- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005008100
作品紹介・あらすじ
読むことを楽しむにはどんな方法がある?魅力的な文章を書くにはどうしたらいい?その両面から文学の面白さ、深さを構造的に探っていく。太宰治をはじめ多種多様な文学作品をテキストにしながら、読むコツ、書くコツ、味わうコツを具体的に指南する。「文学大好き!」な現役の中学・高校生を対象にした「文学講義」をまとめた一冊。
感想・レビュー・書評
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文学の楽しみ方を教えてくれる本。もちろんこの本に書いてある通りに楽しむ必要もない。
文学を読むことに迷ったときの助け舟として読むのにちょうどよい。
紹介されている本がとても気になるので次はそこから本を読んで見ようと思う。 -
本当なら聴けなかった貴重な公演を、このような本を通して聴くことができるのはありがたい。
しかも耳から入ると聞き逃すこともあるが、書き記されたものなら何度でも読み返せる。
中村先生、渋渋の学生さんたち、ありがとう。
本書により本を読むときに比較することの面白さ、重要さを理解できた。
たとえ面白くなかった本でも、他の本と比べることで得るものはあるという。
一冊の小説、一つの文の中にも比べるものはあり、ただ慌ててストーリーを追うだけではなく味わうのが醍醐味なのだなあ。
その味わい方がたくさん書かれていて、とてもためになった。
あと、恋愛小説を政治に見立てるのが目から鱗で、そんなふうに考えたことがなかったので新鮮だった。
言われるとなるほどと思うことでも、教えられなければ全く発見できないこともあるから専門家の話は面白い。 -
英米文学者(大東文化大教授)で小説家でもある著者が、中高一貫校の生徒たちを相手に行った「文学講義」をまとめた本。文学の味わい方から小説の書き方まで、文学をめぐる楽しみの勘所を駆け足で講義するものだ。
ジュニア新書とはいえ、内容はなかなか高度で、大人の文学好きの鑑賞にも十分堪える。
むしろ、「こんな話がいまどきの中学生・高校生に理解できたのだろうか?」と心配になるくらい。大学の教養課程の講義であってもおかしくない。著者は聴衆を子ども扱いしていないのだ。
まあ、難関校(渋谷教育学園渋谷中学・高校)の優秀な生徒たちが相手だから、これでいいのか。
印象に残った一節を引く。
《心に残る比喩に出会う目的で、小説を読んでいくことだってありえます。興味をひかれる比喩に出会ったらノートに書き写す。一冊が埋まったら、その「引用集」はみなさんにとって、世界でたった一冊しかない珠玉の名文選集になるかもしれません。》
《小説を書いていると、必ず何回かは“弱気”になるんです。登場人物に言わせた台詞が、ちゃんと意味が伝わっているかなと不安を覚えて、説明的な一文を加えたり、場合によっては、作品のテーマらしきことを記してしまうことがあります。(中略)ところが、なぜか批評ではそういう弱気になった箇所こそが引用されます。抽象度の上がった、まとめのような表現はよく引用されます。(中略)
ですから、読んでいて作品が自らを説明しているような、わかりやすいと感じられる表現は要注意です。弱気になっているところかもしれないですから。それよりは、言葉が混沌と渦巻いて、いっきょに意味が浮上しない、なにやら濃密な空気が漂うところが、小説のもっとも味わい深いところなのです。》 -
2021.2.23 読了
作家視点の文学論を生徒のように体感できる貴重な本であった。ダブル・ビジョンの視点は朧げながら意識していたものの言語化されていなかった部分が明瞭になった感覚を受けた。記述の面からも文学の深みを追求したいと思えた。 -
「富士には、月見草がよく似合う」の一文に凝縮されるような、ダブル・ビジョンを探し出すのが物語の面白さ。
この内容は、スケザネさんの物語を楽しむカギの一つで出てきたことと同じかなと受け取った。 -
読書中にこの書き方カッコいいなと思うこともあれば、冷めるなあと思うこともあります。小説を学問として見ず、感性に合う合わないで判断していた節がありますが、本著を読んで振り返れば、カッコいいと思った箇所は本書で説明されている「二項式」でした。冷めた箇所は「幻想性にあふれた小説こそ、具体性との照合は大切」の言葉に反したものだったと思います。
趣味としての読書なので、読んでいる時の気分が一番大事と思いながらも「この本なんか最高にいい」の理由が説明できる、学問的視点を知れました。 -
刊行日 2015/07/22
「読むことを楽しむにはどんな方法があるの? 魅力的な文章を書くにはどうしたらいいんだろう? その両面から文学の面白さ,深さを構造的に探っていく.太宰治をはじめ多様な文学作品をテキストに読むコツ,書くコツ,味わうコツを独特の視点で指南する.渋谷教育学園渋谷中学・高校での「文学講義」をまとめた一冊.」
1,文学の楽しさはどこにあるのか―二つのものを結びつける力
開演の挨拶(生徒代表)/講演開始/文学は実生活で役に立たない?/組み換え,再編成,関係の場―私の仕事から/なぜ富士には月見草が似合うのか/ダブル・ヴィジョンがイメージを喚起させる/ファンタジーの二項式とは何か/物語は二項式からはじまる/《電灯》と《靴》が共存する物語とは?/《赤ずきん》と《ヘリコプター》から何が生まれるのか/文学作品に見る取り合わせの妙/こんな批評用語がある/比喩の効果も「二項式」/書くことへのステップ―比喩ノート作り
2,文学のいとなみ―読むこと・書くこと
すべての本は役に立つ/必読書というもの―古典の新鮮さ/自分だけの「名作」を見つける/書評を利用し,ファイルを作る/恋愛小説が苦手な人がいる/翻訳をめぐって/小説のもつ凄みを知る/深く読むほど,読むことの中断が起こる/書くことも読むことの一方法/説明過多ということ/比喩の魅力と難しさ/小説のアイディアはどこからくるのか/書き出しのこと,分量のこと,朝のシーンのこと/五感を刺戟する文章をめざす/文学的リアリティはどういうものか/終わりの挨拶
ブックリスト
あとがき