道長ものがたり 「我が世の望月」とは何だったのか (朝日選書1039)
- 朝日新聞出版 (2023年12月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022631299
作品紹介・あらすじ
【大河ドラマ『光る君へ』が深く理解できる!】誰を恐れ、誰を愛したのか????最高権力者の知られざる素顔道長は、一家の末っ子だった。元は最高権力者に就く立場になかった彼に訪れたのは〈幸ひ〉と呼ばれた天運????。兄たちを襲った立て続けの死や政治的ライバルの自滅があったからこそ掴んだ頂点の座だった。だが死者や敗者、つまり他人の不幸を踏み台に極めた栄華ゆえ、道長はしばしば怨霊に取り憑かれ、病に伏した。読者は「怨霊」の存在に戸惑うかもしれないが、著者は「それを非科学的と嗤っては道長の心を覗けない」と釘をさす。では、はたして道長はどんな思いで生き、そして死んでいったのか。自身の手による『御堂関白記』や同時代の貴族による『小右記』『権記』など一級資料のほか、『紫式部日記』『枕草子』など女房たちの実録、道長の死後に成立した『栄花物語』『大鏡』など歴史物語もひもときながら、一人の人間の心の〈ものがたり〉を照らしていく。
感想・レビュー・書評
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「道長ものがたり」山本淳子著、朝日新聞出版、2023.12.25
307p ¥1,870 C0321 (2024.02.08読了)(2024.02.02借入)
歴史資料を引用しながら藤原道長の生涯をたどっています。
・貴族の日記
『御堂関白記』藤原道長
『小右記』藤原実資
『権記』藤原行成
・女房の実録
『枕草子』清少納言
『紫式部日記』紫式部
・歴史物語
『栄花物語』正編は、赤染衛門。続篇は、作者未詳
『大鏡』作者未詳
平安時代というのは、思いのほか歴史資料が残っているのは、驚きです。
歴史資料をどう読み解くかは、結構難しそうで、この本に書かれている読み方が唯一の湯見方とは、限らないというスタンスが必要かと思います。
とはいえ、かなり興味深く読むことができました。
歴史資料の引用には、丁寧な現代語訳が添えてあるので、助かりました。
【目次】
はじめに
第一章 超常的「幸ひ」の人・道長
第二章 道長は「棚から牡丹餅」か?
第三章 <疫>という僥倖
第四章 中関白家の自滅
第五章 栄華と恐怖
第六章 怨霊あらわる
第七章 『源氏物語』登場
第八章 産声
第九章 紫式部「御堂関白道長の妾?」
第十章 主張する女たち
第十一章 最後の闘い
第十二章 「我が世の望月」
第十三章 雲隠れ
あとがき
主要参考文献
『道長ものかたり』関連年表
●『枕草子』の成立について(141頁)
996年頃、第一次「枕草子」
内容は、「春は、あけぼの」等のエッセイ、「うつくしきもの」などの「ものづくし(リストアップ)」
定子の死後、定子の「思い出の記」を書いて拡散させた。
☆関連図書(既読)
「藤原道長」北山茂夫著、岩波新書、1970.09.21
「平安人物伝藤原道長(コミック版日本の歴史44)」静霞薫原作・中島健志作画、ポプラ社、2015.01.
「紫式部日記」紫式部著・山本淳子訳、角川ソフィア文庫、2009.04.25
「桃尻語訳 枕草子(上)」清少納言著・橋本治訳、河出書房新社、1987.08.31
「桃尻語訳 枕草子(中)」清少納言著・橋本治訳、河出書房新社、1988.12.20
「桃尻語訳 枕草子(下)」清少納言著・橋本治訳、河出書房新社、1995.06.30
「散華(上) 紫式部の生涯」杉本苑子著、中央公論社、1991.02.20
「散華(下) 紫式部の生涯」杉本苑子著、中央公論社、1991.02.20
(アマゾンより)
【大河ドラマ『光る君へ』が深く理解できる!】
誰を恐れ、誰を愛したのか––––
最高権力者の知られざる素顔
道長は、一家の末っ子だった。元は最高権力者に就く立場になかった彼に訪れたのは〈幸ひ〉と呼ばれた天運––––。兄たちを襲った立て続けの死や政治的ライバルの自滅があったからこそ掴んだ頂点の座だった。だが死者や敗者、つまり他人の不幸を踏み台に極めた栄華ゆえ、道長はしばしば怨霊に取り憑かれ、病に伏した。読者は「怨霊」の存在に戸惑うかもしれないが、著者は「それを非科学的と嗤っては道長の心を覗けない」と釘をさす。
では、はたして道長はどんな思いで生き、そして死んでいったのか。
自身の手による『御堂関白記』や同時代の貴族による『小右記』『権記』など一級資料のほか、『紫式部日記』『枕草子』など女房たちの実録、道長の死後に成立した『栄花物語』『大鏡』など歴史物語もひもときながら、一人の人間の心の〈ものがたり〉を照らしていく。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大河ドラマ『光る君へ』を見ていて平安時代のことをもっと知りたくなって手に取りました。
すごく分かりやすく読みやすいので、道長の人生を知るのに最適な本だと思います。
当たり前ですが、大河の藤原三兄弟と史実は全く違いますね。特に道兼は、実際は和歌が得意で風流な人物であったようなので、大河の暴力的な設定はちょっと可哀想だな…と思ったり。
定子は兄の道隆の娘で彰子は道長の娘だということも知らなかったので、勉強になりました(それぞれ清少納言と紫式部が家庭教師として付いていてライバル関係にあるということしか知らなかった)。定子は兄の娘でつまりは姪なのに道長が娘を中宮にするために虐めて邪険にしたというのは可哀想ですが、この時代親の身分が高くないとか親が死亡して有力な身内がいないことが如何に大変なことなのか、よく理解できました(それは貴族だけではなく天皇の息子も同様)。 -
山本さんの本は、本当に分かりやすく、当時の生活がよくわかる。
道長が権力を手にしながら、蹴散らしてきた敵の悪霊に苦しむ姿が、よくわかった。
ファミリーの結束が大事だと思った。 -
2024大河への助走⑨
倉本一宏先生の著作は何冊か読んだけど、本作は歴史物語の記述にもかなり踏み込んでいておもしろかった。ドラマで「心の鬼」が表現されるのか、楽しみ。 -
道長と式部が愛人関係って書かないと出版させてもらえないのかってくらいにどの本も書いてあるんだけど、この本は根拠として和歌のやり取りや式部集の詞書をあげている。男同士でも男女の恋愛風の歌を詠むし、歌集の詞書はかなり簡潔なのが一般的だから根拠としては弱い気がする。
それ以外は面白く読んだ。栄花物語を読みたくなってきた。