本当に生きるための哲学 (岩波現代文庫 社会 93)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006030933

作品紹介・あらすじ

「本当に生きる」ということを、幸福とも言い換えたギリシアの哲学者たち。その言葉と生き方を紹介しながら、死とは、私の存在とは、自由とは何かについて思索をめぐらせる。日常の生活の場面をおりまぜ語るその語り口は、ギリシアの哲人たちが対話により知の探求を行なったように、対話への扉をひらくメッセージともいえる。

感想・レビュー・書評

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  • 意識しているにしろ、いないにしろ、どんな決定でも、自分の決定でない決定を、自分に下すことはできない。
    そして、私達のすべての決定は、過去のすべての訓練の集積の上に下されるものである。

    もっとも、ここでの選択はここだけの話ですむものではなく、未来に繋がっているものだ。いつの決断でも私の判断は、私の生きているかぎり、どういう形でにしろ、私に影響を及ぼす。そうだとすれば、この決断が、私の未来に対しての望みを本当に実現するものなのかどうかということを、よほどよく考えておかなくてはならない。だから、間違った選択の可能性はできればゼロにしたい。
    生きていく中で決断は瞬時に下さなければならないことのほうが多い。
     だから、その一瞬を成功させるために、何が問題になるか分からない、その一瞬を迎える以前に、その一瞬のために、長い準備期間を過ごしているのだと覚悟する必要がある。
     「普段」は準備のためにあるのだ。いざというときに、正しく、堂々と決断できるように、自分一人でなしに、他人ともディアレゲスタイ(対話)しておこう、間接的な会話である読書もしておこう。
     それが、迂回して厚みをつけておくことだ。

     哲学は効率を無視して迂回を楽しむことだ。迂回をすることによって、少しでも心に隙間を開けて、余裕を持たせられればいいなあ、という、ほんの謙虚な学問だ。

     また、再読したい、と思った。もう少し色々と考えてからまた読みたい。

  • 本当に生きるとは、本当に自分は何がしたいのかをわかるための、日常に突然来る魔が差しとか閃きといった普段からは飛躍した行動(本当の自分の望み)を辛抱づよく待つための、また、瞬間に善い決定をするために、他人と意見交換したり、読書したりして、よく準備しておこうということだった!

  • 大学での講義をまとめた本。
    たぶん哲学科向けじゃなくて一般教養の講義だと思うんで、難しく構えなくても読めます。
    猫大好きな先生です。『ソクラテスになった猫』も読んでみたいなあ。

  • 10.10.9 落合氏蔵書

  • 哲学

  • 学習院大学の講座講演をもとに書かれており、会話調で文体は分かりやすい。ソクラテスを中心に哲学の歴史も説かれ、有益である。本題の「本当に生きるため」にどうすればよいのかの問いに関しては、簡単ではない。ソクラテスを例にとって、本当の”自分が望むとおりに生きる”ことが大切だと説く。しかし、人は一人でいると、本当の自分の望みを間違えていても気づかない。周囲の人たちに間違いを気づかせてもらう”対話(ディアレゲスタイ)”と間接的対話である”読書”が大切である。名誉やお金の欲求も自分の欲求だが、後のことまで見通せる知の欲求が次元が高い。その高次の欲求をもとにした日々の判断・選択の蓄積が大事である。加えてそれを超える飛躍が生まれると、生きることの高い実感が得られる。という感じだろうか。

  • 左近司祥子 『本当に生きるための哲学』読了。本書は「哲学の勉強」ではなく、「哲学する」っていうことはどういうことなのかを、語り口調(大学での講義の収録)で平易に教えてくれます。とくにひたすらソクラテスの生き方に収斂されてます。結構読みやすい故、個人的に、他の哲学入門でもいいかな。

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著者プロフィール

左近司祥子(さこんじ・さちこ)  一九三八年東京生まれ。東京大学文学部哲学科卒、同大学博士課程満期中退。東京大学助手、学習院大学文学部哲学科教授を経て、現在、学習院大学文学部哲学科名誉教授。専門はギリシャ哲学。主な著書に、『哲学のことば』(岩波ジュニア新書))『本当に生きるための哲学』(岩波現代文庫)『哲学するネコ』(小学館文庫)『謎の哲学者ピュタゴラス』(講談社選書メチエ)編著に『西洋哲学の10冊』(岩波ジュニア新書)その他、訳書など多数。

「2012年 『なぜねこは幸せに見えるの?─子どものための哲学のおはなし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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