- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022731692
作品紹介・あらすじ
東大法学部長、最高裁判事を歴任し、93歳になった日本刑法の父は、反骨精神の塊だった。天皇機関説事件、二・二六事件を見届け、刑事訴訟法起草でGHQと渡り合い、最高裁判事として書いた少数意見は数知れず。憲法改正、死刑廃止論、裁判員制度批判から、昭和天皇のことども、三島由紀夫との交流まで。法学界の最重鎮が、52歳下の東大准教授と縦横に語る、ニッポンを元気にする反骨のススメ。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
『#反骨のコツ』
ほぼ日書評 Day586
評者が分別のついた頃には、既に学士会(旧帝大の横断卒業生組織)の理事長でいらした團藤重光氏の対談本。東大教授、最高裁判事等を歴任し、勲一等まで受けられた方が、「反骨」?…ということで手に取った。
反骨精神の基盤は、終盤で集中的に語られる「陽明学」。それをもって、GHQとも丁々発止しながら戦後法体系を整備していった。その観点からして、戦勝国からの押し付け法体系と卑下・自虐する必要は全くないのだと。
氏の論の根っこは「死刑廃止論」。個人的に100%それに賛同できない立場の評者としては、賛否両論で読んでしまう。のではあるが、やはり論理展開は緻密で、思わず頷ずかされることしきり。
天(神)が与えた命を、政のレベルで奪うことの是非は、更なる議論があるとして、死刑を執行しても、遺族には「虚しさ」しか残らない…というくだりには、若干の違和感が残る。実際にそうした立場に置かれたことがないので、推測するしかないが、遺族たちは、やはり「復讐」を求めるのではないだろうか。
前時代的とか、非人道的とかいう意見もあろうが、例えばDay636で紹介したような、様々な拷問刑を復活(鞭打ち等は今日も適用されることがあるようだが)させてみたらどうなるか?などという気にもなるものだ。
本書でも言及される「オウム」のトップも、体の肉を1枚1枚削がれていったならば、完全黙秘ではなく、あるいは何らかを語ったのではないかという妄想も起きようというものである。
https://amzn.to/3ffB3Bt -
団藤先生バンザイ本
-
読み進めていくことで
反骨
を公的機関で行った実例と心の中を見ることができる貴重な本です。
語り手がお年を召されてらっしゃるのと、私が会社員ということで法律家ではないため、登場人物の多くを知らないという点がありましたが、巻末に注釈があり助けていただきました。
おそらく著者両名の発案でしょうが、このような配慮に感謝申し上げたいです。 -
本の構成は「反骨精神」をベースに、団藤氏と伊東氏との対話という形をとり法律をめぐる諸問題についてあれやこれやと話を進めていく、というもの。
詳しくは述べないが大まかなテーマとしては死刑問題、改憲問題、裁判員制度の問題の三点に重きを置いて話が進められていきます。
団藤氏の死刑廃止論が他の死刑廃止論者とは比べ物にならないほどの思想的背景に基づいたものであることや、戦後の法律作成の現場で団藤氏が感じ取った「難しさ」、そして「反骨のコツ」とはなんたるか等実に様々な興味深い話が出てきました。
がしかし。
あまりに伊東氏の発言が長く、かつ回りくどいものになっていて全体として「伊東乾氏の思考回路を文字に表した本」になってしまっている感が否めません。
団藤氏の「主体性のある」論を読むのであれば、はっきり言って1章及び6~8章のみに目を通せば済むかと思います。
死刑問題については「死刑廃止論」を、理論的な話は「法学の基礎」や「刑法綱要総論・各論」を読むほうが数百倍自分の頭に入ってくるのですから。
そういった点から☆2としました。 -
作曲家・指揮者、科学者、作家でもある伊東先生が団藤先生にいろいろとインタビューし、死刑廃止論から、主体性理論から、裁判員裁判、陽明学、ポストモダン、カールポパー等々、まことに浩瀚な、知的好奇心を掻き立てられる対話篇になってます。それにしても、伊東先生って、どうしてこうまで博覧強記なんだ?
-
一方的に話す伊東氏に対して団藤重光氏がうなずくだけのような本ではあるが、所々団藤氏が面白いエピソードを語るところもよく。東条英機におごってもらった中華の話など。
-
折りしも、鳩山法務大臣の元で本年度が史上過去最多の死刑執行数を記録することが明らかになった今日、本書を手に取る。
死刑廃止論の泰斗、團藤重光先生と伊東氏の対談。
先生は従来から、人間の可謬性を基礎に、死刑廃止を理論付けてきた。その方向性は本書でも変わらないわけだが、「人は殺してはいけない。これはなんといってもそうなんです」―この素朴な感慨の裏に潜む、その強力な倫理の規定を共役可能な形に記述して欲しかった。私の勉強不足に起因するのかもしれないけど、その根拠付けのあたり少し消化不良の感。聞き手の知識のひけらかしに端を発する膨大な「放談」を削ってそこに紙幅を費やして欲しかった。
しかしそれにしても。我妻栄や美濃部達吉の元で法学を学び、カール・ポパーと友人で、三島由紀夫の恩師で…
これだけ見てもカラフルな「生きる昭和史」がその人柄を余すところなく存分に披露する談話はたいへんに味わい深かった。
誠に得がたい人である。
余談だが「『仮面の告白』。あれは私の刑訴法理論を文学化したものです」
なんて歴史的証言のような言葉が平然と語られていて。これは記憶に留めておこうなどと。(三島読んだことない私。『金閣寺』を途中で断念した以外)
聞き手の自己顕示欲に鼻が白むのが難点。 -
ずぶの素人が被告人に死刑を下してよいのだろうか・・・。