ジョン・デューイ 民主主義と教育の哲学 (岩波新書 新赤版 1945)

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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004319450

作品紹介・あらすじ

教育とは何かを問い、人びとがともに生きる民主主義のあり方を探究し実践した、アメリカを代表する思想家デューイ。彼の構想したコモン・マン、すなわち一般の人のための哲学は現代の教育や社会にも大きな影響を及ぼしている。広範な学問分野に亘るその思想をデューイ研究の第一人者が丹念に読み解き、今日的意義を展望する。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカの哲学者・教育学者のジョン・デューイの足跡を辿り、彼の思想に迫った内容。新書一冊では何もわかった気にもならないほど、その足跡と哲学(思想?)は奥深い。デューイのアメリカの公教育への取り組みや足跡は本書を読めば概略を掴めるが、なにより注目する点は彼の民主主義と教育に対する考えだろう。
    民主主義とは政治の具体的な制度や政策に収まらない。コモン・マン=一般の人がより良く生き、学ぶことそのものであるという。そして一般の人が集い互いに協力と依存する自発的なコミュニティーのなか、開かれた討議を通して合意を作っていく。
    コモン・コミュニティー・コミュニケーションの3つの概念を軸に、「他者とともに生きる方法」を教育と民主主義の根幹と考えたデューイの哲学は、今日においてはやや牧歌的な趣さえある。近年のアメリカ国内の分断や、ポピュリズムやフェイクニュースに苦しむ西側民主主義国を日々目にする21世紀においてはなおさらだ。なんというか、あなたの哲学とはほど遠い地に世界は辿り着いてしまった、といえば、デューイ本人はずいぶん嘆くかもしれない。
    それでも、生きることと学ぶことを基礎とした「ともに生きる方法」を探求したデューイの民主主義と教育の哲学は、今日のあれかこれかの二元論的な世界観を相対化させ、問い直し、再考する手立てをもたらしてくれるかもしれない。と、無責任な希望を込めてこの文を書いておこう。
    デューイの著書「民主主義と教育」はいずれは読んでいこうと思う。

  • 難しかった!!けど学びもあった。ゆっくりゆっくり読まないと何が書いてあるか分からなくなってしまう。丁寧に読んだ。

  • 後半はともかく、前半については、無駄に難しく、かつ、とっちらかった印象を受けましたが、あとがきを読んで、著者のこれまでの経緯を知り、それらの理由が少し納得できました。

    デューイについては、「現代の教育は、100年ほど前にデューイが考えていたことを、少しも超えられていないのではないか」という思いを持ち続けていたこともあり、図書館で見つけたこの本を、手に取りました。

    デューイについては、その著書である『学校と社会』でしか知らなかったのですが、教科か子どもか、知識か関心か、科学か生活か、などの二元論を踏まえつつ、二律背反・二項対立を超える姿勢を持ち続けた人だったのですね。
    そして、教育学者、というだけでなく、哲学者であり、民主主義について考え続け、啓蒙し続けた人だったのですね。

    この本を読んで、デューイの考え方や生き方には、改めて感服しましたし、「デューイを超えられていない」という点については、その意を強くしました。
    同時に、教育について、新しいとされている様々な動きがある現代は、まさにデューイを見直すべき時であると思いました。

  • いまさらだけどデューイはすごい。プロジェクト学習(PBL)もリフレクションもぜんぶ書いてある。というかこの時代にすでに実践している。なぜ今まで知らなかったのだろう。
    演習が中心のデザインの教育は、世の中でPBLが注目されるずっと前からほぼプロジェクト型だったので、知識として知っていたら授業設計をするのがもう少し楽になったかもしれない。
    そして、learning by doing(なすことによって学ぶ)がデューイのことばだったとは!という驚き。

  • 今までで1番読書メモをとった本。デューイの思想の奥深さはもちろん、その研究に捧げた上野さんの人生に感服。
    探究する人生。そしてコモンマンになる。僕自身教師として、今まではどこかすごいことをするような子どもを、育てようとしていたけど、そんなこともないなと思った。当たり前に前提を疑い、試行錯誤し、反省する。そして、よりよく生きていく。そんな人生を送るのが1番。善か悪か、正解不正解、そんな二元論を超えて、反省的に実践していく。そこで、やはり学校における評価の問題がある。良いものを称賛し、ダメなものを決定する。自分も子どものころ、絵を描いたり、運動したりすごく好きだったけど、評価され比べられて自分の有能感が失われて、嫌いになっていったことが多い。
    大人になって、改めてけっこういけるじゃんってことはあるけど、子供にとってとは今が大切で、くだらない評価のために好きなことを嫌いになってほしくないなと思った。
    漫画ブルーピリオドでも描かれているように、美大受験のための絵画とか芸大っぽいとか。あるけど、それを超えて、自分の伝えたいこと、表現したいことを表現していいんだと思える。もちろん評価はいろいろあるけどそれでいい。そう思えるようなマインド。
    コモンマン。それは現状に対する諦めではなく、今を含めた未来への希望。それをどう自分の行動や仕事に落とし込んでいくか。そこに注力していきたい。
    人生をとして、理想的な社会の実現のために思考を重ねたデューイ、そして上野さんの功績を讃えつつ、自分なりにできることを行動で示していきたい。
    learning by doing

  • 【請求記号:371 デ】

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/778211

  • 【背景】
    ①なぜ読むか
    デューイについて、広く学びたいと思った。
    ②何を得たいか
    デューイの生涯や活動の概要を知る。
    ③読後の目標
    教育実践とデューイの思想を繋げる。
    【著者】上野正道
    【出版社】岩波新書
    【感想】
    デューイの中国訪問及びその影響に関する記述については、かなり興味をもって読むことになった。そういった影響を日本以外のアジアに与えているとは初耳だった。
    経験主義は「這い回る」と揶揄されることもあるが、彼の目指した教育は決して這い回るようなものではなかった。
    彼の目指す教育は、今日においても応用することが可能であり、今の時代だからこそ実践しやすい側面もあると思った。

  • これは必読だな。

    宮台真司氏らの「経営リーダーのための社会システム論」ともどこかでクロスする。つまり、公共をどうするかという、実に古くて新しい、根本的でベタな大問題だ。

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著者プロフィール

上智大学総合人間科学部教授

「2021年 『教育にこだわるということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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