あの世からの火 (偕成社の創作)

著者 :
  • 偕成社
3.70
  • (2)
  • (4)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 33
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784036355006

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 辛い内容しかないので、おすすめしたくはありませんが、読む価値はあります。ただ、怪談として読みたい方は回れ右をしたほうが良いと思います。
    松谷みよ子さんにしか書けない文が、ここにはあります。


    あとがきの後の解説文の、子供を殺した母親が精神崩壊して童女のように舞っていたことが書かれていた話、38度線を越えるときに騒いだ子供の首を絞めて韓国に向かった母親の話等、戦争がなければ、戦争さえなければ、悲惨で、人が抱えきれないほどの罪や後悔もないと思った。
    人に優しくしていれば、必ず返ってくるのかもしれないけれど、この本が伝えたいのはそういうことだけではない。
    日帝強占期(韓国や北朝鮮では日韓併合時代をそう呼ぶ)に得た朝鮮半島の人々の日本へ恨み、一部のソ連兵や日本兵の横暴なども伝わった。

  • シリーズの中で、一番重い作品。読み進めるのが辛く、何度も本を閉じた。
    私たちは過去にきちんと向かい合っていない。そもそも知識すら正しく持っていない。自分達がしてきたことを知りもせず中国や韓国を非難する言葉をぶつけるのはあまりの所業ではないか。子どもの受難。子供らしく甘えることができなかった時代。早くに消えていった命たち。次の世では幸せに生まれ、穏やかに死を迎えられたのであって欲しい。
    松谷さんの作品は優しい作品しか知らなかった。過去に対して熱い思いを秘めているからこそ、優しい作品たちが生まれたのだろう。

  • 直樹とゆう子の物語の最終巻。太平洋戦争の終戦時に朝鮮から引き上げてきたみすずさんの体験談を中心とした物語。

    悲惨なことは多々ありますが、それは「人」の問題というより、それを引き起こした「時代」であるとも思えるし、ひいては、それを招いた「国」の問題でもあるように思えます。
    でも、そんな「国」を作ってしまったのは「人」ですから、やはり、一人ひとりの良識と選択が、のちの運命を作っていくのかもしれません。

    今の「選択」が、のちの「国」と「時代」を作る。
    「今」が「戦前」なのです。
    そう思うと、人の選択には重い責任が発生しますね。

    『ふたりのイーダ』からの年月を思うと、直樹の成長ぶりが頼もしく、嬉しい。

  • ゆう子がテープお越しをするという設定で、朝鮮から引き上げてくる女性の体験記を語る。私自身はこういう語り口の時、流行り言葉が使われていると出版されてからの時間の経過を感じるので苦手です。物語は読ませる力があるものだと思います。こういう体験をした人が日本にも他の国にもいることは、子どもも大人も知っていいくべきだと思います。

  • ★あらすじ
    中学3年生になったゆう子は、花姫の山荘の管理人・みすずさんが語ったテープの起こしを、ルポライターの母からアルバイト感覚で請け負う。
    みすずさんは、不思議な体験を数多くしている人なので、ゆう子的にはそっち方面の話を期待してのことだった。
    しかしそのテープに入っていたのは、みすずさんが終戦時に、子供3人を連れて朝鮮から引き揚げて来たときの、過酷な体験談だった。

    ★感想
    大陸からの引き上げのという事実に初めて出会ったのは、藤原てい『流れる星は生きている』を読んだ小学生の頃でした。
    もちろん愕然としました。ホントにもう、読んでてつらくて悲しくてorz
    この本も、ホントつらいんですが『流れる…』よりは幾らかキツくなかったです。
    それはみすずさんの淡々とした語り口のせいもあると思うんですが、大戦中に日本の一般民衆が行った、朝鮮半島の人々に対する罪を、みすずさんがしっかりと認めて受け止めているからじゃないかと思いました。酷いことをしたのは、軍だけじゃないんだよね…
    忘れちゃいけないことだよな、と改めて肝に銘じました。

  • 「直樹とゆう子の物語」。実はまだ読んでいない。

    この作品で完結するという「「直樹とゆう子の物語」は、自分の子どもが大きくなったら絶対読ませたい本である。

  • (2001/8/11(土))

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

1926年、東京生まれ。1944年頃より童話を書きはじめ、1956年、信州へ民話の探訪に入り、『龍の子太郎』(講談社)に結実、国際アンデルセン賞優良賞を受ける。以来、民話に魅せられ創作と共に生涯の仕事となる。日本民話の会の設立にかかわり、松谷みよ子民話研究室を主宰。著書に『女川・雄勝の民話』(国土社)『日本の昔話』『日本の伝説』『昔話一二ヶ月』『民話の世界』(共に講談社)『現代民俗考』8巻(立風書房)など。

「1993年 『狐をめぐる世間話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松谷みよ子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ソン・ウォンピョ...
辻村 深月
真藤 順丈
宮部みゆき
宮部 みゆき
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×