日韓には外交上の共通利益、米中対立やロシア、北朝鮮との関係があり、そこに向けた望ましい成果をあげることに双方が協力していくことが国際環境にとっても望ましいという終わりに頷きます。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000053626

  • 1910年の韓国併合から1945年の解放(終戦)までを日韓関係「前史」として述べる。その知識を前提に現在までも日韓関係をいくつかの節目で分ける。1945~70年:冷戦下における日韓関係の「誕生」。1970年代・80年代:冷戦の変容と非対称的で相互補完的な日韓関係。1990年代・2000年代:冷戦の終焉と対称的な日韓関係の到来。2010年代:対称的で相互競争的な日韓関係へ。韓国の経済力の向上と引き換えに日本の経済力の減少で以前の上下的な関係から、平等的な対称関係になった。しかしながら、両国民の意識には、「これ以上韓国のいうことを聞いてはいけない」と「日本には容易に譲歩してはならない」の二つの感情があるようだ。お互いが相手の立場を慮るということなしには、これからも悲観的な関係だと感じる。K-Popや韓流に親しんでいる若い世代に期待したいな。

  • 何が正解かはわからない
    でも情報を得たい
    得たい
    それに足る内容かなとは思いました

  •  まず、第1章の日本統治期をはじめ、日韓双方の立場のバランス良い記述が感じられる。両国だけでなく、過去の政権の合意に拘束されるかという「移行期正義」の発想については、全世界的な潮流にも言及。
     また、本書では国際関係の変容の影響にも着目。朝鮮戦争から冷戦が日韓の垂直的分業や「安保経協」を規定、米中和解後の南北対話、ニクソン政権での対韓関与削減と日韓接近、冷戦終焉と南北•日朝それぞれの接近、北朝鮮をめぐる従来の日韓関係の変容、中国の大国化と日韓を取り巻く米中対立の激化など。
     そして、本書では日韓関係の非対称から対称化、競争関係へという点を強調する。90年代から、国力、体制価値観、多層化・多様化、双方向化の4点で対称化が進んだとする。

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科教授。

「2020年 『歴史としての日韓国交正常化Ⅱ〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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