生物学の基礎はことわざにあり――カエルの子はカエル? トンビがタカを生む? (岩波ジュニア新書)

著者 :
  • 岩波書店
3.07
  • (2)
  • (3)
  • (5)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 60
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005008698

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • これはなかなか、面白い。

    小気味いい文章で、生物の生態について「ことわざ」をヒントに紐解いていきます。

    広げた瞬間「わっ、結構文字がある」と思うのですが、読み始めてみると一つのことわざや成句に対して紐解かれる生物に関する情報は、多すぎず少なすぎず、およそ1ページほどです。

    文章が非常にわかりやすく、リズム良いのでとても読みやすいです。一気に読む!という類のものではありませんが、ことわざの真偽を知りたい人、生き物雑学が好きな人にはおすすめ。

    それから、一般教養としての知識を得たい人にも良いかと思います。ことわざの意味がよく覚えられない人も、生き物の生態と共に読むとイメージが掴みやすくなる人もいるかもしれません。

  • 〇岩波ジュニア新書で「学校生活」を読む⑧

    杉本正信『生物学の基礎はことわざにあり』(岩波ジュニア新書、2020[第2刷])

    ・分 野:「学校生活」×「理科」
    ・目 次:
     まえがき
     第1章 犬は人につき、猫は家につく――動物の生態
     第2章 腹八分に医者いらず――健康と医療
     第3章 備えあれば憂いなし――体を守るしくみ
     第4章 諸行無常――老化とがん
     第5章 十人十色――生物多様性と生殖・性
     第6章 蛙の子は蛙――遺伝か環境か
     第7章 鶏が先か卵が先か――生命の誕生と進化
     あとがき

    ・総 評
     本書は、生物学の基礎知識を“ことわざ”をキーワードにして解説していくというユニークな本です。著者は、国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)など多くの研究所で免疫ウイルス学や細胞生物学を研究していた人物です。
     これまで皆さんが覚えてきた“ことわざ”を振り返ってみると、生物に関するものが意外に多いことに気付くでしょう。それは、昔から多くの人たちが生命という神秘に接する中で、様々な興味と疑問を抱いてきた結果だと言います。本書ではたくさんの“ことわざ”が取り上げられていますが、その中でも面白いと思ったものを以下の3点でまとめます。

    【POINT①】「腸の煮え返る」――現代科学を先取りした、先人たちの知恵
     激しい怒りを抑えられない様子を「腸の煮え返る」と言います。ここで疑問なのが、なぜ「腸」なのでしょうか?実は、ある海外の研究では「脳に存在しているセロトニンという物質は腸にも存在し、しかも体内のセロトニンの九五%が小腸の粘膜にあるクローム親和性細胞にある」と報告されています。即ち、腸は脳と深い関係性をもつ、いわば「第二の脳」とも呼べる存在だと言います。もちろん、この“ことわざ”が登場した当時は、こうした知識を持つ人はいなかったはずです。先人たちは、日常の経験と知恵から、現代科学がようやく明らかにした成果を“先取り”していたと言えるでしょう。

    【POINT②】「攻撃は最大の防御」――なぜ、エイズウイルスは根絶できないのか?
     人類は様々なウイルスの脅威にさらされていますが、中でも「エイズウイルス」は強力です。このウイルスが厄介なのは「攻撃は最大の防御」を実践していることです。即ち、エイズウイルスが侵入すると、ウイルスを撃退する免疫システムの“主役”を担う「ヘルパーT細胞」を真っ先に攻撃します。いわば、敵の軍隊の中枢を真っ先につぶすことで、自らの生き残りを図っているのです。しかも、このウイルスは不安定で容易に変異を起こすため、有効なワクチンを開発することが非常に難しいと言います。このように、“ことわざ”でイメージをつかむことで、難解なウイルスの仕組みも理解できるのではないでしょうか。

    【POINT③】「鶏が先か卵が先か」――“ことわざ”を生物学的に考える
     物事の因果関係や順序が分からない時に「鶏が先か卵が先か」という表現を用います。ただ、この“ことわざ”は、まさに「生命の誕生」を考える上で重要な問いかけとなります。生物学を専門とする著者の見解では、地球上における最初の生命体は「自己増殖が可能な分子」から成り立っていたと言います。こうした単細胞生物が多細胞生物への進化する中で、やがて有性生殖をおこなう生物が誕生し、その受精卵から新たな個体が生まれることになります。即ち、生物学的な視点から見れば「卵より鶏が先」という結論になるそうです。このように“ことざわ”を理科の視点から分析してみるのも面白いのではないでしょうか。

     本書が面白いのは、国語で学習する“ことわざ”と理科で学習する“生物”を組み合わせたという点にあります。不思議な組み合わせにも見えますが、複雑な生物の仕組みを理解する上で“ことわざ”は分かりやすいイメージを与えてくれますし、生物学的な視点から“ことわざ”を考えることで、実は非常に理に適った表現であることが分かったりします。国語あるいは理科が好き!という人は、是非、手に取ってほしい一冊です。
    (1397字)

  • 生物学の観点から諺の本質を捉えるという面白いコンセプトではあった。

  • むかーし授業でやったことと、はたらく細胞で読んだを思い出しながら。でもちょいちょい難しいところもあって、そこは飛ばしました。抗原提示細胞とか、前線には出ないけど必要不可欠なモブって感じで好きです。

  • 興味がある人でなければ最後まで読むのは結構きついかもしれない。YA世代だと途中で投げ出す子がいそう。

  • ことわざが切り口になっているから文系にもとっつきやすい!当たり前のように理解してたことわざが生物学に裏打ちされてると思うと、なんとも味わい深くて言葉の厚みが増したように感じました

  • 企画の勝利。これ、大変だったと思うよ。一つ一つことわざと基礎的な生物の講義を結びつけるのは。
    執筆の際の苦労がよくわかる力作。良い企画だし、著者の力量も高い。

  • 著者は老化や免疫学を長く研究してきた研究者の方
    それらに関連した項目はかなり先端のことも詳しく
    しかもわかりやすく書かれています
    テロメアが短くなる構造など
    うっすらとTVなどで聞いていた話は
    こういう事か~とか 遺伝子とDNAの違いとか
    多分 高校生物学程度のお話かと思います

全16件中 1 - 10件を表示

杉本正信の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×