ウルトラマンと「正義」の話をしよう

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  • 朝日新聞出版
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023309586

感想・レビュー・書評

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  • ウルトラマンシリーズのあらゆる話から、人間の生き方、地球との関わり方、武器のことから何から鋭いところを突いてくる。何度か泣きそうになった。

    異物を排除する人間の愚かさや、武器を持つことの怖さ、
    「正義」とは何なのかを考えさせられる。

    北朝鮮が東日本大震災に寄付をしていたとは、この本を読まなければわからなかった。

  • 発売予定の『ウルトラマン「正義の哲学」』の存在を知り気になっていたとき、ほんとにたまたま図書館で目についた本でした。
    これは面白い。といいつつウルトラマンシリーズほとんどみたことがないので、全部観てみたくなりました。
    ウルトラマンという身近な題材で、ストーリーもしっかりしている所からの話だったのでわかりやすかった。

  • ウルトラマンのタイトルと神谷という著者名を見て、(声優さんが書いた本かな)と思いましたが、私が勘違いした声優は神谷明と神谷浩史で、著者とは別人でした。

    『リトル・ピープルの時代』『ふしぎなふしぎな子どもの物語』と、最近ウルトラマンに関して記述された本をたて続けに読んでいます。
    どれもなにかの雑誌でお勧めされていたもので、3冊とも、震災後に刊行された本です。
    やはり震災は従来のヒーロー像に大きな影響を与えたということでしょうか。
    詳しく知らないウルトラマンの関連本を3冊同時期に読み終えたことは、なかなか自分にとっての肥やしになりました。

    この本は、ウルトラマンだけを採り上げているため、ストーリーやエピソードも紹介され、より詳しいものとなっています。
    子供用の作品は、勧善懲悪が基本で、ウルトラマンの世界では、怪獣たちが悪の存在として登場しますが、果たして本当に善と悪は固定されたものなのか?という問いがこの本のテーマとなっています。
    たしかに、あらすじを読んでみると、単に善サイド悪サイドとは分けられない複雑さや曖昧さがあり、(怪獣にだって言い分があったりするんだな)とも思えます。

    『ウルトラセブン』は、当時のベトナム戦争の影響下にあった作品とは知りませんでした。
    シリーズ内でも異色の暗さが出ていると言われるのは、そのわけかもしれません。
    セブンの敵、ギエロン星獣は、怪獣ではなく異星人だったということも初耳でした。
    地球人は、自分たちの保身のために異星人を悪と見做して排除したというストーリーとなっていたようです。

    セブンから40年後に作られた『ウルトラマンマックス』には、メトロン星人が登場。
    彼らは堕落した地球人に絶望し、侵略の価値なしと見做して、ウルトラマンとの戦いを放棄したとのこと。
    そんなストーリーがあったとは。考えさせられます。

    さらに、ラストに流れるナレーションの文章には驚きました。
    「人間同士の信頼感を利用するとは恐るべき宇宙人です。でもご安心ください。このお話は遠い遠い未来の物語なのです。え?なぜですって?我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから」
    アイロニーにあふれた言葉がショッキングでした。

    延々と続いているウルトラマンですが、時代背景の影響も受け、単純な正義をふりかざしているわけではないということが見えてきました。
    正義の基準は時に矛盾をはらみ、そこに懊悩するヒーロー像があるということも。
    だからこそ、息が長く、大人にも支持され続けているのでしょう。

    ベトナム戦争ではありませんが、今はアメリカ中心の国際社会となっており、アメリカが定めた正義が、全世界の正義ということになっています。
    ただ、国ごとに価値基準が違うため、そこにひずみが生じて、さまざまな国際紛争が起きているということを、ウルトラマン作品を通じて改めて感じました。
    子供の頃は、ウルトラマンは完全に善なる存在ととらえていましたが、かといって対する怪獣が悪かというと、怪獣側の立場に立ってみれば、そうとも限らないわけです。

    成長してから改めて作品を見直すと、気付かなかったたてまえ正義のひずみに気づくこともあるのでしょう。
    「2010年は『告白』や『悪人』という映画が大ヒットしたのですが、これら2作に共通するのは、加害者もまた被害者であり、責任の所在を追求していくと堂々巡りに陥っていく点です。」というくだりを読んで、なるほど、確かにどちらもその歯がゆさが同じだと気がつきました。

    マイケル・サンデルの講義のように、これからは互いの側に立って、とことん突き詰めて考えていかないと、どちらが善か悪かは簡単に決められない、多様な価値観の時代に突入しているのでしょう。
    そう考えると、ウルトラマンに描かれるヒーロー像は、かなり時代性をおびた象徴的な作品だということに、気付かされました。

  • ウルトラマンは、勧善懲悪の単純な子ども向け番組ではない。

    正義の味方とされるウルトラマン。地球にやってくる怪獣や宇宙人を倒して、地球の平和を守るヒーローである。

    しかし、実はウルトラマンと対決する怪獣や宇宙人が、がいつも完全なる悪の存在とは言えないのだ。

    地球人のエゴイスティックな行為が、異星人や怪獣の生活を侵犯することになった結果、自衛として地球を攻撃するケースがある。それを、力で撃退するのだ。

    人間の宇宙開発政策の犠牲になった人間が、怪獣となり地球に戻ってくる。それを知りながら、ウルトラマンは怪獣を力で滅ぼすことがあるのだ。

    正義とは何処にあるのか?悪とは何なのか?
    ウルトラマンは、大人の常識的な価値観をゆさぶり、問いかけてくるのである。

  • とても真摯にウルトラマンのことを語っていただき、嬉しかったです。全世代のウルトラマンを網羅していました。難し過ぎるとこもありましたが、こんな先生もありだと思いました。

  • 大人がまじめに見るウルトラマン。
    必ずしも人間がウルトラマンが正義ではなく、暴力で侵略支配する加害側にもなる。
    何故人を殺してはいけないのか、簡単に入れ替わる善悪。大衆世論による不確定な正義感。
    とてもおもしろかった。

  • 定番のエピソードから新しめなエピソードまで、いろいろ取り上げられていたし、読んでて飽きなかった。この人の授業を受けてみたい。

  • ウルトラQ
    ウルトラマン・ウルトラセブン
    帰ってきたウルトラマン、エース、タロウ、レオ
    80
    とそれぞれのシリーズに日本の社会・経済の現代事情を反映しているし、それぞれの主張が反映されている。
    目次にあるように
    正義、ナショナリズム、現代、大衆について考えさせられる作品が多い。

    やっぱりウルトラマンって大人になっても味わい深い。

  • 【要約】


    【ノート】

  • 感想未記入。引用省略。

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著者プロフィール

評論家・中学校教師駒沢大学文学部国文科卒業後、高校教師を経て中学校教師に。ウルトラマンなどのポップカルチャー論をはじめ、教育論、社会批評なども手がけている。主な著書に『ウルトラマン「正義の哲学」』、『ウルトラマンは現代日本を救えるか』(共に朝日新聞出版)

「2015年 『3分あれば世界は変わる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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