イスラームを知ろう (岩波ジュニア新書 430)

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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005004300

感想・レビュー・書評

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  • 参考になったが、ひとつの団体組織を例にあげすぎているきらいがある。

  • 頑張って読み終わりはしたが、理解できない部分が多かった。「イスラム教」というのは実は寛容な宗教なんだよ、というのが筆者の最も言いたい事だと思う。この本が書かれた当時は、同時多発テロは発生した後だったが、「イスラム国」なんてものは無かった。今こそイスラム教に対する偏見を持たないように注意せねば。

  • ジュニア新書なだけあって、読みやすかった。
    イスラムの多様性を強調したいといっているだけあって、地域によって異なる慣習を紹介。多様な理由としては、①もともとの民間信仰にイスラムが融合 ②イスラム自体の解釈が歴史を経るなかで異なる ③柔軟な契約思想
    たぶん↑こんな感じかと。

    1.イスラームとの出会い
    イスラーム=唯一の神であるアッラーに無条件に従うこと

    2.イスラームの成り立ちと広がり
    ◆ムハンマド
    預言者、創唱者、使徒、マッカ生まれ(570年ごろ)の商人出身

    ◆六信五行
    ①アッラー
    「唯一神」を意味。固有名詞(アッラーさん)であり、普通名詞(神様)ではない。アッラーの前ではみな平等(預言者を含め、序列はない)

    ②天使
    性別なし、役割別にいろんな天使がいる、人間の両肩には二人の天使(右→善行、左→悪行を記録、最後の審判で秤にかけられる)

    ③啓典
    アッラーの啓示を記録=「クルアーン」
    ※聖書も啓典にあたるが、イスラムでは人為的に改編されたものと認識
    ※啓典の民=ユダヤ教、キリスト教(つまりイスラム教とは仲間)
    ※「ハディース」(ムハンマドの「スンナ/言行」を記録)は聖典であるが啓典ではない。

    ④預言者
    アッラーの啓示を預かり、ほかの人々に伝える役割、12万4千人、「クルアーン」では25人搭乗(アダム、ノア、アブラハム、モーセ、イエス、ムハンマド)
    ※使徒=預言者のうち、特別な使命をさずかったもの(313~315人)

    ⑤来世
    最後の審判の日に、死者はよみがえり、アッラーによる審判を受けて天国行きか地獄堕ちが決まる

    ⑥天命
    この世のすべてのことはアッラーの意思によってあらかじめ決められている

    (1)信仰告白(シャハーダ)
    アッラーへの信仰を告白する行為
    「ライラへ・イッラッラー、ムハンマド・ラッスッルラー」

    (2)礼拝(サラート)
    1日5回、夜明け・正午・午後・日没・夜、金曜正午はモスクで集団礼拝

    (3)喜捨(ザガート)
    貧しい人へのお布施、救貧税

    (4)断食(サウム)
    ヒジュラ暦の9月(ラマダーン月)に一カ月実施、日没前~日没まで飲食・喫煙・性交すべて断絶
    ※つばを飲み込むことも禁止

    (5)巡礼(ハッジ)
    ヒジュラ歴の12月7日~13日、マッカのカーバ神殿を詣でる
    ※肉体的・経済的に可能な者だけ

    ◆シャリーア(イスラム法)
    イスラムの規範、クルアーンとハディースに拠る

    ◆スンナ派とシーア派
    スンナ派→ムハンマドのスンナを信仰の基礎とする、合議派(ムハンマドの後継者は合議で決める)
    シーア派→それ以外の少数派(まとめてシーア)、血筋派(ムハンマドの後継者は血筋があるものに限定)
    ※イラン→シーア派の国、12イマーム派(ムハンマドの後継者は12人いる)

    ◆イスラームの寛容性→信徒が増えた理由
    ①改宗が容易(特別な儀式は不要、信仰告白のみ)
    ②平等主義(アッラー以外の神性は一切認めない)
    ③契約思想(六信五行の契約をまもれば来世が約束される)
    ④そのくせ柔軟(過不足や善悪のバランスをとればよい、とりかえしがつく宗教)

    3.ムスリムの一生
    ◆ムスリムの通過儀礼
    多くは民間信仰+イスラムによるもの→土地によって儀式は異なる
    イスラムを国教とする国では、近代法を採択しつつ民法の一部にシャリーアをとりいれている国もある。
    ※サウジやイランは、国の法律すべてがシャリーアに準拠(イスラム的!)

    ①誕生・名づけ・割礼は民間信仰による慣習

    ②結婚は義務、独身はタブー、男性は啓典の民との結婚は可能だが女性
    はムスリム男性としか結婚できない、婚資は花婿が花嫁の実家に支払う(⇒女性は結婚が早いが、男性は遅い)

    ③一夫多妻(4人まで)は、未亡人や孤児を救済するため
    ※欧米からは、男尊女卑・非経済的と非難→戦後、トルコやチュニジアは一夫多妻を禁止(家族法の改正)

    ④遺産相続は、妻は1/8、子供が残りの7/8を男:女=2:1で配分
    ※妻が複数いる場合は、1/8を均等配分

    ⑤死(生)は一度だけ、輪廻転生はない、火葬はNG(最後の審判で霊魂が戻るところがなくなるから)、火で人間を焼くことはアッラーのみ持ち得る罰、自殺はタブー、ジハード(殉教)は好ましい死、墓はただの死体置き場

    ※生きている人間が死者のために善事をおこなう「追善」は、イスラム社会でも見られるが、これはイスラムではなく民間信仰に近いもの
    →宗教指導者によって、追善儀礼を禁止する場合も。

    4.ムスリム社会の一年
    ◆ヒジュラ暦(イスラム暦)
    太陰暦(月が地球の周りを一周する=1年354日)、622年7月16日=イスラム元年元旦(ムハンマドがマッカからメディナに移住)

    ◆メインは断食・巡礼後の二大祭り
    ①イード・アル・フィトゥル→断食あけ
    ②イード・アル・アドハー→犠牲祭(巡礼あけ)
    墓参り、饗応、羊の屠殺・供物など、「ハレ」の日、祝日、サラート・アル・イード(早朝の集団礼拝)

    5.ムスリムと民間信仰
    ◆民間信仰(呪術)は、イスラムではない
    法律で禁止→実態は、不法滞在者を排除することが目的

    ◆スーフィズム(イスラム神秘主義)
    スーフィズム→六信五行以外に修行が必須
    (例)トルコのメヴレヴィー教団(旋舞)、ヨルダンのアラウィー・ダルカーウィー教団(呪術)

    ◆聖者
    「ムスリムとしての徳を人並以上に積み、アッラーの寵愛を受けた人々」として世間から認められ・あがめられた人たち、スーフィーもその一部
    ※厳格なイスラム社会(サウジなど)を除いては、聖者信仰を黙認

  • ちょっと浅すぎるかなぁって感じ。
    もうちょっとイスラームの歴史とかも知りたかったんだけど、この本ではもっぱら文化的なことだけが書かれてました。

    イスラム教じゃなくてあえて「イスラーム」と表記されているのは、イスラームでは唯一神アッラーの啓司のみが信じるべきもので預言者たちの神性は一切認めてないからだそうです。預言者はアッラーの啓司を預かり、他の人々に伝えるのが彼らの役目というわけです。
    預言者ムハンマドが受けたアッラーの啓司をまとめた書が、聖典クルアーン(コーラン)です。クルアーンを読んだだけでは、現実の多種多様な問題を処理できない場合があるので、ハディースがそうした問題を解決するための補助として用いられる。この二つがイスラームの原点であり、この二つを二大源泉として導き出された規範全般としてシャーリア(イスラーム法)がある。

    六信:ムスリムが信じなくてはならない六つの項目
    アッラー、天使(マラク)、啓典、預言者、来世(アーヒラ)、天命(カダル)
    五行:ムスリムが行うべき五つの義務的行為
    信仰告白(シャハーダ)、礼拝(サラート)、喜捨(ザカート)、断食(サウム)、巡礼(ハッジ)
    *日本の仏教では、一般の信者に厳しい刑律がかされることはないし、キリスト教も、目に見える行為よりも内面的な信仰心を重視する宗教である。

    もしこうした契約を守らなければ、その人は天国には入れず、地獄行きとなるが、それは生前の善行と悪行のどちらが多いかで決まるので、悪いことをしてしまったらそれを補うだけの善い行いをすればよいそうです。
    他にも、礼拝の仕方が絵で書かれてたり、巡礼の順番なども書かれてたしオモシロイ。
    その他で最も興味深かったのは、「呪術者」というのが信じられていたということ。人々は自分自身あるいは家族などの病気を治す目的で人は呪術師の元を訪れていたようです。こうした良い目的で行われる「白呪術」が信じられる一方、人に危害を加えるなど悪いことを目的とした「黒呪術」も存在したそうです。どちらも心霊術、催眠術に近いのであまり認められているものではないそうですが、人々が本当にそういうものを信じていたということがおもしろいと思った。特に白呪術に関しては病院より呪術師の方を信頼している人までいるそうで、そこまで来るとそれってイスラームは関係ないじゃない?と思っちゃうけど個人的には興味深かった。

  • 対象読者は中学〜高校生あたりだと思う。その頃に読んでいたら色々役に立ったかもしれないなあ。基本的なことを勉強するにはいい本と思います。

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