高群逸枝 (朝日選書 291)

  • 朝日新聞出版
4.33
  • (2)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 7
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022593917

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 高群逸枝の評伝です。昭和5年までをあつかった前半は堀場清子が、後半は鹿野政直が執筆しています。

    堀場が執筆を担当している前半では、高群の夫であり彼女の仕事の協力者であった橋本憲三への取材などを通して、しばしばケレン味の強いしかたで紹介されることのある高群の前半生をたどりながら、彼女の内面にせまろうとしています。

    鹿野が執筆を担当している後半では、「民間学者」という鹿野の採用する枠組みのなかで高群の業績を検討し、とくに『母系制の研究』や『招婿婚の研究』などで地道な歴史的研究を通じて価値観の転換をおこなった彼女の仕事の意義を、柳田國男や津田左右吉らとの関係についても触れつつ、明らかにしています。

    フェミニズムないし女性学の文脈ではその否定的側面に焦点があてられがちな高群の思想を「新国学」という観点から照明する本書のスタンスは興味深く感じました。

  • 読了。高群逸枝というそのひとの一生を追った感にあふれる。

    高群の一生とその研究を、およそ手に入れうる限りの資料と夫橋本憲三の証言等に基づいて辿った一冊。高群の性格や方向性をよくとらえており、とても読みごたえのある、とはいえ読みやすい一冊である。

    書き手の考察があまり偏っておらず、取り上げる本も、高群の残した膨大な研究から詩まですべてにわたっておりながら、よくまとめてあり、また高群の心情までをも想像するに足る当時の状況描写が、実地調査の内容も踏まえながらとらえられている。
    また、論争の相手や高群が参照した文献なども細かく掲載されており、高群研究の一番簡単な索引書としても有益と思う。

    惜しむらくは、ここで引かれている書物の多くが今日ではすでに入手が困難になっていることであり、高群の研究自体も今日闇に消え去ろうとしていることであろう。民間研究者であるが参照した資料はアカデミーのそれとまったく遜色なく、内容の充実を見ればそれがどれだけ正当なものであり、価値あるものかわかろうというものであるが、研究が否応なく持つ政治性、社会性をかんがみれば、こんにちこの書を手にした者がおり、これからもいるだろうということに望みを託さねばならない。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

鹿野政直(かの・まさなお)
1931年大阪府生れ。早稲田大学文学部卒業。日本近現代思想史専攻。早稲田大学名誉教授。『鹿野政直思想史論集』全七巻(岩波書店、2007-08年)など。

「2020年 『八重洋一郎を辿る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鹿野政直の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×