木村伊兵衛傑作選+エッセイ 『僕とライカ』 (朝日文庫)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022619587

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  • 木村伊兵衛は、戦前から戦後の高度成長期まで活躍した写真家。
    本書は、その木村伊兵衛の写真と木村自身による解説、更には、木村の書いたエッセイを収載した文庫版である。この文庫本自体は、2019年の発行なので比較的新しいものであるが、木村の撮影した写真作品、および、本書収載のエッセイが書かれたのは随分古い。エッセイは、1950年代から1960年代にかけて書かれたものが中心、写真も同様である。
    本書収載の写真を見て、撮影された時代や場面を中心に楽しむわけであるが、しかし、写真は実際には撮影者の意思と技術の結晶である。どういう意思と技術をもって撮影したのかについて、木村伊兵衛自身が解説している作品がいくつか掲載されている。
    例えば、「マダムS(佐藤美子)」と題された写真がある。1952年の作品であるが、木村伊兵衛は、下記のようにそれを解説している。
    【引用】
    この写真で一番考えたのは手の扱いで、面長の顔に変化をつけようと苦労した。黒いユカタを無造作に着て化粧もしない。そして黒のところから長い顔が出ていて、そのままではなかなか写真にならないんだな。だからこいう手を扱ったわけだ。手がないと写真にならないし、アップを撮るしかない。しかしライティングとか、そういうものでごまかさないで、佐藤美子という人の美しさとか、人間とか、年増とか、そういうものを何とか出すことが大事だと思ったんだ。
    【引用終わり】

    また、1953年に秋田県の大曲で撮影した「市場にて」という作品については、下記のように解説している。
    【引用】
    一年の半分は雪に閉ざされている農村では、生活費を得るために、むしろを作っている。旧正月前の朝市で、自家製のむしろを売っている主婦を撮影した。美人で、黒いマントとビロウドの黄色と、黒のえり巻きのとり合わせが印象的であったのと、顔に表われている八の字のしわが、この人の生活の厳しさを物語っていた。初期のものより多少とも人間を写し出すことができたと思った。
    【引用終わり】

    これらの解説を読むと、木村伊兵衛にとっての人物写真とは、その人間そのものを如何に表現するか、というチャレンジであったことが分かる。そのために、被写体とタイミングと構図を選び、最適な技術を選択する。更には、撮影者自身が人間に対する理解を深めることが大事なことだと、他の場所で述べている。
    一枚の写真は企みと技巧に満ちているのだ。

  •  木村伊兵衛の代表的な写真が掲載されており、合わせて写真家としての人生や、写真を如何に撮るかを語ったエッセイも付されていて、お得感のある一冊である。

     ただ、機械としてのカメラには全く関心がなかったので、「ライカの名手」と呼ばれた彼が語るライカ論『II ライカについて』の内容がほとんど理解できなかったのが残念だった。

  • 1930年にライカを手にしてから戦前戦後を通じて多彩な分野で活躍した写真家 木村伊兵衛。自らの代表作品の解説と様々なエッセイ、対談を収録。未だに影響力のある写真家のエッセンスが味わえる。‬

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