幸せな家族: そしてその頃はやった唄 (K.ノベルス 33)

著者 :
  • 偕成社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037903305

感想・レビュー・書評

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  • トラウマになった本としてネット上で評判を聞いたことのある作品。ずっと気になっていたが絶版。しかも近所の図書館にはなかったので、帰省した際にようやく借りることができた。
    ある一家を舞台にした連続殺人事件の話。一応長編ミステリーと謳っている。実は手にする前に既に詳細な粗筋はおろか結末まで知っていた。しかしそれでもなお、非常に恐ろしい作品だった。読了した際はそうでもなかったのだが、時間が経つにつれてじわじわと恐怖が忍び寄ってきた。情けない話だが、本当にこの作品が怖くてその晩は眠れなかったほどだ。
    それなのについ何度も手にとってページを繰ってしまう。その度に後悔するのは分かっているのだが、どうしても読み返したくなる。そんな不思議な作品だ。恐らく、古書で見かけたら購入してしまうだろう。そう言う意味で、非常に面白い、よくできた話なのは確かだ。興味がある方はネタばれを読まずに手にとってみて欲しい。
    しかし成人してすら怖いのに、子供の頃に読んでいたらと思うと背筋が寒くなる。

  • 「復刊ドットコム」のリクエストコメントをみて読んだ本。

     有名カメラマンの一家が保険会社のコマーシャルの《幸せな家族》シリーズに出演することになります。
    有名カメラマンの父、優しい母、高校生の美しい姉、中学生のおしゃべりな兄、そして主人公で小学生のぼく。
     撮影が始まり、カメラマンやスタッフが家に来るようになり、ある日、最初の死体が発見されます。
    それから次々と人が亡くなります。まるであの時歌われた<その頃はやった唄>の歌詞のように…。


     児童書なのでそんなに難しくありません。犯人にも早い段階で気付くと思います。
    「幸せな家族」というのが皮肉だなと思いました。
    もし小学生の時に読んでいたら、仄暗い印象で心に残っていたでしょう。

  • 一応ジュブナイルだけど児童が読むにはショッキングかもしれない。
    今となってはこの手の内容は実際にあっても驚かないのだろうが
    (それはそれで問題なのだが)
    当時の自分にとっては頭をガーンとやられたような、衝撃の作品。
    それでいて最後に近づくにつれて何となく哀しい気持ちになった。

    それはそうと、巻末にご丁寧についている手書き風な楽譜が親切かつ怖い。
    しかも楽譜が読めたものだから、脳内再生されて余計に怖い。

    一番怖いのは、今でもその"唄"を歌えるという事。
    ああおそろしい。

  • 恐らくかなりネタバレにつながる感想になってしまったと思うので、ご注意下さい。








    小学生くらいの頃読んだときは、ショッキングな歌詞とストーリーの持つほの暗い魅力とが合わさって、しばらく本に載っている歌を歌っていた時期がありました。多分その頃はよく意味が分かっていなかったのだと思います。けれども、それでも何かが自分の中に残っていたようで、それから二十年くらい経った大人の今になって、また読みたくなり、タイトルすら忘れていたのですが、人の助けを得て、取り寄せて読む機会を近頃得ました。

    大人になって読んでみると、確かにショッキングな話なんですが、この本の話の真骨頂は、表面の残酷な事件に埋没する家族それぞれの愛情そのものにあると思えます。

    父の娘にたいする愛情。
    母の家族に対する愛情。
    姉の家族にたいする愛情。
    そして末息子の父、母、姉にたいする愛情(とりわけ母と姉)。

    それぞれがそれぞれの愛でもってあるべき家族の姿を模索しているのに、茨が絡まりあいながら成長するようにうまくゆかない。

    主人公が本当に快楽殺人者だったら、ただの不気味な話で終わっていただろうと思うのですが、ほぼ全ての殺人事件が終わりかけた頃、主人公が父の友人宅に招かれ、そこの親子のやりとりを見、家族のあるべき姿を見てしまった事。主人公が自分のした事について記録を取っていた事、そして最後に主人公が取った行動、その全てを鑑みると、本当は大人に見つけてもらいたかったのではないか、本当に望んでいた事は父親の友人の家庭のような空気を求めていたのではないか、と思えます。けれでも不幸な偶然の事故、そして子どもゆえの残酷な気持ち・浅はかさとが合いまって起こしてしまった事件により、後戻りできない状況になってしまったのではないか、と思えます。

    一番なんとも言えない気持ちになったのは、この家族の中での姉の取った行動です。姉は末弟の全てを受け入れた上で、一緒に生きる道、あえて殺される道の両方を既に生前から選択していました。

    姉の選択に対しては、驚きと共に恐れ、畏怖に近い気持ちをこちらが抱かされます。恐らく大抵の人間にはどちらか片方の選択、あるいは主人公の母親のようになる事しかできなかったのではないかと思います。

    けれども姉は、自身が傷ついていてなお、相手にとって最善の選択をしようとします。たとえそれが倫理的には最善でなくとも。その姿には愛故の強さに裏打ちされた美しさを感じます。奇しくも酔っぱらった父親が言っていたように。


    こんな結果になる物語に対する感想として、果たして適切な表現かどうか分かりませんが、この物語には、畏怖や悲しみと共に美しい、という感想を抱きます。探し出して読み返した価値のある物語でした。

  • 以前小さい頃に読んだことがあり、年を重ねた今、また読んだら違った思いがするだろうと思い読みたいと思ったが絶版。
    さらに近隣の図書館にもすでに置いてなかった。
    今とても読みたい、手に入れたい一冊です。

  • 子供が親兄弟、友達、最後には
    自分を殺していくような内容です、

    途中
    「子供は父を憎んでた
    働きもんは邪魔になる
    そこで子供は風の晩
    ロープを片手に持ちました
    父の寝息をかぎました
    絞めても絞めてもまだ足りず(アハハン)
    骨で楽器を彫りました」
    と 残酷な詩? が印象的です、


    もう絶版になっていますが、
    図書館などにあると思います、

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