マッド・マネー: カジノ資本主義の現段階 (岩波現代文庫 学術 209)

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  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006002091

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  • カジノ資本主義の続編。グローバリゼーションが進み、ヘッジファンドや投資銀行など、巨大な資金有する金融アクターにより、国際金融システムが暴走している。この結果、将来、世界経済はどのようになってしまうのかを考えるための要素を与えてくれる本。各国の政治経済の特徴、歴史、国際金融機関、金融に関する犯罪など、興味深い項目が多かった。印象的な記述を記す・
    「もし世界経済が破綻して長期の不況に陥ることがあれば、迅速な対応の可能性もまた著しくそがれることになる。どの政府もそういった時期には、差し迫った国内の問題だけ焦点をあてることになりがちであることは、歴史がはっきり示しているからである」
    「95年の通貨危機の際に暗躍したヘッジファンドに対し、G7諸国はその危険を知りつつ何ら規制をしなかった。それは、市場とその背後にあって現状維持を望む巨大な既得権の方が、それを規制する政府の能力を凌駕してしまったというにすぎない」
    「社会科学の一分野としての国際関係論の研究に多少なりとも意味があるとすれば、それは国家行動の将来予測がいかに困難か、研究者に対して教えていることにある」
    「海外で活躍する企業は本国政府にあまり依存しなくなる。いずれ彼らは企業の意思決定において独立の精神を宿すようになり、これまで以上に国益を後回しにして企業の存続を第一に考えるようになるだろう」
    「(預金がタックスヘイブンに逃避することについて)はるかに深刻な問題は、第一に、政府税収の大規模な漏出によって、増大する行政費用や福祉費用をまかなうことがすでに難しくなっていることである。そして第二に、タックスヘイブンの存在が公金横領―腐敗した政治化が対外援助の供与国や債権者、国有企業から得た公金を着服すること-の大っぴらな誘因になっていることである」
    「タックスヘイブンを利用して国民の金を盗み取った国家の元首については、多くの者がリストに名を連ねる。イランの国王は、そのような行為が初めて発覚したうちのひとりだった。彼が権力の座から転落したとき、本来イラン民衆に帰属したはずの資金や不動産を、彼の家族がアメリカや欧州で運用していることがわかった。フィリピンのマルコス大統領と妻であるイメルダ・マルコスは、数百万ドル以上を所有していると判明した。ザイールのモブツ大統領、ケニアのアラプ・モイ、中央アフリカ共和国のボカッサ、イラクのサダム・フセインもまた、公金を盗んだ大泥棒たちである。インドネシアのスハルト一族はこれらほとんどの者をしのぎ、大統領の地位に長年留まることによって、膨大な数の企業と国家独占企業を所有してきた」
    「ピーター・バウアーは、援助は社会的、政治的な堕落を招くだけでなく、経済的にも逆効果だと長年論じている」

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