- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022736239
作品紹介・あらすじ
【社会科学/社会】終戦の日に戦争報道の責任を果たすため朝日新聞を退社、秋田で週刊新聞「たいまつ」を創刊し社会の矛盾や不正を訴えつづけてきた著者。今年100歳を迎えた。あの戦争の実態を語り継ぎ、原発や教育などあらゆる問題を庶民視点で考えぬき、100年にわたる人生の喜び、生きる上で大切なことは何かを語りつくす。
感想・レビュー・書評
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「私は敗戦の日に朝日新聞をやめた。『負け戦』を『勝ち戦』とウソの
記事を書いて読者に届けてきた責任を取らなければならないと思っ
たからです。」
先の大戦時、新聞各紙は大本営発表を垂れ流し、国民の戦意高揚を
煽った。戦争責任は政治家や軍人だけではなく、報道機関にもある。
だが、その責任を取った新聞社があるのかと言えばない。敗戦を機に
論調を買えただけだ。しかし、ここにひとりのジャーナリストがいる。
むのたけじ氏。戦中に朝日新聞記者として従軍経験もあるむの氏は、
敗戦をきっかけにそれまでの報道姿勢の責任を取って朝日新聞を
辞した。
本書は東北6県で配信されているむの氏へのインタビューをまとめた
作品だ。タイトルには「100年」と入っているが、今年で101歳だ。
戦争を、戦場を知る世代が年々少なくなっている。だから、知っている
世代の方々の話したことや書いたことはなるべく知って、記憶してお
きたい。
本書もそんな1冊だ。語られているのは戦争のことばかりではない。
先日、施行された安保法案、国会前デモ、アラブの春、沖縄の基地
問題、東日本大震災等々。
テーマは広範囲に渡っているが、すべてに共通しているのは「まずは
人間ありき」という考え方だ。
人間ひとりひとり、みんな違う。だから、その違いを認めればいい。
他人を尊重できない人は自分を大切にしない人だなんて、はっとさ
せられる。ひどく当たり前のことなんだろうけれど、こうやって改めて
言葉にされると、ふと自分の行いを振り返るよね。
説教臭くなく、難しい言葉も使われていない。とても簡単な言葉で
語られてるので、小学校高学年くらいから読めるだろうと思うのだが、
「う~む」と考えさせられることが多かった。
「そうやって行き着いた考えは「文章は面白くないとダメだ」だ。読み手
が、次も読もうと思わないような、読んで面白くない文章は人の役に
立たないもの。そういう文章を書くことは本当に難しい。難儀している」
むの氏にしてこの言葉だよ。私なんて…トホホ。
尚、戦争に関するむの氏の発言は必読。歴史の生き証人なのだもの。
安保法案を通した自民・公明のセンセイたちには是非とも読んで欲しい
ものだわ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
心に優しく響く文体。
東北弁で話すとバカにされたくだりが悲しかった。 -
役目を果たせなかったジャーナリズムを自己反省、戦後秋田で「たいまつ」創刊。社会の出来事について二人が徹底して検討を加えた記録、100年の経験智からのメッセージ。
100年を語れる人はまだまだ少ない。人間だれもが100年の経験智を持てるとしたら、すごいだろうな。 -
めっちゃ読んだひと少ない。びっくりした、いま。まぁ自分もけっこう偶然的に読んだ本やけど、でもおもしろかった。やっぱ立場とか知識とかじゃなく、強いひとはどこにいっても強いなぁと。「君は俺が好きか。俺は君が好きだ」とかのくだり、なんとも言えない。こういう人間になりたい、強くなりたいなぁと思うのみ。
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一本筋の通った意見を発信されていて、素敵な方であると感じた。
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終戦と同時に、戦争を止められなかった自責の念から朝日新聞を辞めて故郷秋田で週刊新聞「たいまつ」を創刊した100歳の現役記者。一貫して反戦、反原発を主張した生涯はジャーナリストの鏡といえるだろう。何度も無力さを味わったことだろう。権力にあらがい続ける強さを見習いたい。平易にして太く強い文章が、心に迫る。素晴らしい政治評論だと思う。