権力にゆがむ専門知 専門家はどう統制されてきたのか (朝日選書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022631169

作品紹介・あらすじ

コロナ禍により、感染症対策をめぐる政治と専門家の関係がかつてないほど注目された。専門家(専門知)はいかなる思考と根拠のもとで政治に助言するのか。本書は、日本現代史を射程に、行政学の第一人者が考察する。1980年代の中曽根政権時代に「私的諮問機関」が濫設(らんせつ)された。法令に根拠をもたず要綱などで臨機応変に設置でき、政治権力にとっては使い勝手がよい。いまやそれは「有識者会議」「審議会」という言葉にかわり、第二次安倍政権以降、次々と設けられた。集団的自衛権を行使容認とする法体制を審議した安保法制懇談会をはじめ、教育再生実行会議、働き方改革実現会議、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議はその代表例である。政治・行政は、なぜ有識者(専門知)を取り込もうとするのか。期待するのは科学的助言か、政策を正当化するための世論動員か。政治と専門知のあり方について、占領期に遡り、GHQによる専門家の外部調達、吉田茂内閣で発足した経済安定本部、官庁エコノミストの活躍、旧財閥企業による原子力利用の調査研究をはじめとする原子力政策、池田勇人政権の国民所得倍増計画、財政学者・大内兵衛らによる社会保障制度審議会、「増税なき財政再建」を掲げた第二臨調での国鉄解体・分割民営化など「専門知の政治化」がパラレルに進行した1980年代から、介護保険、司法制度改革、学術会議会員任命拒否問題、新型コロナウイルス感染症対策といった最近の動向まで、特徴的なジャンルで考える。

感想・レビュー・書評

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  • 研究をするにはお金が必要で、金主には遠慮する、をやっちゃいけないと研究したい人に言う。のを求めるのも酷だ、といえるほど税金を出す側に余裕があるわけでもない。コンサルなんてここからはどう見えるんだろう。

  • 2020年9月の菅政権による学術会議に絡む任命拒否事件を発端として、学問・研究の自由、言論の自由への介入を窺っている政権のあり方を検証している著作だが、新型コロナウイルスに対する第二次安倍政権の杜撰なやり方、さらには有識者会議と称する 一見まともな施策が実は政権への忖度に終始してた実情を多くの事例であからさまにしている.専門知をないがしろにしていることをここまで明確にしている姿勢は素晴らしいと感じた.安倍政権が新自由主義の御旗のもとに現代社会を破壊してきたことを見ると、暗殺事件がある意味で救いの手を差し伸べてくれたのではないかとも考えている.

  • 2023/7/7
    かなり抑制的ではあるけれど専門家としての使命を放棄した御用学者や忖度官僚の問題について。
    現実には専門家・技術者・官僚だけではなく、政治家自身、それを取り巻くメディア(というに値しない者たちも多いが)の問題でもあるのだが、この数年間、ずっと不思議に思い、不快に感じたのはいったい彼らは何がしたいのだろうかという疑問だった。
    それが本書で解けたわけではないがその仕掛けは少し判ったような気がする。
    有識者会議や司法の不透明性などの問題は、先日読んだ「黒い海」の調査側の意図に通じるものを改めて感じた。
    『…「国家」を強調する政治家…にとっては「国家」あっての市民であり、市民の権利や自由のもとに「国家」…があることなど、思考の埒外にある…』
    そうだよなと思う反面、国家の事だって本当に考えているのかなとも感じてしまう。
    少なくともその取り巻きや太鼓持ち連中は金目当てや、サル山のボスの周りにいるという優越感?に浸りたいだけのような印象しか感じない。
    もしそれが組織の中でやむを得ないことであっても、その(自身が組織側にいる)状態が未来永劫続くことなどないのに、なぜ自身の尊厳を犠牲にしてしまうのだろうか…自身がプリゴジンにさせられてしまわない保証などどこにもないのに。
    赤木さんが特別に見える世界は異常でしかないと思うのだが。

  • 論点は面白いが、筆者が右寄りで、偏った意見が目立つ

  • 序章 学術会議任命拒否問題と専門知
    権力による専門知の統制
    人文・社会科学系分野の再編指示
    政治・行政と専門知の根源的問題
    1章 政権・官僚機構と専門知―敗戦後、専門知をどのように調達したのか
    官僚制と専門知の結合
    戦後経済復興と専門知
    2章 囲い込まれる専門知―第二臨調・国鉄解体・自民一党優位の政治戦略
    政治と行政による専門知の囲い込み
    政治・行政と専門知の「融合」
    政権による専門知の取り込みと専門知の迎合
    3章 原子力ムラ―「規制の虜」になったのはだれか
    専門知を核とした原子力ムラの「復活」
    だれが、原子力安全規制の主体なのか
    4章 新型コロナウイルス感染症対策―専門知は政治と対峙しているか
    5章 介護保険制度に同調した専門知―理論的考察の底の浅さ
    終章 政治と専門知の責任をいかに確率するか
    官僚機構が機能した近代化
    官僚機構と政治の「劣化」
    大学・大学院の「変容」と専門知
    科学的マインドをもった政治と自律した専門知に向けて
    6章 司法制度改革と専門知―「国民に開かれた司法」の顛末
    終章 政治と専門知の責任をいかに確立するか

  • 言いたいことは分かるが、著者も少し偏向している様に思います。

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著者プロフィール

千葉大学名誉教授

「2020年 『概説 日本の公共政策 第2版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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