- Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022609298
感想・レビュー・書評
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西東三鬼は本名・斎藤敬直、今から111年前の1900年5月15日に岡山県で生まれて歯科医師をしながら俳人だった人です。
この本には、序文に五木寛之の「ドストエフスキ的人物の遠景」と題された刺激的な一文があり、私がもっともさかんに俳句熱にうなされていた中2のときに読んで、多大に影響されたものでした。
この時期に同じくして、寺山修司や秋元不死男の俳句と短歌にも触れる機会を得たこともありますが、それまで漠然と、おばあさんになっても短歌や俳句をはじめとする詩歌を相手に生きていくのも案外悪くないんじゃないか、などと思っていた私は、詩人や俳人歌人には申し訳ありませんが、詩歌じゃ何も始まらないし何も変わらないんじゃないかと思いはじめて、つまり短絡的に言ってしまえば、いわゆる短詩形文学の表現の限界とでもいいますか、まあそういうことを生意気にも思ってしまって、まだその分野で大成したわけでもないのに、あっさりと意気消沈して熱が冷めてしまったのでした。
回想はそれくらいにして、ともかくこの西東三鬼は衝撃的でした。
それまで、形式ばらない私でさえ本格的に俳句をやるには、どこかの秘密結社じゃなかった俳句結社に入って誰かの弟子にならなきゃなんないし、一所懸命に歳時記なるものと首っ引きになって、あらゆる季語を熟知することに努めていたのに、彼はこのハードルをいとも簡単に蹴飛ばして、どんな師弟関係もなしにすばらしい俳句を作り、しかもなんとその俳句は見事に季語を無視したもので、さすがに自由律といって五・七・五まで崩すということは全面的にはしていませんが、いずれにしろ個性的な俳句というのではなく、誰も真似のできない西東三鬼の俳句を確立したことは間違いないと思います。
彼の最高の俳句は、なんといっても例の有名な一句です。
水枕ガバリと寒い海がある詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
芭蕉よりひねり、塚本邦雄より率直に表現した、現代俳句の礎。がばりなどの擬態語で遠くまで連れていってくれる、異端ながらも万人納得のクオリティー。後半収録の随筆「神戸」の質も見落としてはいけない。俳号はもはや、アサヒスーパードライ級の奇蹟の配合。
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Blog"蚕の桑"<a href="http://blogs.dion.ne.jp/calimero/archives/1450477.html " target="_blank">2005-07-11(蚕)</a>
NHKドラマ人間模様「冬の桃」(1977年)で西東三鬼を知った。このドラマ、テレビドラマというより「芝居」と呼びたくなる、舞台劇をみるような雰囲気を持っていた。異色だった。見入ってしまった。<a href="http://blogs.dion.ne.jp/calimero/archives/1450477.html " target="_blank">...続きを読む</a> -
【本書より】
春夕べあまたのびつこ跳ねゆけり
冬の園女の指を血つたいたり
──三鬼