私は「蟻の兵隊」だった: 中国に残された日本兵 (岩波ジュニア新書 537)
- 岩波書店 (2006年6月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005005376
感想・レビュー・書評
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恥ずかしながらも敗戦後に山西省に残留して戦った日本軍がいたことなど、今まで知らなかった。いつの日か天皇を戴く国家を再建できるようにと、御国のために戦ったそうだ。しかしそれは建前で、上層部のものが戦犯を逃れるためであったり、国民党軍からの手厚いおもてなしがあったからで、一般の兵士たちは、そんなことも知らず、共産党軍との熾烈な戦闘をさせられた。共産党化を防ぐためであったので、連合軍もこのことは知っていたのではないかと思われる。
本当に愕然とさせられる。もう母国日本では新しい憲法の元で平和な国家作りが始まっていたにも関わらず、お隣の国では相変わらず「天皇ばんざーい!」と叫びながら戦っている人たちがいたとは。
そして彼らが解放されてやっと帰国しても、自主的に残留したことになっていて何の補償もされない。敗戦時に知らないうちに「除隊」したという記録がつけられてしまっていたのだ。自衛隊に残された記録を調べているうちに、肝心な書類も隠されていったそうだ。昔も今も体制側のやることは一緒だということだ。
奥村さんの言葉が響く。
〜戦争というのは、どのように人間を変えるかということです。それを私の場合は、吐き出すことによってしか、追求していくことができないのです。だから、一生、やっぱり人間というのはとどまってはいけない。そのことにはじめて気づいたのです。年をとったから「もういいや」と安住を求めてはいけないと思います。そこまでわからせてくれたのが、こんどの中国への旅でした〜詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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◆終戦時、上官の命令一下、自らの意思に反して中国大陸に残留させられ、中国共産党との内戦に借り出された陸軍兵士の人生回顧録。その苦難に思いを馳せつつも、思込みの激しさ故の取っ付きにくさも垣間見させる◆
2006年刊行。
対談者奥村は終戦後も大陸に残留させられ中国軍と戦い、結果、共産党政府の捕虜に。同酒井は(社)日中友好協会常務理事。
映画「蟻の兵隊」のモデル奥村の体験を対談形式で引き出す書である。
① 応召~終戦。
② 終戦後の中国共産党軍との戦闘。
③ 中国共産党での捕虜生活。
④ 公安警察による監視下にある復員後の生活と、言われなき根拠なき就職・社会生活上の差別実情。
⑤ 日中国交回復運動への参画。
⑥ 残留命令の存在を国に認めさせるために行った訴訟とその経緯。
⑦ 映画撮影の実
などに内容は区分される。
そもそも、裁判官転任に伴う無押印は判決書の効力・有効性に無関係である。しかしこういう瑣末かつ無意味な部分に噛み付いてしまう人物という印象は避けがたい。
あくまでこれは一例に過ぎないが、本筋とは関係ない部分で憤ってしまうなど、思い込みの激しさと自らの立ち位置を俯瞰的に見れない部分は散見される。
その極めつけが、ラスト近く、かつて中国人を処刑した場に向かう態度に現出してしまっている。
それが、戦後日本で痛めつけられたことによるのか、それとも戦前日本から軍隊生活の中で身についてしまったのか、それとも…。もとより加齢によるのかもしれないが…。
内容は、中学生にも読めるように易しくされているが、池谷薫「蟻の兵隊」を超えるものはなかった。 -
「蟻の兵隊」鑑賞後、購入して読んでみた。映画に描かれてない部分がとても貴重に感じた。
最初は、奥村さんの個人的執念が強いと感じていたのだが、彼はこれからの時代の事を、ちゃんと考えてくれていたので安心した。
戦争を本当に知っている者は、戦争の話をしたがらない。それは、思い出したくない事だから...と聞いた事がある。でも奥村さんは、そんな辛さを乗り越えて、自分のために、社会のために、戦争を伝えようとしているのを感じた。
戦争は人を変える。その変わってしまった人間性を元に戻すのは容易な事ではない。そして皆、それに苦しむ。一般に戦争は、人の死や苦しい生活など、目に見える部分の悲惨さが強調される。でもこの本からは、戦争が終わっても、戦争を終える事のできない苦しみを、強く感じた。
そんな想いをする人を、もう産み出してはいけない。そう思わされた一冊であった。 -
感想未記入
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[ 内容 ]
[ 目次 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
終戦後も軍命によって中国に残されて先頭を続けた日本兵。死の瀬戸際を生き抜いて帰還したにもかかわらず、勝手に「脱走兵」扱いになっていた。真実を明らかにするため、国を相手に闘う「蟻の兵隊」たち。戦争の真実を知るためにぜひ一読してほしい。非常に読みやすい。映画化されているので、これも観るべき。
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テーマは非常に興味深いが、本としては今ひとつ。
インタビュー形式のせいか?
映画が見てみたい。 -
終戦後、山西省にいた一部の兵隊は、投降したあと国民党軍に組み込まれ、天皇の名の下に共産軍と戦うことを命じられた。その中の一人奥村和一さんは八路軍との戦いで瀕死の重傷を負いながらも助けられ、強制労働と共産党の思想教育を受ける。思想教育には反発するが、帰国後の差別を通じ、逆に中国に恩を感じ、中国の悪口を言う者を許せないまでになる。奥村さんたちは、戦後日本にもどってくると、国民党軍への参加は勝手にやったものと見なされ、政府からなんの保障も与えられなかった。奥村さんたちは、国を相手に裁判を起こすが、その訴えは最高裁でも棄却される。しかし、かれの叫び、恨みは池谷薫という映画監督と巡りあい、自らが戦い、人を殺し、そして自らも傷ついた地をまわることで、それまでの呪縛から徐々に解かれ、それまでほとんど口にだせなかった戦友たちの慰霊にまでいきつく。