水曜日のクルト 新版 (偕成社文庫 2118)

著者 :
  • 偕成社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784035511809

感想・レビュー・書評

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  • 大人が児童書を読む価値は何でしょうか?私は原点に戻れるということだと思います。自分は、そして、人は何のために生きるのか、大げさなことを言えばそういうことを思い出させてくれることです。6編の短編は児童向けの「おはなし」ですが、とても胸に響きます。『ふしぎなひしゃくの話』は富と権力のこと、『血の色の雲』は戦争のこと、『ありとあらゆるもののびんづめ』は本当の幸せについて。『めもあある美術館』は人生の来し方行く末。どのおはなしもすばらしい。作者は有名な仁木悦子さんの別名義です。お兄様を戦争で亡くされたそうです。

  • 「子どもを本好きにする10の秘訣」>「命・生き方」で紹介された本。

  •  大井三重子さんて人が仁木悦子さんだったとは、まったく知りませんでしたが。
     「水曜日のクルト」「めもあある美術館」「ある水たまりの一生」「ふしぎなひしゃくの話」「血の色の雲」「ありとあらゆるものののびんづめ」の6話収録。
     「血の色の雲」だけが、もろに戦争のことを書いているのでだいぶシリアスですが、それ以外はかわいいお話です。
     ただ、「水曜日のクルト」は、語り部の人の人格が、ちょっとどうなの…? て感じ。
     クルトに自分のものを盗まれて、その理由が突拍子もないものだったとしても、なぜ叱らずに笑うだけなの?
     相手が子どもだから、という理由なら、それはそれでいいけど、その直後にパイプを盗られて激怒するてどういうこと?
     人格がどうかしているとしか思えないのですが。
     この件も含めて、いろいろと展開に無理があって、この話だけは、何か納得いかない。

  • 2016年5月26日購入。

  • 推理小説の仁木悦子として有名な大井三重子の童話集。
    でも「仁木悦子の小説」は読んだことない。
    この人の名前は「もうひとつの太平洋戦争」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/B000J7X8RQで知った。

    この本を手に取ったのは表紙の色がきれいだったから。
    折り返しにあった仁木悦子の名前を見て読み始めた。
    1950年代に書かれたという童話は、丁寧な文章もモチーフも、小川未明やアンデルセンを思わせる。
    懐かしい雰囲気を楽しみながら読んだ。
    教訓臭さはないけれど言葉の端が沁みるものあり、ストレートに訴えるものあり。


    ひとりひとりに、その人だけが入れる部屋が用意されている【めもあある美術館】を読んだら、きれいな絵を描きたいなと思った。

    【ある水たまりの一生】にでてくる小スズメのエピソードがすごくかわいい。
    「男の子のくせに」わすれな草をあたまにさしてみて「およめさんみたいだ」と喜ぶ。
    照れてるけど恥じてない。ほほえむ水たまりは嘲わない。
    当たり前なほほえましさが、こんなに昔に描かれているってのが嬉しくて幸せな気分だ。

    【血の色の雲】は戦争の話。
    生活のために飛行機乗りになった子も大学生も病弱な人も、みんなが巻き込まれる。
    被害だけじゃなくて、加害性と、加害者になってしまう悲劇にも触れられているのがすごいところ。

    冒頭の、“空が、青く青く晴れていました。/この青い空のはてには、うすべに色の雲がうかんでいるにちがいない”という部分、
    今読んでいる「ミクロの森」に同じようなことが書かれていた。
    あちらは科学的に光子の説明などをして、この赤い空は東の青空がつくっているのだ、とあった。
    観察や知識の土台の上に築いた物語だから、しっかり芯があるんだろうな。

  • ミステリ作家仁木悦子さんが別名義で書いていた童話集です。「猫と車イス」に出てきた作品もあり、両方読むとまた興味深かったりして。
    子供には分かりにくいのでは?と思うところもあります。特に語彙なんかは、時代を差し引いても難しいような。けど、大人に聞けば十分子供にも理解できる内容。適度な謎は子供の向学心をくすぐるかもしれません。色の表現の鮮やかさは想像しても楽しく、装丁の可愛らしい絵がさらにそのお手伝いをしてくれます。クルトなんか本当にそこらを歩いていそうだし、水溜まりの循環はイメージとして自然科学の知識をとらえることができそう。
    …とかなんとか細々言いますが、とにかく話として面白い。わくわくしたり、嬉しくなったり、逆に苦しくなったり、悲しくなったり。結果教訓を得るかどうかは別問題。きっとふとした瞬間にじんわりと思い出して、「こういうことなんだな」と感じる。そういう作品たちです。

  • 「ある水たまりの一生」を読んだ。

  • 作者の名前をどこかで見たことがあるけど、どこだっただろうと手に取って納得、後の仁木悦子なんですな。元々童話作家としてスタートしていたことは聞いていましたが、初めてその童話に触れました。
    さすがの巧さですね。カラリとした明るい語り、物語展開の面白さ、イキイキとした子どもたち。もっと読みたいという気分にさせられます。
    異色なのは「血の色の雲」。架空の国を舞台にした反戦もの。声だかに叫ぶのでなく、静かで美しい筆運びに心打たれます。

  • 大井三重子さんは「仁木悦子」だったのをしらなかった。
    水曜日のクルト・めもあある美術館・ある水たまりの一生・ふしぎなひしゃくの話・血の色の雲・ありとあらゆるもののびんづめ の6話収録。
    「ありとあらゆるもののびんづめ」が私は気にいった。
    ただの童話ではない、少し重い筋立て。

  • 「めもあある美術館」収録

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