カラシニコフ II (朝日文庫 ま 16-4)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022615756

作品紹介・あらすじ

南米コロンビア・コカインの町メデジン、アメリカ・ケンタッキー州のライフル業者、パキスタン北西部・銃密造の村ダラをめぐりながら、銃と麻薬の関係を探り、密輸のコネクションをたどる。世界各地に広がるカラシニコフを追いながら国家とは何か考える、大好評ルポ第2弾。

感想・レビュー・書評

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  • 1を読んだので、こちらも引き続き。
    読み物としては、1の方が面白かったかなと思います。1の方が具体的な人々が多く出てくるので。

    途中、盛り上がりに欠けるところもあり、ほとんど文字を追ってるだけ、みたいな状態になってしまいました・・・。
    そんな中でも、印象に残ったのは、「AK密造の村」と「拡散する国家」。

    AK密造の村は、文字通り、AKのコピーを密造しまくっている村のことなんですが、そういうことが村ぐるみで成り立っちゃうのがすごい。

    拡散する国家の章を読んで、ヨーロッパやアメリカは世界中を引っ掻き回してるんだなぁとしみじみ思いました。
    まぁ、悪名高い日本も、アジアを引っ掻き回していると言われたら反論できませんけど・・・(^^;;

    引っ掻き回しておいて、自分たちは先進国で多くの場合、安全の欲求は満たされて生きていられるということについて、改めて考えさせられました。


    そして、1,2巻を通して出てくるカラシニコフ氏。氏の好々爺ぶりがまたニクい。
    このおじいちゃんは、こんな世界を想像していなかったんだろうなぁ。

    読みながら、一度も手にとったことのないカラシニコフ銃の重みと、レバーをスライドしたときのガチャリという金属音が常に頭の中をよぎっていました。

  • 第I巻がアフリカを中心にした取材を元にまとめられているのに対して、この第II巻はアフリカ以外で起きている「カラシニコフ」を巡る「事例」が取り上げられています。

    具体的には、南米コロンビア、パキスタン、中国の武器商人、イラク、などです。銃の裏にはコカインなり石油なりの大きな利権があることが分かります。

    第I巻の方が迫力がありますが、ベテラン新聞記者が書いたものだけあって、読みやすくきちんと事実が伝わる文章と丁寧な取材は読む価値があると思わせます。

  • 「悪魔の銃」、自動小銃カラシニコフ(通称AK)とその周囲をめぐるルポ、第2弾です。

    アフリカを中心として描いた第1弾とは場所を変え、今度は南北アメリカと、アフガンなどのアジア編。南アメリカはご存じのとおり、「政府VS反政府ゲリラ」の構図で政情が不安定な国家が多い。それもコカインマネーが絡んですさまじいことになっているのは国際社会でも常識です。そこにAKと、AKに群がる人間がおびただしく存在します。

    AKに関わる大半は「(ゲリラ、私兵を含めて)兵隊しか職がないし、兵隊になりゃ飢えないから」という青少年です(結局、戦闘の弾除けに使われて最前線に立たされ、大半が命を落とす)。それに、純正品、コピー品を含めたAKが流入するルートも知ってしまえば、開いた口がふさがらない。国際的な著名人も飛び出すやら、もうスター・ウォーズじゃないけれど「フォースの暗黒面」を見ちゃった…ある程度知ってたはずなのに…と思わず下を向いてしまいます。アフガン、イラクもまたしかり。

    これでもか、これでもかとキビシすぎる現実を突きつけられてしまいますし、具体的にどうしたらこの状態が打開できるのかという方策も見えないような絶望的な現実ですが、これは知っておかなければならない現実だと思います。「国際的な仕事に就きたいです!」と夢を持っている約U-22のみなさん(そうじゃないみなさんも)、ぜひお読みになって、かつその夢に向かってください…と思います。

    解説は大御所、船戸与一さんの手になるもので、こちらも短編として読む価値大です。船戸さん、そんなとこまで行ってんのか!とちょっと驚き(笑)。2冊続けて読んで少しダウンしてしまっているのですが、それはそれで読書の働きでもあるので、この☆の数です。ありがとうございました。

  • ルポが好きで教授に勧められたタイトルを適当に選んだが、現在の研究テーマに被る部分があっていいタイミングで読めたと感じる。ただ読み方がそのテーマに偏ってしまったのはよくなかったな。
    必要に応じて使うだけの道具のひとつである銃。しかしカラシニコフは単なる銃の枠組みを超えてそれ自体が紛争や密売、貧困の象徴となってしまっている。またカラシニコフの移動経路を追って遡ると各国の外交関係や権力争いの構図もよりわかりやすい形で浮き上がってくる。
    サルトルの言葉「金持ちが戦争を起こし、貧乏人が死ぬ」を体言しているのがコロンビアとアメリカだろうな。当てはまる国は他にもあるだろうが事例を詳しく知らない。
    治安と銃と貧困の関連性においても、住民の言い分は正しい。先進国が適当な介入をするせいでその後の混乱はより根深いものになるし、新たな課題を生み出しかねない。略奪に怯える生活で安心して働けず貧困から抜け出せない。貧しいせいで教育を受けられず貧困の再生産が起き、国の経済状態はよくならない。それどころかテロや強奪などの犯罪対応で後処理に金が使われてしまうばかりだ。
    日本は犯罪が起きたら当たり前に警察が来て、病気をすれば救急車がすぐに駆け付け、医療を受けられるのが当然の権利だと勘違いしてるけど著者の言う通り世界的に見ればそんな夢のような国は少数だ。
    アメリカはその豊かささえ手放しつつあるけど、日本は民主化と資本主義に追従してそれらを放棄しないでもらいたい。でも、こんだけ原発問題が無視され続けメディアが腐敗してる国でそんなの望み薄か。

  • 昨年のパリ同時多発テロをはじめ、テロや紛争の現場で見ないことはないカラシニコフAK-47。いまから70年近くも前に開発された小さな大量破壊兵器は、いまだに多くの命を奪い続ける。

    誰もが扱える銃の開発は、特定の武民に争いが限定されていた過去を葬り、有象無象な戦いの時代をもたらす。革新的な発明だ。そうしたカラシニコフを取り巻く世界を詳細に描く。

    しかし、これまでの秩序を破壊し、紛争を招き、武器を供与し、DDRを行うという、欧米諸国によるマッチポンプにげんなりする。どうしたら、より良い状態に向かっていけるのだろうか。

  • 全てを銃(カラシニコフ)に帰するのはちょっと難しいかなという感じだが、色々ときちんと取材されている印象を受けた。

  • 1に引き続き、カラシニコフが設計したAKが世界にどう広がり、紛争、戦争に用いられているかを活写する優れたドキュメンタリー。

  • 私たち日本人の多くは「国家」という概念を違和感なく受け入れている。
    そこには同じような顔をして同じ言葉を話す人間が住んでいる。国家には「中央」があり、そこから「地方」を通じて「辺境」まで、色の濃淡の同心円でイメージされる。大和国家でいえば、色濃い円の中心が近畿にあり、そこから始まる同心円が地方に及び、やがて東北や九州まで端々まで行き渡る。そうした国家形成の過程を、私たちはほとんど当然のように理解してしまう。そして自分はその同心円の外ではなく、内部のどこかに位置すると思っている。
    しかしアフガニスタンは違う。同心円が三つも四つも、それ以上もあり、それぞれの円の中心が異なるのだ。そうした異質の同心円同士をひとくくりにして、国家を形成しようとしている。同心円の中心―国民意識の核―になるものがないかぎり、それは限りなく困難な作業なのである。p245

    【文庫本へのあとがき】p291
    アフガニスタン、イラクの「複数同心円国家群」。その混乱は収束の兆しさえありません。ただソマリランド共和国が、国際社会の認知がないにもかかわらず、まだ持ちこたえている。それがわずかな救いです。
    国家とはいったい何なのか。「国民に安全な生活すら提供できない国家」は、これからどうなっていくか。激しく揺れ動く状況を、これからも見つめていくつもりです。

  •  前巻がAKに焦点を当てたルポだとすれば、今回は、その広がりを記したもの。

     貧しさの中にAKの姿あり。それが悲惨なことだと言う言葉は、安全が約束されている日本にいる以上戯言にもならない。
     貧しさ故か、国家というものがうまくその機能を果たせないがために、人々はAKでそれを補う。彼らにとってそれは、生活の一部になっている。僕らが、子供の時から携帯電話を持っているのと同じように、そこにいる人たちは、子供の時からAKに慣れ親しんでいる。それの善し悪し云々よりもまず、そういった現状がある。
     それを、「あった」と言えるには、どうしたらいいのか。世界はまだまだ、問題だらけ。

  • Ⅱになったら南米の麻薬と反勢力組織、次はアジアと騒動を追うという銃の話しから逸脱しちゃった感が残念。途中から嫌な臭いを感じたと思ったらやっぱ朝日新聞だった。

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