李の花は散っても

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022518170

作品紹介・あらすじ

かつて後の昭和天皇の最有力妃候補と言われながら、自身の李王世子・李垠との婚約を新聞の紙面で初めて知り、梨本宮方子は頽(くずお)れた――皇族でありながら政策によって李王朝に嫁いだ李方子王妃の数奇な運命を縦糸に、また方子を半島から来た革命家と恋に落ち社会から転落していく女性・マサを横糸に、戦前・戦中・戦後の日本と朝鮮半島を舞台に描く、著者渾身の力作。

感想・レビュー・書評

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  • 「李の花は散っても」深沢潮著/朝日新聞出版|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/321610

    西岡悠妃 Nishioka Yuhi(@yuhi_nishioka) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/yuhi_nishioka/

    朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:李の花は散っても
    https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=24137

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      <著者は語る>歴史に隠れた哀歓 『李(すもも)の花は散っても』 作家・深沢潮さん(56):東京新聞 TOKYO Web
      https://w...
      <著者は語る>歴史に隠れた哀歓 『李(すもも)の花は散っても』 作家・深沢潮さん(56):東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tokyo-np.co.jp/article/254354
      2023/06/16
  • 戦前戦後の辛い時代、自分の知識不足を改めて突きつけられた、日朝関係。

  • 日本統治下の朝鮮、李王家に嫁いだ皇族の方子と、日本で深く傷つき、行き詰まって朝鮮に渡ったマサ。
    同じ年に生まれた二人の日本人女性の視点から描かれた物語。
    文章はとても読みやすいけれど、辛い。辛い…。
    でも現実はもっともっと辛いものだったろう…。
    日本が朝鮮に何をしてきたかを一端でも理解するためにも良い作品。

  • 「時代が」とは言え、それでは済まされない事実がある。
    「そう言う時代だった」かも知れないが、「日本だけじゃあ無い」かも知れないが、それでも赦せない事実が、許してはいけない事実がある。そして、忘れてはいけない事実でもある。
    隣国の朝鮮人に、中国人に、他のアジア人に行った「差別、迫害、暴行、惨殺」。
    それだけでなく、同じ日本人に対しても「社会主義者」や「共産主義者」そして「自由主義者」にさえも「アカ」と言うレッテルを張って行った「拷問」とそれに伴う「殺害」。
    第2次世界大戦が終結して、もうすぐ80年となり、日本ではこれ等の事実が歴史の一部として近代史、現代史の中に埋もれている。
    しかし、今でも世界には先進国でさえ「人種差別」があり、紛争地域では「民族差別、迫害、暴行、そして惨殺」が日常的に行われている。
    この小説のように戦前、戦中の歴史が書かれている本を読む時、改めてそう言う事実があったことを思い返してみようと思う。今、多くの日本人の生まれる前の出来事とは言え、僅か120~130年くらい前から第2次世界大戦終戦までの、長い人間の歴史から見れば、比較的新しく短い間の出来事なのだから。

  • フィクションだとしても史実を元に描かれているのだから、こんな人がいたのだととても立体的に心に刻まれた。

  • 最後の朝鮮王の妻の方子の物語。

    林真理子の「李王家の縁談」がタイトルとは違い、方子の母の伊都子視点の物語だったのに対して、本作は方子視点であるところはよかったものの、民間視点の物語として「マサ」の話を交互に挟み込んだため、どっちつかずの物語になってしまった感じでもったいなかった。
    方子とマサの話は無理に一つの小説にせず、別々の物語若しくは方子の方を正編、マサの方を民間視点での補完続編みたいにしておけばもっとまとまりがよかったと思いました。

  • 戦前・戦中・戦後の日本と朝鮮半島を舞台に、皇族から李王家に政略で嫁いだ「王朝最後の皇太子妃」李方子と朝鮮半島から来た独立運動家と恋に落ちた「根なし草」の女・マサの2人の女性の生涯を描く長編小説。
    まさに大河小説という感じで、主人公2人の愛を貫いた壮絶な人生に思いをいたし、読み終えた後の余韻がすごかった。
    これはあくまで小説であり、史実そのものではないが、戦前・戦中・戦後の日本と朝鮮半島を巡る歴史のリアルをかなり忠実に映し出しているように感じた。

  •  本作品は、時代背景として元号では大正時代、西暦では1910年に朝鮮併合を行ったあとの日本と朝鮮の歴史について世界史を俯瞰しつつ2人の女性の生涯を丁寧に描く。一人の女性は、朝鮮王朝に嫁いだ日本の皇族の方子。日朝融和の象徴としての政略結婚に五里霧中する気持ちの揺れ、何とか夫である李垠を支え、子孫繁栄と家族の安寧を願う生活を丁寧に描写する。一方、もう一人に生活困窮した日本人の少女マサは、基督教信者で朝鮮独立運動を続け、厳しい拷問にも耐えながらも祖国の独立運動に身を投じる男性に恋心を寄せ、夫婦になる。世情や日常生活を丁寧に描きつつ、忍び寄る軍靴、そして帝国日本の敗戦による占領政策により、日本国内で没落していく垠と方子は一子の成長に一縷の望みを託し、生きがいを見いだそうとする。一方のマサは、日本人であることをひた隠しにしながら朝鮮で生き続ける決意を固め、帰らぬ夫を待ち続ける。2人の女性の全く異なる境遇が、最後に一つの線、そして縁としてつながる様は、さすがに著者の真骨頂と言えるだろう。

  • 二人の人物を描いたことで、面白みが増した。庶民の暮らし、辛い…

    最後、韓国で夫婦二人で幸せになってたかと思ってたけど、ほぼ意識のないまま帰国したんだね。方子さまは、自分で幸せの道をひらいた人なんだ。

  • 戦前、大正の時代のこと、皇族である梨本宮家に生まれた方子が、朝鮮王家の李王家の妃として政略結婚され、その一生をまっとうする物語。そして、同時に、朝鮮半島から来た革命家の男とともに韓国に渡り朝鮮人として生き抜くマサ、二人の物語が交互に語られ、最後にはともに生きることになる。方子は史実をもとにした展開で、マサの方はフィクションか?
    どちらも、今の時代には考えられない壮絶な体験。ただ、どんな苦労があっても、信念を持って生きれば、悔いはない。朝鮮併合のための政略結婚として何人かの皇族が政略結婚させられ、戦後に離婚となった例もあるという。夫婦関係も心がけ次第、気の持ち方次第。自分の人生をどう生きるか、に尽きる。
    林真理子さんの「李王家の縁談」は、方子の母、伊津子の視点で描かれたもの。伊津子さんの描かれ方は異なる。本書はマサが描かれたことで重層的ではあるけれど、李王家の縁談の方が圧倒的におもしろい。

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著者プロフィール

東京都生まれ。2012年「金江のおばさん」で第十一回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。著書に受賞作を含む『ハンサラン 愛する人びと』(文庫版『縁を結うひと』)『ひとかどの父へ』『緑と赤』『伴侶の偏差値』『ランチに行きましょう』『あいまい生活』『海を抱いて月に眠る』などがある。

「2022年 『わたしのアグアをさがして』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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