人とミルクの1万年 (岩波ジュニア新書)

著者 :
  • 岩波書店
3.82
  • (2)
  • (10)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 66
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005007905

作品紹介・あらすじ

氷河期が終わり、約1万年前、家畜の飼育が始まった。やがて"搾乳"の発明により、家畜のミルクに大きく依存する、牧畜という生活様式が西アジアで始まった。ミルクを保存食にするための工夫から、ヨーグルトやチーズ、バターなど乳製品も生まれた。ユーラシア大陸の各地に牧畜民をたずね歩いてきた人類学者が、読者を牧畜と乳文化の雄大な歴史へと案内する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 成分や製法や地域など、子ども向けの新書とは思えないほど充実しています。それぞれの地域の加工品はどれも特徴的でおいしそうです。いろいろな意味で、日本がおいしい乳製品を製造するのが大変な国であることもわかりました。

    • syriasheepさん
      きあらさん。読んで下さって、ありがとう。乳製品というと、私たちは、ヨーロッパのものしか知りません。でも、ユーラシア大陸では、実に様々な乳製品...
      きあらさん。読んで下さって、ありがとう。乳製品というと、私たちは、ヨーロッパのものしか知りません。でも、ユーラシア大陸では、実に様々な乳製品が、それぞれの地域の生態環境に育まれて、発達しています。そんなことも、本書で伝えたかったです。10の乳製品に出会えば、8くらいまでは、えっっっ;と思える乳製品ですが、それでも、牧畜民にとっては命の糧。10の内、2つくらいは、「あーー、苦労して、この地まで足を運んで良かった!」と思える乳製品に出会います。それはそれは感動で、現地に赴くしか味わえません。きあらさんも、ぜひ、色んな乳製品を楽しまれて下さい。注意していると、日本でも、ずいぶんと色んな乳製品に出会えます。著者の平田より
      2014/12/30
    • きあらさん
      コメントありがとうございます。とても感激です。年末年始、メールを見ていなかったので、お返事が遅くなりました。アジアの乳製品はとても興味深く、...
      コメントありがとうございます。とても感激です。年末年始、メールを見ていなかったので、お返事が遅くなりました。アジアの乳製品はとても興味深く、貴著で堪能致しました。出会える機会があればよいです。加工の過程が丁寧だったのがうれしいです。人間との長い歴史を考えるのがおもしろかったです。
      2015/01/06
  • 普段飲んでいる牛乳や、食べているチーズやヨーグルトなどの乳製品。
    今や日本の食卓にはなくてはならない存在となっているが、こうして食卓に乗るのはごく最近のこと。
    しかも、ヨーロッパ文化の影響を強く受けているため、実は私たちは乳文化のごく一部しか知らない。
    1万年の歴史があり、しかも文化圏ごとに全く違った表情を見せる乳文化の美味しくて不思議な世界を辿ってみよう。

    まず、ヒトの母乳を考えてみよう。
    あの真っ白なほのかに甘い液体は、母親の血液で作られている。
    どこでどうやって赤が白になるんだ!
    ウシは1リットルの乳を出すのになんと500リットルもの血液を必要としているという。
    著者が感じたように、私も偉大さと尊さを感じる。
    この乳というものは、人間のように年中繁殖期ではないので、ある一定の期間しかとることができない。
    それをどうやって保存していくか、ということが課題となる。
    西アジアではヨーグルト、バター、バターオイルの順に加工され、チーズはカチカチの塩辛いものが出来上がる。
    対してヨーロッパでは熟成の方向へ向かう。
    カビを使用するという、高温多湿のアジアとは全く異なる方向へ!

    その一方、双方の技術が重なり合った地域も存在するのだ。
    この文化の広がり、技術の広がりは歴史を考える上でとても面白く、興味を惹かれる。
    搾乳とは素晴らしい発明だった(ヒトにとっては!)。
    母が子にしか許さない行為を利用して、それを自らの栄養にして、さらに子孫を繁栄させる。
    この発明があって、いまの「おいしい」があるのだ。

    私がミルクを飲んで、それが血液になって、さらにそれが子に与える乳となる。
    命の営み、生命のつながりを考えるととても感慨深い。

  • 乳文化(酪農とミルクの加工)はどのように伝播したのか。
    乳文化の研究者である著者による説明には、好きなものについて語る人の楽しさがある。
    ジュニア新書のわかりやすさで好奇心を刺激してくれる良書。
    その場所にあわせて育っていく文化と、それを裏付ける科学や考古学や歴史を知ることができる。

    暑く乾いた西アジアで、ミルクは貴重な栄養源。
    暑さで腐る前にとにかく発酵させて、それから加工する。
    冷たく乾いたモンゴルでは発酵より分離が先に進むから、クリームをとってから加工する。
    冷涼多湿のヨーロッパでは加工したチーズを熟成させた。
    乳以外の食品で栄養摂取できるアジアでは、乳製品は嗜好品や栄養補助食品として受け入れられた。


    『パスタの歴史』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4562047534には、イタリア南部の暑く乾いた風が良質な乾燥パスタをつくったとあった。
    この本にはイタリア北部の冷涼湿潤な気候が熟成チーズを発展させたとある。
    南のパスタと北のチーズが合わさってイタリア料理になっているのか。
    ものをみるものさしが増えていくのは楽しい。

  • 人類のミルク活用の歴史はおよそ1万年にわたる(と予想される)。この本は世界におけるミルク活用の結果を紹介したものである。所変わればミルクも変わる。どうしてそのようなミルク文化が生じたのか、主に気候の観点から説明がされていく。ジュニア新書なので簡単に読める。

    ミルク文化はミルクの加工方法によって分類することができる。この本の良いところは、著者が実際に世界各地へ調査に行き、どのように加工・利用しているかを取材しているところにある。これにより、様々なミルク文化を体系的に理解することができるのだ。

  • さまざまな乳文化にこの本を通してふれるだけで、世界の広さを知るかのようです。ミルクは完全食ともいえるもので、多くの人間は、生き延びていくために大事に利用してきたんですねえ。日本でも、貴族は室町時代くらいかその前くらいまで、濃縮乳なるものを食していたそうです。ミルクは、ぼくたちの身近な製品でありながら、その化学的な部分も、歴史的な部分も、実はよく知られていません。ミルクにかかっている無知のベールを、ぼくたち自らがはがして知ってみる機会を、与えてくれる本になっています。

  • 読了。

    人とミルクの1万年 / 平田昌弘

    人類と家畜と乳製品の切っても切れない関係を地域体系と歴史で追う本です。

    紀元前7000年前から羊やぎ家畜化したら自然な流れで搾乳に移行して、そこから保存としての乳加工。西アジアが発祥らしい。
    発酵系は土地の気温とか湿度によって影響を受けやすいので、発酵のヨーグルト系が広がって油分分離系と別れていく、保存食としてのチーズや、モンゴル方面でみられる乳酒など、欧州のチーズだけは熟成という文化が育って体系が変わっていく感じみたいっすね。

    日本人はあれだけど、人はミルクなしでは生きていけなかったのではないかと思えるほどはるか昔からミルクに依存してたということでしょうか。
    東南アジアもミルク文化あんまりないみたいですね。

    紀元前7000年ですよ。恐るべしミルク。
    ミルクは突きつめれば血ですからね。ミルクは生命ですね。

    たいへん面白かったです。

  • 良い意味で期待を裏切られた一冊。ミルクの加工の伝播とその歴史を豊富なフィールドワークから分析する。伝播の過程の論理も分かり易く、なぜ?という点にきちんと応えているのも良。

  • ミルクは生活に欠かせない飲み物になっています。そんなミルクと人との付き合いは約1万年前にさかのぼります。そもそもミルクは母親が子どもの成長のために与えるもの。その動物のミルクを食料とするようになったのは、いつどこでなのでしょう?ミルクの歴史をたどってみては?

  • ミルク(牛乳だけではないから)と人類の付き合いを、数千年という時間と、アジアから中東、ヨーロッパという広がりの中で追いかける。モンゴルや中東の放牧民と付き合って研究してきたらしい。ミルクの研究者、と名乗ったらきっと面白がられたことだろう。どこに行っても、現地の人と同じ目線でミルクの来し方行末を語る姿勢が爽やかだ。
    考えてみると、始めて牛や羊のミルクを横取りして飲むことを思いついた人や、ためてあった牛乳が自然にヨーグルトになったことに気づいた人は、きっとずいぶん舞い上がったことだろう。それは確かに、人類の偉大な発明の一つだったと思う。
    若干総花的な印象はある。時間と距離のスケールが大きすぎて、もう少しここ読みたい、と思ったところで終わってしまう。ヨーロッパのチーズ文化については、それだけでゆうに一冊になるんだろうと思う。

    色々なことを知るのは面白い。

  • 帯広畜産大学の歌って踊れる(笑)文化人類学者・平田先生の子供向け…と油断させておいて、大人も専門家も満足できる充実した内容のご著書。

    氷河期が終わった約1万年前.農耕や家畜飼育が始まり,やがて家畜のミルクを主な食料とする,牧畜という生活様式が西アジアで始まった.ミルクを保存食とする工夫から,ヨーグルトやチーズ,バターなど乳製品も生まれた.ユーラシア各地に牧畜民をたずね歩く人類学者が,若い読者を牧畜と乳文化の雄大な歴史へと案内する.(岩波書店案内文より)

    次会ったら数十年後の古書価値を見込んでいるのでサインして下さい。と言ったら、下げるかもよー下げちゃうよー。と返して下さる(笑)気さくなお人柄が文章にも表れていると思います。

全10件中 1 - 10件を表示

プロフィール

帯広畜産大学准教授

平田昌弘の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
朝井 リョウ
J・モーティマー...
佐藤 正午
有効な右矢印 無効な右矢印

人とミルクの1万年 (岩波ジュニア新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする